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今がその刻


今がその刻


遠境の彼方
白夢の海原に
身を投げる

時は滑り

怪鳥の咆哮は
マリンブルーの哀しみを
嬲るように刺す

荊冠に流す
深紅の潜液に
この身は彩られ

見棄てられし忘郷へ
帰する
ことも叶わぬ と知り

囚われの峡谷に
忘却と諦念の衣を纏い
彷徨う

立ち枯れの
屈強な樹木に身を預け

朽ちる草木の
皮膜の温もりを 足裏に智覚し
晩秋の黄紅の風に

逝く 刻を 

待つ

2020/à Tokyo 一陽 Ichiyoh
(拙作散文「蒼い空間」より)

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