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東福寺展&北野天満宮の宝物殿にて髭切見学をレポート

JR東海の懐かしきキャッチコピー、「そうだ、京都行こう」は長く我々の心に刻まれている言葉です。春は桜を愛でるため京都へ🌸夏の盛りだって京都へ🍧そして秋になれば紅葉を観に京都へ🍁もちろん底冷えの冬だって京都❄

つまり何を伝えたいのかと言いますと、秋になるとふらっと京都に行きたくなるのは最早、日本人の性なのです。そう思いませんか?

11月、最初の連休に京都へ行って来ました。今回は東福寺展のために京都国立博物館と、北野天満宮の「宝物殿特別公開 -歴史と美、刀剣物語-」に合わせて計画。どちらに行くのも楽しみなんですが、なんと言いましても宝物殿は今回、筆者2回目のお目見えとなる刀剣の髭切(鬼切丸)を目当てにしてました。

そして旅のお供は10年来の友人。楽しみ過ぎて計画した日からソワソワして、当日は予定よりも早く駅に着く始末です。お陰で待ち合わせの時間までが長かった…。

お天気についても言うことなしの快晴。余談ですが、私ひとりの旅行だとだいたい、いや99%くらいは曇りか雨なんですよ。曇天女の異名を取る筆者。この日は晴れパワー強めの友人と一緒だったので見事に晴れた、と筆者は信じています。


東福寺展で新たな世界を知る

さて東福寺展になります。

東福寺は13世紀の鎌倉時代に、中国で禅宗を学んだ「円爾」さんというお坊さんが九条道家の依頼で創建した寺院。奈良の東大寺と、興福寺にちなんで名付けられたそうです。国宝を7件、重要文化財を98件所蔵しています。

1.東福寺展でありがたい宝物に埋もれる

中国で学び終えた円爾さん、なんと100冊以上の百科事典や重要な書物を日本へ帰ってます。量がものすごいですよね。当時の船旅は命懸けでしたから、日本へ戻れば再度、中国へ渡ることなんてそう無かったと思います。貴重な書物を、もちろん許可のもとでしょうけれど、持てるだけ持って出たんでしょうね。

これらの書物や文化は、円爾のお弟子さん達によって教えが引き継がれゆき、「聖一派」といった派閥が形成されます。彼らを写した絵や彫刻、使っていた袈裟や日常の道具類なども展示されています。

個人的には人物像がかなりリアルに描かれてることに、感動してました。当時の画力を舐めていたわけじゃないですけど、顔の皺や目のくぼみ、髭、耳の形など、一人ひとりに似せているのがよく伝わる描き方なんですよね。描き手がわからない作品が多いのが残念でした。

2.東福寺が生んだ絵仏師の明兆

前述した人物画と違い、明兆は絵を評価された僧です。南北朝時代の肩で、絵仏師として活躍し、五百羅漢図などを描いています。羅漢は仏教の修行をしたすごいお坊さんたちのことです。

いや、本当に素晴らしかったです。ものを人に教える上で、絵や形にすることって最短ルートですものね。どれも躍動感があるし、何よりも漫画っぽいテイストで見てすぐに何が起きてるのか分かるようになってるのが流石だなと思いました。

というか五百羅漢図のキャプションだけやたらと面白かったのも、この展示自体に力が入ってんなぁ~と感じずにはいられない。そして漫画解説みたいなパネルもセットだったので間違いないです。いいですね。ぼんやりとした「伝えよう」じゃなくて、「是が非でも伝えてやる!」という強い意志を感じる展示。

国立系の博物館展示や大きい巡回展は、美術品にあまり触れ合わないお客さんも訪れることを想定しているので、感覚的に伝わるキャプションを目指してるなぁと感じます。あとは小さい子向けのパネルや冊子があったりしますよね。専門用語があるとそれだけで敬遠しちゃうので、恒久的に文化財を今後も守ってもらうためにも、お客さんに寄り添うキャプションって大事。

って真面目なこと言ってますけど、難しいより優しく分かりやすい方が何だって良いに決まってますからーー。

3.仏の大きな手


展示を見るのに疲れてきた頃に登場したのが、でっかい手「仏手(ぶっしゅ)」です。東福寺の旧本尊で、焼失して現在はこの仏手と蓮弁(蓮の花びらの一部)だけが残っているようです。

この展示エリアだけ撮影がOKで、大きさに感動したのもあってバシャバシャ撮影してしまいました。お陰で疲れも吹っ飛びました。大きさも禅宗一とされていて、手だけで3~4mあるかなと推測できますが、全長はなんと15mあったそうです。でっかいな。

どれも貴重な品々ばかりで、これだけの物を一度に見学することができて良い機会でした。

東福寺旧本尊の仏手

4.トラりんの登場スケジュール把握ミス


筆者、京都国立博物館のキャラクターのトラりんが好きなんですよ。唐突で申し訳ないです。数年前にトラりんと写真を撮って以来、とても気になる存在でして。

今回も着ぐるみショーがあれば一緒に撮りたかったんですけど、きちんと予定を調べずに行ってしまい特に何もなくて悲しい思いをしました。これって平日はやってないんですね。次はお休みの日に行きます!

京都国立博物館 東福寺展

北野天満宮で鬼切丸(髭切)を見よう!


東福寺展を観た我々はお昼ごはんの時間を取るのも惜しんで、北野天満宮へと急ぎました。時間はお腹が空いてくる頃でしたが、「早く行って髭切見たい」が頭にあり過ぎて、友人も私もそんな感覚を忘れていたように思います。

1.京都日本フェスティバル(KNF)2023のスタンプラリー

そして到着、KNFのスタンプラリーを開始。
音声付きのスタンプラリーなので、サウンドARサービス「Locatone(ロケトーン)」を活用して、源氏兄弟の声に酔いしれながら境内を散策できます。あと開始前にまごつくので、事前にLocatoneをスマホにインストールして登録までしておくと便利ですよ。

スタンプラリーをやることによって、境内の要所を回れるようになっていて、加えてもみじ苑入園とお菓子&お茶を頂ける券がセットなのも嬉しいポイント。

筆者は北野天満宮を訪れるのは初めてではないので、把握してるところも多いんですけど、詳細を知らなかった場所も多くて「なるほどなぁ」となりながら進みました。ラリーで立ち寄る「一願成就のおうしさま」は、北野天満宮最古のおうし様らしく、江戸時代から伝わるとかなんとか言われてるそうです。霊験あらたか過ぎるので、そりゃもうめっぽう撫でました。さらに、もう手遅れですが「頭が良くなりますように」と祈っておきました。

もみじ苑については時期的に紅葉するには早く、まだ青々とした紅葉ではありましたけど、平日だったこともあり静かに園内を歩くことができました。あと階段や川岸、橋など、高低差があるので、けっこう注意しないと危ない感じでした。特に今回は、スマホのマップを見ながらや、推しぬいを持っている方も多いだろうと思うので、手元と足元に気を付けた方がいいかもです。

筆者も、設置された源氏兄弟のパネルを撮影し、ぬいと共に風景を写真に収めました。

髭切 等身大パネル
膝丸 等身大パネル

そして疲れたところに京都の名和菓子店、老松さんのお茶屋が登場します。ここでお菓子と券を交換し、無料のお茶を飲んで、しばらくまったり過ごしました。お団子なども販売してるので追加で和菓子を頂くこともできます。

2.来たぞ来たぞ、髭切だ!

筆者たちは、お参りを済ませ、最後に宝物殿に辿り着くルートでスタンプラリーを進めていました。
どきどきウキウキの宝物殿です。

北野天満宮・宝物殿

展示室に入った瞬間、物理的に異空間でした。何十振ものお刀がずらりと並んでいて、それだけで「うわぁ」となるんですが、理由はそこではありません。お刀を置いてある布が綺麗な紫色をしていて、それが展示室のライトとお刀とで乱反射して神々しい雰囲気を醸し出していたんです。さすが、これが北野天満宮の展示方法か…といったところ。

さて、お目当ての鬼切丸(髭切)はといえば、展示中ほどの定位置ににて展示されていました。直接、その姿を見るのは久しぶりのこととはいえ、相変わらず細身でスラリと伸びた刀身に、ピンとした小切先が美しい。平安刀ならではの、茎あたりのキュッとした腰反りもやはり良いですね。ライトの加減で刃文は見にくいのですが、見せてもらえるだけありがたいです。

髭切の茎ポイントといえば、柄を嵌めた飾りのあと(違ってたらすみません)である、欠けた部分。この形を見ると「ああ、髭切だな」といつも思います。銘は「□綱」となっているのも、最早、おもしろトレードマーク。

鬼切丸(髭切)

この一振のために色んな人達が、その美しさにため息をつき、感嘆し、黄色い声をあげる様子を見れるのが良いですね。ここにいる人達、皆お刀が大好きなんだなぁと勝手に仲間意識を持っています。

3.目にも眩しき宝物殿の刀剣たち

もちろん髭切以外のお刀だって、素晴らしい。天下の北野天満宮さんには豊臣秀頼や福島正則、前田家奉納のお刀もあります。あと加藤清正奉納の日本地図鏡、え、何それって感じですけど、こちらです(リンクより)

そして大慶直胤の菅原道真と梅の彫物が入った短刀を見ることが叶いました。銘は「大慶直胤(花押)彫よしたね 弘化七半仲春上旬」。彫物は「渡唐天神像」で、「君子の花である梅を抱え、一夜にして中国の高名な禅僧、無準師範に善を学び修めた印の道服を身に纏う」といった故事に基づいてるみたいです。難しいこと言って…。さらにハバキは、日・月・星を表す梅のハバキなのだとか。

刃文も見た感じ上品でありつつも、びっしり容赦なく入ってます。匂出来の小丁字っぽいでしょうか。彫物も刃文も大慶直胤の作品って感じがしますね。

大慶直胤(花押)彫よしたね 弘化七半仲春上旬
彫物部
刃文

「刀 銘 濃州関住兼春」兼春は室町末期~安土桃山くらいに活躍した、関七流の三阿弥系の刀工です。特徴的な尖り互の目が入ってます。とてもギラギラしていてかっこいいですね。

刀 銘 濃州関住兼春

4.新作歌舞伎「刀剣乱舞」の衣装

新作歌舞伎「刀剣乱舞」にて使用された三日月宗近のお衣装も展示されてました。生地に細かい織りがありますね。本作に関しては、筆者、映像でしか見てなかったのですが、画面越しでも生地自体のつややかさがわかるくらいでしたので、直接舞台を見ていた人はもっと綺麗だと感じたでしょうね。なんとも芸が細かいです。

三日月宗近の衣装

以下が三日月宗近が使用した三日月宗近です…。まぁそれはさて置き。月を模した蒔絵も、梨地の鞘も、とにかく美しい✨上記のお衣装もですけど、職人さんがひとつひとつ作られてるそうで、既製品はひとつもないそうです。恐るべし、歌舞伎界の予算の使い方…。それだけ目の肥えたお客様が多いことの証かと思いますけど、それにしてもすごいです😌

三日月宗近の太刀

おわりに


今回、友人に誘われなければ秋の京都激混みにおののいて見に行ってなかったかもしれません。本当に勢いというか、そういうの大事だなと思いました。残念ながら大覚寺の薄緑こと膝丸の同時展示には間に合わなかったんですが、次の機会があればまた!

あと筆者、松栄堂さんのお香や文香、匂袋が大好きでして、今回もお迎えしました。京都駅にお店があるので帰るまでの時間にササっと購入できるのが、とっても便利。そして北野天満宮さんで頒布している髭切の匂袋も。髭切の匂袋も松栄堂謹製なので、なんか嬉しい☺️

松栄堂の匂袋・髭切匂袋

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