わが庭こそ虫達の楽園〜田舎暮らし40年④〜
ある日、ある時、埼玉県北部の葱どころに住んでいる私と、県南に住んでいる友人との対話です。
友人が「深谷葱は、白い部分だけでなく葉の部分も美味しそうなので、食べていますよ。」と話しかけてきたのです。
私は、葱の生育過程を多少は知っているので、友人に「葱は、梅雨の頃になるとアブラムシが発生するので、生産者は駆除のため農薬を撒くんですよ。だから、葉の部分は食べない方がよいですよ。」とアドバイスしたのです。
この問答の後、果たして葱の白い部分は安全なのか、と考えてみたのです。
葱農家は、葱の間に生える草を除去するためにも、除草剤を撒布します。
深谷葱が消費者の口に届くまでには、何度か農薬が撒布されているので、両手を挙げて安全な食材だとは言いにくいのです。
この様に育った深谷葱は、秋から冬にかけ、見事なまでにずらりと畑に並びます。
これを見て、私は思わず
頭(かしら)右言いたくなるや葱の列
という川柳を詠みました。
日本の農業は人手不足であり、今や農薬なくして成り立たないのが現状です。
かつて田草取りはつらい農作業でしたが、除草剤のお陰で田草のない青田が私達の目を楽しませてくれます。
沖縄民謡の「安里屋ユンタ」に、「田草取るなら十六夜(いざよい)月夜」という歌詞があります。
南国沖縄はとても暑いので、十六夜の月の上がってくる頃、月明かりの下で田草取りをする光景を歌っているのです。
一昔前、田草取りは手作業だったので、田の中には、たにし、どじょう、鮒がふんだんにいたものです。
今やこれらの生き物は減ってしまい、高級料理でたまに顔を出すだけです。
とまれ、今、私達にできることは限られています。
私は、広い庭の主ですが、この庭には冬を除いて雑草がびっしり生えてきます。しかし、私はこれらを手で抜いており、40年間一度も除草剤を使用していないのです。
もちろん、庭の草一本一本を自分の手で除草することは並大抵のことではありませんが、地球人の一人として、私はこの作業を続けております。
おかげで、庭の黒土には蚯蚓が湧き、これを食べに土竜(もぐら)が現れ、秋には虫達が所狭しと鳴き始めます。
人間ばかりでなく、虫達をはじめ生きとし生けるものすべてに快適な環境を整えることが、今求められているのではないでしょうか。
SDGsの目標は、こんなところを目指しているのだと思います。
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