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 「特別なチーム」

開幕したころは果てしなく思えた今シーズンでしたが、気が付くと引退の時期を迎えていました。 ICUFCでの2年間、特に2部リーグを戦った今シーズンを振り返り、まずは私がどのような気持ちで 試合に臨んでいたかについて、次に、ICUFCのチーム力はどこから生まれるのかについて、3つ目に、なぜ我々はこのチームにいるのかについて、そして最後に、次のシーズンを戦う人たちに 向けて私が大切だと思うことを述べたいと思います。

 今シーズンは一度も簡単な試合がなく、毎試合とても緊張していました。しかし同時に、難しい試合を重ねることで鍛えられ、成長している実感もありました。

個人的には、セービングで下の手を伸ばせるようになったり、クロスに対するポジショニングが良くなったりしました。 ビルドアップは苦戦しながらもいろいろ試すことができて、おもしろかったです。ビルドアップについてはいろいろな考え方があるはずだし、2つ先、3つ先の人も集中してポジションを取らないと上手くいかない繊細なものだと思います。そしてもちろん、個人のボールの持ち方や的確な判断も必要なので、もっとトレーニングをして、共通のアイディアを増やし、クオリティを上げたかったです。また、今 シーズンからはフィジカル部(※1) のおかげで、筋力トレーニングも継続的に行うことができました。


試合に出場する自分が緊張したり、興奮したりするのは当たり前だけど、ピッチ上でプレーできないチームメイトとその気持ちを共有するには、みんなにも同じようにわくわくしもらうためには、ど うしたらいいだろうかとシーズンの途中で考えました。

私の答えは、最後の笛が鳴るまで、結果に期待が持てるようなゲームにするというものです。だから、シーズンを終えてみると、たくさん失点し、ほとんどの試合で先制されていますが、どの試合も立ち上がりでは絶対に失点しないつもりで臨んだし、どんなに負けていても、1点返せるようなプレーを最後まで続けることを意識していまし た。90分走り続けているフィールドプレイヤーは体力ぎりぎりで戦っているので、コーチングだけで なく、声を切らさずに鼓舞するのもキーパーの役割だと思います。  


ピッチに立てない仲間に期待してもらうためには、トレーニングでの振る舞いも大事だと考えてい ました。奎伍くん(※2) からは、試合に出るメンバーがこのチームの基準だから、その基準を上げるのは みんなだ、ということをよく言われていましたが、同様に、ICUFCの背番号1は自分だから、自分 がどれだけの意識を持っているかが、キーパー陣それぞれに影響するというふうに思っていまし た。

また、試合に出場するメンバーには責任がありますが、それは試合の結果がその人たちだけにかかっているという意味ではありません。わかりやすい例で言えば、週末の試合でビルドアップ が上手くいくかは、平日のトレーニング中のプレスの強度に大きく関係しているということです。したがって、私が試合でどんなプレーを発揮できるかは、その週、あるいはそれまでのキーパーチームでのトレーニングがどうであったかの1つの指標になると考えていました。だからこそ、とても緊張して試合に臨むわけですが、それはプレッシャーというよりも、モチベーションでした。そしてそれは、私だけではなく、ピッチ上の他の10人にも共通するものだったはずです。


ICUFCの一番の強みはチーム力だと思います。そもそも、今までいたチームで、これほどチーム力というものを意識したことはないような気がします。

試合を見に来てくれた家族や、2部リーグの他のチームの友人の目にも、このチームには他にはない独特の雰囲気があるというふうに映ったようです。

我々の特徴として、まずは学年の隔たりがないということが挙げられます。象徴的なのが合宿の部屋割りで、今シーズンは、26(※3) から5年生までが在籍していましたが、くじ引きで決めまし た。チームの雰囲気作りには、戻ってきてくれた23と22が大きく貢献してくれました。彼ら一人一人 に、心から感謝しています。  

もう1つの特徴は、自由な組織であるということです。自由という言葉はとても意味に広がりがありますが、このチームには、片付けをしない自由から、やってみたいことに挑戦する自由まであると思います。学年で仕事が決められているわけでもなければ、新しいチームが発足した際に、以前の運営体制を踏襲する必要もありません。その中で、一人一人が自分の役割や得意なことを見つけ、自らの意思でチームに貢献することで、ICUFCの自由は保たれているのだと思います。


 
このチームの、そして私の大きなテーマは、「なぜ我々はICUFCにいるのか」でした。

私はサッカー選手を目指していたわけではないし、就職活動のために部活をしたかったわけでもありませ ん。なんとなく入りやすくて入ってしまったこのチームで、自分は「何のために」サッカーをしている のかと悩んだこともありました。

ところが今は、「何のために」とか「何の役に立つのか」という問いの立て方が正しくないと考えています。これは、「何のために学ぶのか」や「何のために生きているの か」という疑問についても言えると思います――しかしここでは1つ目の「なぜ我々はICUFCにいるのか」にとどめておこうと思います。寛太くん(※4) は「みんなで幸せになりたい」と言い、奎伍くんは「み んなで熱狂をつくりたい」と言いましたが、本質は同じような気がします。

つまり、我々は何かのためにフットボールをするのではなく、チームで目標に向かって努力すること、共に成長する時間、 そして結果として試合に勝利したときの歓喜それ自体のために、集まっているのだと思います。どんなに負け続けても、最後まで前に進むことができたのは、試合に勝つか負けるかを超えた所に、 我々のヴィジョンがあったからだと思います。

最後に、これはフットボールの試合についても、クラブ活動についても言えることですが、チーム というのはやはり個人の集まりだと思います。何がICUFCらしさを形作るのかと言えば、それは一 人一人の言動です。

簡単なことではありませんが、トレーニングを積めば、フットボールの技術は磨かれていくはずです。しかし、このチームの文化はもっと貴重なものかもしれません。だから、IC UFCという変わらない場所の中に自分がいるとは考えないで、一人一人の存在がICUFCとはどんなチームかの定義を常に変えているのだという意識を持つことが大切なのではないかと思います。応援しています。

ICUまで試合を見に、足を運んでくださった皆様、ライブ動画で試合をご覧くださった皆様、応援 ありがとうございました。今後もICUFCをよろしくお願いします。 みんなと一緒に戦えて本当に良かったです。ありがとう。

2022年11月 諸伏 健太


(※1)
ICUFC内の数ある部門の1つ。2部昇格に伴ってフィジカル面の強化が必要になり、もともと筋力トレーニングに 力を入れていたメンバーらによって創設された。トレーニングメニューの作成や、選手の記録の管理、チームとし てプロテインを飲む習慣の導入などを行った。

(※2)
Our unique and passionate manager. Grazie!

(※3)
ICUでは卒業年度を表す、学籍番号(ID)の上2桁を学年の代わりに使うことが多い。26(ニーロク)は1年生を指す。

(※4)
前監督の泊寛太氏。どうしようか悩んだとき、寛太くんのおかげでもう少し続けようと思えました。

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