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生成AIガイドラインど真ん中授業!!

あまりに忙しすぎてこのところ投稿できていませんでした。今も相変わらず忙しいのですが、自分史上ベスト3に入るかなりいい授業をできた気がするので、気がしているうちに書いておくことにします。

国語で「お礼の気持ちを伝えよう」という単元があります。お世話になった方に手紙を書くことがメインの活動で、型にそうことであらたまった気持ちを伝えることができる、ということを実践的に学ぶ単元です。

1時間目は、教科書に載っている例文の分析をします。学習者用デジタル教科書に「ここが季節の言葉、ここが相手を気づかう言葉、ここが…」と書き込んで、気持ちを伝える手紙の型を整理して頭に入れます。

今日はその2時間目。「6月に行った宿泊行事(一宇荘生活、と言います)で泊まった宿舎の管理人さんにお礼の手紙を書いてみよう」というのが本時の課題。前時に学んだ「型」を思い出しながら児童が手紙を書いていきます。10分ほどで半分くらいの子が書き終わっていました。

そこで一度活動を止め、子どもたちに呼びかけます。
「これ、AIにも書かせてみようよ」
子どもたちから歓声が上がりますが、聞いてみると「AIはまともなお礼の手紙を書ける」と考えていた子は1/3いたかいないか。これまでの学習が効いているようで、我がクラスにおけるAIの捉えはかなり現実的です。

ともかくChatGPTに放り込むプロンプトを書いていきます。子どもたちの「これも入れた方がいい」「いや、これは省いたほうがいい」というリクエストに応じながら出来上がったプロンプトがこれです。

リターンキーを押すと、あっという間に以下のような手紙が返ってきました。

毎度のことですが、AIの回答が返ってくると教室は阿鼻叫喚です。それを押さえて「はい、言いたいことがある人はどうぞ」と呼びかけると出てくる、出てくる。

「相手の名前が一番、最初なのはおかしい」
「『お元気でいらっしゃることを願っております』なんて言い回し、使ったことないしこれからも使わないと思う」
「炎天下じゃなかったよ?」
「『宿舎での世話になり、本当にお世話になりました』って『世話』を2回使っていて変」
「『いつでも声を掛けてくださり』ってあるけれど、そういう感じじゃなかった」
等々。子どもたちのツッコミはとどまることを知りませんでしたが、それを押さえて問いかけます。

「君たちの意見はおおきく2つに分けられると思うんだよね」
「2つ?」
「そう、1つは型に関すること。みんなが教科書で勉強して、AIにこう書いて、とお願いしたこととずれているよ、という意見」
「うん」
「もう1つは内容に関すること。『炎天下じゃなかった』とかね」
「うん、たしかに」
「内容の方だけれど、どうしてAIは『炎天下』とか『いつでも声を掛けてくださり』とか、全然違うことを書いてきたの?」

子どもたちが「何を当たり前のことを聞いてくるの?」という顔をしながら猛然と手をあげます。

「最初の命令(プロンプト)に『こういうことがあった』『ああいうことがあった』と書かなかったから」
「そうだね。じゃあさ、なんでそういうことを書かないとダメだったの?」

再び「この人はなんでまた当たり前のことを聞いてくるの?」という顔を向けて手をあげます。

「一宇荘で何があったかなんてAIは知らないから」
「なんで知らないの?」
「AIは一宇荘を経験していないから」
「そうだよね!」

ということで、このスライドを見せます。

「AIはたしかに凄いんだよ。大量のデータを持っていて、それを使ってサッと答えを返してくる。でもね。」

「どれだけAIがすごい量のデータを持っていても、君たちが一宇荘生活での体験から得た感動は知らない。一宇荘生活の中でどんな感情を抱いたかは知らない。」
うんうんとうなずく子どもたちにトドメの一撃です。

「お礼の気持を伝えるならそこじゃない? 君たちしか体験していない感動、君たちしか体験の中で抱かなかった感情。それを書くことが、お礼の気持を伝えることにつながるんじゃない?」

そこまで言ったところで、勘のいい子はもうタブレットを開いて、さっき自分が書いた手紙を書き直そうとしています。その流れを止める理由はありません。この時点で授業は残り5分。

「では、残った時間、自分のお礼の手紙を改良してみようか?」


いかがでしょうか? 子どもたちは「お礼の気持を伝える」ためのポイントを確かに掴んだと言っていいでしょう。そして生成AIのメリット、デメリットを学んでもいます。

先に発表された「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」の「活用が考えられる例」にはありませんが、その趣旨に則った割りといい授業だったのではないかと思いますが。

でも、明日になると「いや、あそこダメだったよなぁ、あれももうちょっと何とかなったよなぁ」と反省モードに入ることは間違いないので、今夜のうちに書いておきます。明日になったら消したくなるかな?

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