重枝一郎 / 学校経営の進化を考える   Ichiro Shigeeda

福岡女学院中学校・高等学校校長。 中学校教諭(数学)、教育委員会主任指導主事、市立高校…

重枝一郎 / 学校経営の進化を考える   Ichiro Shigeeda

福岡女学院中学校・高等学校校長。 中学校教諭(数学)、教育委員会主任指導主事、市立高校副校長、市立中学校長を経て、現職。2005年、『班形態を生かした集団作りの実践』で、福岡市民教育賞受賞。生徒指導総合講座や福岡県、釜山市などの学校・地域などの講演活動は、500回を超える。

最近の記事

「働きやすさ」と「働き甲斐」のバランス

「働きやすさ」と「働きがい」… このバランスは難しい。 「働きやすさ」をつくるには,規制を強める必要があり, 「働きがい」を高めるには,自由度を高める必要がある。 相反する性質だから難しい。 働く人たちの実態に合わせて改善していかなくてはならない。 ■働きがい 私たち教師の職業は,「働きがい」を維持しつつ,業務改善を図っていくべきである。  業務を一律に削減しても業務改善はうまくいかない。 なぜなら,一人一人が感じていること.見ていることが違うからだ。 だから,それぞれが負

    • ブラックな会議

       “ブラック会議”・・・ *結論が出ない,何も決まらない,先送りばかり *出席者が多すぎる,時間が長い,一人一人の発言が長い *報告会のよう,資料説明が多い,空気がどんより *否定的コメントや代案のない批判が多い *最後にどんでん返し,今までの議論は何だったのかと思ってしまう *意見対立で終わっていいと思っている いつの時代も学校現場では,課題に直面し、教師が多様な考えを語り合う中で「答え」を打ち出していくことが求められる。 会議の中で今求めるのは,拡散か?収束か?参加

      • ’これから’を考える

         保護者世代が考える社会人像と現在のそれとでは大きく変わってきている。具体的に何がどう変わっているのだろう。  ここ数年で学校教育が大きく変わってきていることは誰もが知るところである。大学は,私や保護者の世代では、自由を満喫できる時間と捉えていた人が多かったのも否めない。しかし、現在では、大学で学んで社会に貢献できる人間になることが求められている。就職活動でも,大学の名前よりも,大学で何を学び,何を得たかをきちんと語れる人が選ばれる時代になりつつある。 では、若者が「これから

        • 感動を演出するパラダイムシフト

            ■パラダイムシフト  先生方の経験則でも既にご存知のことだと思うが,感動には大きなパラダイムシフトがつきものである。  例えば,「楽しみにしていた映画を見に行って,実につまらない映画でガッカリした」という経験はないだろうか。おもしろいと思って楽しみに見に行ったら,おもしろくなかったときは,本当にガッカリである。逆に,「つまらないと思っていたら,おもしろかった」ときはどうだろう。たまたま時間つぶしに見た映画だったが,そのおもしろさに感激し,期待以上に感動し・・・これはパラ

          「自尊感情」? それとも「自己有用感」?

          ■ 「自尊感情」と「自己有用感」 「自尊感情」は,自己に対して肯定的な評価を抱いている状態を指すself-esteemの日本語訳である。自分に自信が持てず,人間関係に不安を感じている生徒には、「自尊感情」を高めることが必要と言われる。  しかしながら,日本の社会では,「規範意識(きまりを進んで守ろうとする意識)」の重要性も大切にしなければならない。それらを併せて考えるならば、「自尊感情」よりも「自己有用感」の育成を目指すほうが適当だと言える。  なぜなら,”人の役に立った

          「自尊感情」? それとも「自己有用感」?

          「成功」より「成長」

          ◆コーチング  私は元々、数学科の教員であるが、長年、中学のサッカー部の顧問や市の選抜チームの監督として、サッカーの指導に携わってきた。 サッカーの指導を通して教育について学ばせてもらったことが経験資産になって いる。  それは,選手の「成功」というより「成長」できる学びの環境づくりにおいてで ある。最近では当たり前のように知られている「コーチング」についても,教育界でコーチングという言葉を耳 にしない頃から、サッカーの指導経験を通じて「コーチング」を意識するようになった

          私の学校組織論

          ◆失敗するリーダー  私は,一般的にリーダーとして失敗するパターンとして 2 つあると思っている。一 つは,自分に合わないスタイルになろうとして「虚像」と闘い自滅してしまうこと。も う一つは「矛盾」と闘い自滅してしまうことである。  前者は,責任をとるという立場は当たり前なのだが,事案に対する感度のない指示や 指摘はよくないと考えている。求められれば,私の経験則に基づいた話はする。しかし, 先生方の感度は重要視する(責任はちゃんととります・笑)。 後者は,そもそも組織とい

          学校経営/理念を共有する

          ■年度当初に共有する 組織としての「理念philosophy」「構想vision」「価値感value」 私は、年度が始まる初日である4月1日に、必ず、「学校経営方針」を提案している。初頭効果を得られるこの時期は、学校としての「方向感」を全職員で共有するには最適のタイミングである。  この「方向感」というのは、方向性という細い一本道ではなく、これから向かう世界観のようなものである。これまでのリーダーは、「この山に登ろう」という明確な目標を示し、ルートやペース配分などを示し