見出し画像

学校経営/理念を共有する



■年度当初に共有する
組織としての「理念philosophy」「構想vision」「価値感value」

私は、年度が始まる初日である4月1日に、必ず、「学校経営方針」を提案している。初頭効果を得られるこの時期は、学校としての「方向感」を全職員で共有するには最適のタイミングである。
 この「方向感」というのは、方向性という細い一本道ではなく、これから向かう世界観のようなものである。これまでのリーダーは、「この山に登ろう」という明確な目標を示し、ルートやペース配分などを示しながらチームを引っ張っていた。ところが、現在は、予測できない様々な事態が起こって、規範感や時間軸が不明瞭なご時世である。「こんな学校にしたい」という納得できる世界観を示し、その方向にみんなで歩んでいけるリーダーシップが大切だと考えている。
 一昔前、例えば、私や保護者世代が学生だった頃は、目標を明確に持つことが現在に比べるといくらか容易だった。目標を達成しながら、描いたコースを外れないように努力をすることが、これまでの進路選択だったとすれば、これからの進路選択は、成長と共に得られる経験、身につけた知識・スキルを活かして選択肢が広がるイメージになる。そして、状況に応じて目標や手段を付加・修正しながら、さらに成長してくのである。
 私たち教師自身もこれまでのステレオタイプを思い切って一回忘れ、多様な考えに耳を傾け、共に何かを生み出すという姿勢にシフトしなければならない。

年度当初には、次の3点を関連付けながら、「組織としての方向感」について一人一人に丁寧に伝えていく。
  ①理念(普遍的な意義・理想)
  ➁ビジョン(目指すべき姿 + 多少の数値目標)
  ③バリュー(大事にしていく価値観)
理念やビジョン、バリューの核を言語化し、それを全体で共有することが大事なのだ。

また、それらの考えを、あらゆるステークホルダー(生徒・保護者・OB・地域・他校の先生、中学生・市民など)にも共有してもらうためのリーフレットを作成し、発信している。


■「うまくいかない職員室」に見られる「すれ違い」

複数の多種多様な人たちの集まりには「よく起こりがちなすれ違い」がある。たくさんの人の集まる学校において、「“変化”から“進化”」を目指す学校経営を考える上で避けては通れないテーマである。

「うまくいかない職員室」には、
① 役職間のすれ違い
② 世代間によるすれ違い
③ 在籍期間によるすれ違いなど、
いくつかの「すれ違い」があるように感じる。どの職員室でも起こりがちな「すれ違い」である。

①立場間のすれ違い

 運営側は、強力なリーダーシップを示したいあまり、「一歩踏み込んだアプローチ」「インベーションを起こす」「現場力の強化」など、一方的に抽象的な発信する。
それに対し実動側現場は「チャレンジできない、知恵が生まれない」「余裕がない、時間がない」「連携できない」「抱え込んでしまう」「体調を崩した」・・などの悲痛な叫びが返信される。

➁世代間によるすれ違い

 ベテランは、たくさんの経験と自分なりの持論がある。バブル期採用者は、人数が多く元気はある。就職氷河期採用者は、人数が少ない分、負担と期待が大きく、板挟み。若手は、まじめでデジタルネイティブではあるが。

③在籍期間によるすれ違い

 長く居る人は、これまでの経緯と自分たちが作り上げてきたやり方を大切にしてほしいと思う。最近入ってきた人は、今までの学校と比べてしまう。


その結果・・・
・職員同士があまり話しをしない。
・お互いの状況を知らず、自分が一番忙しい思いをしていると感じている。
・困っている人に「どうしたの」「手伝おうか」の一言がない。
・仕事を押し付け合う
・新しいことに参加しようとしない。
・不平不満、批判などのかげ口が時間が経って伝わってくる。


学校経営における最大のテーマは、「生徒の主体性と協働性の育成」と「教師自身の主体性と協働性の向上」だと言えよう。
「うまくいかない職員室」は、「うまくいかない教室」に置き換えることができる。教師自身が感度を高めていなければ、小手先の学級経営しかできないのと同じである。
職員一人一人が自分事として学校経営への参画について語り合えるような関係づくりが築けていなければ、学校はうまくいかない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?