見出し画像

この世の誰にも家族なんていない

僕は四人兄弟の長男です。
弟が1人、妹が2人。

特に兄弟仲が悪いとかはなく、喧嘩したこともありません。

ただ、僕は弟たちと話したこともありません。
最後に会ったのは10年以上前で、一番下の妹には会ったことがないです。

そんなんだから僕は4人兄弟の一人っ子だと思っています。

まぁよくある話です。

両親が離婚して、一人っ子の僕は父に引き取られた。
その後父は何度か再婚し、年の差がある兄弟ができたけど、15年ほど一人っ子として生きてきた僕は兄弟として認識できず、僕はその家から姿を消した。

今どきそんな家庭そこら中にある気がしてます。

でもまぁ一応、僕はこの状況を作った父と再婚した今の母を許せずにいます。

敢えて強い言葉を使わせてもらうと、僕は父と今の母のせいで「この世のどこにも家族なんて存在しない」と思うようになったからです。

僕にも家族はいないし、あなたにも家族はいません

そんなわけないのにね。

でもそう思ってしまうんですよねー。

そう思ってしまう自分は嫌いです。
でも変えられない。

じゃあなんで僕がそういうひねくれた考え方をするようになったのか。

今日はそんなお話。

再婚は誰のため?

僕は父に再婚してほしくありませんでした。
新しい母など欲しいと思ったことはありません。

でもそんな思いと裏腹に父はどうもモテるようで、いつも彼女がいましたし、僕もそのデートに付き合わされていました。
多分彼女がいない期間は1年も無く、別れても数か月もしないうちに新しい人ができていた気がします。

…時々。

時々父は自分の彼女を指して「俺も落ち着きたいんだよ。お前もちゃんと家族がいたほうがいいだろう。」と、母がいない僕への配慮なのか自分の欲望のための説得なのかわかりませんが、そう言って様子を窺ってきました。

そういう時、本音を言わせてもらえるのならば、

「家族はいらない」

それが僕の答えです。

でも当時僕は8歳とかそこらのチビッ子です。

自分を守ってくれるのは父しかいないと思っていました。

父を失ってしまったらもう僕は完全に一人になってしまうと思っていました。

だから僕の答えはいつも決まっています。

「うん、新しいお母さんが居てもいいかも。」

そう言って少し笑い、目を泳がせることしかできませんでした。

でも子どもは意外と繊細で、気づいています。

本当は僕のためというよりも、父自身が女性と付き合いたいから、その口実に使っているだけだっていうことに。

僕がそう言って嘘をついたから、父は満足して気兼ねなく付き合ってたんでしょうかね。

今となっては分かりません。

とにかくそんな誰かと付き合っては別れ、再婚しては離婚しという状況が8歳から14歳くらいの時まで続いた気がします。

そして僕が15歳になるかどうかといったある日、父はいつものように新しい彼女がいることを明かしました。

まあ僕は新しい彼女の存在なんてとっくに気づいてましたが、いつものように驚いた表情をし、「いいんじゃない?」とか適当に返事をしました。

しかしその時はいつもと違うことが一つだけ。

父は

「実はもう相手の人のお腹には子どもがいる」

と、何かを誤魔化すような表情で打ち明けてきました。

その時、僕はどんな表情をしていたのでしょうか。
一瞬頭がフリーズしてしまって、とりあえず

「そうなんだ。すごいね。」

と、何がすごいのか意味不明ですが、そんな曖昧な返事をしました。

そしてその時から僕は、誰も信じられる人がいなくなりました。

誰にも家族はいない

あれよあれよという間にその数日後には3人目の母親となる人と対面することになり、それなりにお互い愛想よく話をして、3度目に会う頃にはもう父と入籍して正式に僕の母となりました。

とはいえ色々あって僕は祖父母の家で生活していて、父たちとは離れたところで別居する形になっていたんですけどね。

そして父と母が入籍した数か月後には「僕の弟」が生まれたので会いに行くことになりましたが、僕は全く興味がありませんでした。

だって他人の子でしょ。

僕は一人っ子なんだし。

実際会ってみても全然可愛いと思えませんでした。

その子が1歳になり2歳になり、ハイハイをしていた子がいつの間にか立てるようになって、いつの間にか喋れるようになりました。

しかし弟がどれだけ成長しても僕は弟として認識できず、可愛いと思ったことは一度もありません。

しかも気づいたら妹まで生まれていましたが、妹も含めて可愛くないです。

高校3年からはもう全く会うことが無くなったので、もう10年は会っていません。
これからも会うことはないでしょう。

それから3人目の母は、僕の本当の母になろうとはしませんでした。

父抜きで僕と話すことはありませんでしたし、僕に言いたいことがあっても父経由で言ってきて、僕のことをずっと君付けで呼んでいました。

ここには書ききれないこともたくさんありますが、とにかく僕と母の間にはいつも微妙な距離感がありました。

状況を受け入れられない僕サイドにも問題はあったんでしょうけどね。

でも「こうなることは覚悟のうえで、父と『できちゃった婚』したんじゃないの?」と問いたくはなります。

そんな状況だったので、僕は家族というものを理解できなくなりました。

それは今でもです。

「家族は裏切る。」

「家族の構成要員は流動的だ。」

「家族はただの構成概念でしかない。」

「家族とはあなたを絶対的に信じ、愛し、守り、そばにいてくれる存在ではない。」

「家族に理想を抱くな。」

「この世の誰にも家族なんていない。」

「血縁が近い存在を家族だと勘違いしているだけだ。」

当時は強くそう思っていたし、正直今でもそういう考えから離れられません。

僕は家族への憧れを捨てられない

そうは言いつつ僕は家族に夢を見続けています。

「家族ってキラキラしたものなんだろうなー」
「家族は常に僕を受け入れてくれるんだろうし」
「どんなことがあっても家族の元が自分の居場所なんだろうなー」

家族がいない僕は、想像することしかできません。

…正直そういうものに憧れます。

ところで僕には妻がいますが、妻と結婚した理由の一つは、妻なら僕に家族というものを教えてくれるんじゃないかと思ったからです。

あなたに家族を作ってあげたいの

妻がいつか言ったその言葉が忘れられないのです。

また、僕には僕と同じように両親が離婚して父に引き取られた後、腹違いの兄弟姉妹がいるという友人がいます。

なんたる偶然の一致。
ここまで同じ境遇の友人は初めてです。

で、その人は腹違いであっても兄弟姉妹をとても大事に思っているし、その人も既婚者なのですが、義理の両親を「新しい家族ができた!」と喜んでいます。

僕は4人兄弟の一人っ子だと思っていますし、義理の両親のことは「義理の両親」としか思えません。

僕と同じような境遇なのに、僕と真逆の感性なのです。

僕はそういう感性に憧れるし、友人のそういうところが大好きで尊敬します。

僕に家族を理解させてくれるかもしれない妻やその友人は、これからもずっと大切な存在です。

この世の誰も家族なんていない。

そんな僕の勘違いを、二人に打ち砕いてほしいのです。

…妻はまだしも、その友人は「そんな使命背負ってないわww」と一笑に付されることでしょうが。笑

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?