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未来は楽しみですか

自分の願いを叶えたいと思うことは誰しもあることだと思う。
私も自分のやりたいことを叶えるために、日々何をすればいいかを考えながら生きてきた。でも最近になって「誰かの願いを叶えたい」という想いも強くなってきたように思う。

私の場合、その相手は子どもたちである。
保育園に勤めて早6年。現在の職場に至っては4年目になる。
毎日、家族と同じくらい一緒に時間を過ごしている子ども達だが、いずれは別れがやってくる。

そして毎日、彼ら彼女らに内在しているものを知っていくたびに、どうかこの子たちが自分で自分の願いを叶えられる人になってほしいと思うようになった。

「大きくなったら何になりたい?」と聞いてみると色んな答えが返ってくるものだ。
「セーラームーンになりたい」といかにも子どもらしい夢を話す子もいれば、「大人になったら保育士になるんだ」と明確に決めている子だっているし、「サッカー選手がいいけどママは違うお仕事にしなさいって言うんだ」と悶々としている子もいる。もちろん「まだ決まってない」と話す子も。

私はいろんな子の話を聞くたびに、それを受け止めながら「今から頑張ったら何にだってなれるよ」と話すようにしている。

先日、今年の3月に卒園をした男の子のお母さんがまだ在園している妹を送りにきた時、「先生のおかげでまだうちの子、絵を描くことが大好きなんです。本当にありがとうございます」と感謝を述べに来てくださった。
私はそれを聞いて心から嬉しさを覚えた。

彼はかつて友達を傷つけたり痛めつけることでしか寂しさを紛らわすことができなかった。でも、絵を描くという手段に誘ったことがきっかけでどんどんその楽しさにのめり込んでいった。それを通して私も彼の話を親身に聞くようになり、気づけばいつの間にかその子は友達をむやみやたらに傷つけることも無くなっていったのだ。

はじめは自分で描くことが苦手でどの色を塗ろうかさえ迷っていたのに、いつのまにか私も見惚れるぐらいのカラフルな色で、自分で想像しながら絵を描けるようになった彼。
そんな彼が、今も絵を描くことを好きでい続けてくれているというその事実は私の存在意義を自覚させてくれた。

別の日も、私が保育園でダンスの小さな単独公演をさせていただいた時、在園している子のお兄ちゃんがお迎えの時に一緒にやってきた。卒園児で私も関わったことがあるのだが、その日わざわざ「先生のダンス見たかったな〜」と言いに来てくれた。
その子も私のダンスを2年前に在園している際に見たことがあって、その後にダンスのスタジオに通い始めて未だに続けているのだそうだ。

こうして私が何気なくしたことが子ども達の中に残って、離れていったあとでも今もずっと続いているというのは、私にとって理想的な形だなと思った。
私が死んでも、私と過ごして残った何かが子どもの中に残ってくれたのなら、肉体がなくなっても精神として生きられる。それってとっても喜ばしいことだと。

私は「これをしなきゃいけない」「あれをした方がいい」と子どもへ押し付けたことはない。ただただ、「楽しいと思ったこと、やってみたいと思ったことがあったら何でもやってみてね」と背中を押すようにしている。
そして楽しくなるためにちょっとヒントを与える。それだけ。

私は子ども達に、「自分の思ったことを大事にする」「自分と同じくらい他人も大事にする」「誰かに合わせなくていい」という事を常日頃から伝えられるようにしている。
機械じゃないんだから意見の相違があって当然。でもそれを互いに認め合えるか否かで人としての育ち方は変わってくる。

大人になってしまえばなかなかすぐには変われない。痛みを味わってきた人は他人の考えを先回りして考えられる力を持っているけれど、自分の意見をずっと通してきた人はいつまで経っても自分本位で、他人がどう思っているかなんて分かろうともしない。いや、考えたこともない人には他人の気持ちなんてそもそも理解もできないと思うから。

ただ、必ず誰しも傷つけたり傷つけられる日はやって来る。その時に何を感じるのか、それを逃さず大切にしてほしいと思うのだ。
私だってそうだったから。人のことを羨んで皮肉を言ってみたことや尖った言葉を言ってしまった事もあるし、自分の行動を陰で嘲笑されたり変わり者だと馬鹿にされたこともある。
でもそれを経て、色んな気持ちに気づいて築き上げた今がある。

子どもたちはまだまだこれから。今からならどんな人にだってなれる。


だから私は別れの日が来てもずっと応援していたいし、それと同時に負けてられないとも思う。
松岡修造ほど表は熱血にはなれないけれど、心はそれぐらい熱く滾っていたいものだ。

私は今、未来が楽しみで仕方ない。

読んでくださりありがとうございます。 少しでも心にゆとりが生まれていたのなら嬉しいです。 より一層表現や創作に励んでいけたらと思っております。