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1学期にTV取材4件のカオス

そうなんです。1学期の間にテレビ局の取材が4件ありました。こんなこと、もう二度と無いのではないかと思うので書いておきます。


1)NHK「ニュースなるほどゼミ」

最初の取材依頼は、NHKの「ニュースなるほどゼミ」という番組からでした。この番組はNHKの解説委員の方々がその時々のニュースについて掘り下げて紹介するというものなのですが、生成AIをテーマとした回の時に、教育担当解説委員の木村さんから取材依頼を受けたのです。

「文部科学省が生成AIについてのガイドラインを公表する予定である」というニュースが流れたタイミング、生成AIを活用した授業を行った実践が報道されていたこと(朝日新聞)、テレビカメラの受け入れが可能な学校、といった諸々が重なっての取材だったのだろうと思いますが、これは本校にとっても願ったり叶ったりでした。

ちょうど生成AIについての教員研修を行ったばかりだったということもあって、私を含む5人の教員が参加しての座談会ができたのは面白かったです。これを機に全校で生成AI活用が進むといいな、と思ったのでした。

2)NHK ニュース

これは強烈でした。「文部科学省の『初等中等教育段階における生成 AI の利用に関する暫定的なガイドライン』公表に合わせてニュースを流すのでコメントが欲しい」というのがNHKからの依頼でした。話を受けたときは「たぶん、17時と19時のニュースで流れます」というものだったのに、蓋を開けてみたら12時、14時、17時、19時、20時45分(手話ニュース)、21時と流れたのだそうです。(私もすべては見ていません。)ラジオでも放送されたという噂です。

「NHKの電波をジャックした感じですね(笑)」と言った同僚は大げさだと思いましたが、さすがはNHK。この日と次の日は「見たぞ!」という連絡を色々な方からいただいたのでした。

ところで、このときは「あらかじめ事件(ガイドライン公表)が起こることがわかっているときのニュースの準備」のプロセスを体験することになったのですが、これは非常に興味深いものでした。「あー、今年が5年の担任だったら社会で熱く語ってうざがられていただろうなぁ」と思ったりしましたね。

3)フジテレビ①Newsイット「直アタリ」

生成AI関連の取材依頼は民放からもありました。フジテレビからは「できれば授業風景を撮りたいのですが」という依頼だったのですが、時期は学期末ギリギリ。

「あの、『Newsイット』ですよね?」
「はい」
「そちらの番組の方、明後日、ロケにいらっしゃいますけど?」

そうなのです。この後、書く「フジテレビ②」の話の方が先に来ていて、そちらは時間的にも余裕があったので、既に保護者から同意書も集めてあったのです。同じフジテレビ、同じ番組なら、この同意書を元に取材を受けられるのではないかと考えたのですが、先方との会話は予想の斜め上を行くものになりました。

「え、うちのスタッフがそちらに伺うのですか?」
「ご存じないのですか? 担当は〇〇〇さんという方ですが…?」
「え、〇〇〇…(何か検索している様子)あ、いました。〇〇〇という者が確かにいますね、はい。そのチームが伺うのですね?」
「はい、ですから、それとうまく合わせていただければ取材は可能です」
「調整します!」

普段、学校という小さい組織で働いているとうまく想像がつきませんが、同じ番組に関わっている者同士でもお互いを認識していないということはあるわけですね。

というわけでこの日は、「同じ日に同じ番組の違うチームが学校にやって来て同時に撮影している」というカオスな状況が生まれましたが、そういう時の方が物事ってうまくいくのでしょうか。会心の授業ができてしまったのですよね(笑)。

ところで、この時はフジテレビの宮司愛海アナウンサーが小金井小にいらっしゃいました。インタビューも受けたのですが、その様子をオンエアで見た同僚とはこんな会話になりました。
「鈴木先生、宮司アナとからんだんですね…」
「からんだって言うか、インタビュー受けただけだけど」
「いいなぁ…」
いや、まあ確かに気さくでいい方でしたが。

4)フジテレビ②Newsイット「ウラどり」

「フジテレビから電話です」と言われて電話を取った時に思ったのは、「また生成AIのことかな?」というものだったのですが、全然、違いました。

「そちらで文部科学省の『特定分野に特異な才能を持つ児童生徒への支援の推進事業』を進められていると伺っておりますが、これについて取材ができないでしょうか。」

これはさすがに身構えました。今年度と来年度で取り組む「特定分野に特異な才能を持つ児童生徒への支援の推進事業」は、確かに我々の中でかなりのウェイトを占めている大切な仕事ですし、それについて取材していただけるのは嬉しくないわけではないのですが、懸念もいくつかありました。

どの場面を取材してもらうか。その取材をしてもらうことを保護者は同意してくれるか。何より本人は同意してくれるか。フジテレビは我々の事業の目的をきちんと理解してくれるのか。番組で変な切り取られ方をされたりしないだろうか。

様々にあったのですが、調整できるところは何とか調整して形は整いました。番組がどうなるかは正直、放送されるまでわからないな、とは思いましたが、番組にも出演されている記者の林さんが前々日に学校にいらして熱心にこちらの話を聞いてくれたことから「この方が取材するなら信じてみよう」という気持ちになり腹を括りました。そして放送された番組がこちら。

ニュースですからね。一般の方にわかりやすくするために「特定分野に特異な才能を持つ」ではなく「ギフテッド」という言葉を使ったのは仕方ないかな、と思います。その他にも気になるところがないわけではありませんが、全般的には真面目に真っ当に作ってくださったな、と感じました。取材をしてくださった林さんはじめフジテレビの方には感謝しかありません。

「ギフテッド」という言葉が前に出ると、どうしても「英才教育」とか「天才を育てる」みたいなイメージが出てきてしまいます。実際、番組の中でも、アナウンサーが「平たく言うと『天才』とかいうイメージがありますが」と言っていて、それに対して林記者が文科省ではどう考えているかを説明しながら「特性ゆえに学習上・学校生活上の困難を抱えることがある」ことを解説しています。

ここなんですよね。ICT×インクルーシブ教育をずっとやってきた我々が、この「特定分野に特異な才能のある児童生徒への支援の推進事業」に取り組んでいるのはなぜか、という理由。

でも、そこはなかなか伝わりにくかったり、わかりにくかったりするところであり、また伝えにくかったりするところでもあります。この壁を乗り越えていくのも2年間の事業の中での大きな課題だな、ということを改めて認識できただけでも取材を受けてよかったな、と思います。

まとめ メディアに出ることのメリットとデメリット

これは色々あります。デメリットの方から書きましょう。

一言で言って、面倒くさいというのはあります。通常業務に対して完全に余計な仕事なので時間を取られることは間違いないです。保護者の同意を得ることは絶対に必要なわけですが、この同意書を作り、それを集め、ということだけでもそれなりに時間を取られます。事務的な手紙をペラで一枚作って子どもに渡して終わり、とはいきません。

なぜ、この取材を受けるのか。そこにどんな意味があるのか。この取材を受けることが子どもたちにとってどのような影響を及ぼすのか。そうしたことを私なりに書いてお知らせしますが、それってそれなりに時間を取られることです。

そういった面倒くさい準備をしても「やっぱり取材行けなくなりました」「やっぱり放送できなくなりました」みたいに言われることもあります。今回、ここに出てこなかった某2つの局とは取材依頼はあったものの、そんな感じで終わってしまいました。そういうときは徒労感しか残りません。

しかし、そんなことより何より怖いのは、こちらの意図と違った切り取られ方をしないか、ということです。例えばNHKのニュースのときは、インタビュー映像を1時間半くらい撮ったのですが、使われるのはそのうちの20秒くらいです。変なところの20秒を切り取られたらかなわないな、というのは放送を見るまで恐怖でしかありません。

では、そうしたデメリットがあるのになぜテレビの取材を受けるのか。

固いことを言うなら「それも附属の使命」だからですね。「生成AI」にしても「特定分野に特異な才能のある児童への支援」にしても、まだまだ一般の学校では広まっていない分野です。そこにいち早く取り組んで、功罪両面を洗い出して広く知らせるということは、間違いなく「附属の使命」です。マスメディアは、この「広く知らせる」ためのもっとも効率的な方法と言えるでしょう。

「発信しているところに情報は集まる」というのはよく言われることですが、マスメディアを通じて「広く知らせる」ことができれば自ずと我々のところにも情報が集まってくるでしょう。それは、多くの方と議論する材料になったり、研究を深めていく上で大きな役割を果たしたりすることが期待できます。

しかし。

実は、私が一番期待しているのは「それによって子どもが成長するのではないか」というところです。これは数値的なことでは伝えにくいのですが、テレビカメラが教室に来ること、自分の話に親や先生でない大人が真剣に耳を傾けカメラを向けてくれること、教室でみんなと放送を見た時の不思議な一体感(放送された番組をクラスみんなで見返した際、タイトルのシーンを3回巻き戻し再生して「これがこの番組で一番大切なシーンだ!」と力説し、児童から大ブーイングを喰らったのも楽しい思い出です)、そうしたことが子どもたちを成長させる部分は確かにあるように思うのです。

というようなことを思うので、今後もチャンスがあればメディアの取材は積極的に受けたいと考えていますが、それにしても1学期に4回は驚きました。「カオスだった2023年1学期」は額に入れて飾っておきたいと思います。

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