見出し画像

いつもの道から一本外れて歩いてみれば

留学でデンマークに滞在中の日本人の友達が、ヨーロッパ旅行中にヘルシンキにも立ち寄るということで、市街で会う約束をしていた。待ち合わせは13時。せっかくなので、午前中はヘルシンキのまちを散策することに。

天気は穏やかな晴れ。日差しはやわらかく、時折やさしい風が肌を撫でる。最高のお散歩日和だ。いい天気のようで、風が強かったり、急に雨が降ったりと気まぐれだったここ最近の空。はじめてフィンランドを訪れるという彼女の到着日が、完璧な気候でよかった。

写真を撮りながらゆっくり歩き、途中、美術館に寄って、時計を見れば、約束の時間まであと1時間ほど。真っ直ぐ行けば、十分に余裕のある時間だが、寄り道する分の時間をあらかじめ考慮して、早めに待ち合わせ場所へと向かった。中心市街はもう何度も歩いているので、絶望的方向音痴のわたしでもさすがにGoogleマップを見なくても迷わないくらいに、土地勘がつかめてきている。

寄り道するあては特になかったので、なんとなく“いいにおい”がする方へ。おいしいもの、ではなくて、好みの建物がありそうとか、いい雰囲気の道が通ってそうとか、そういった直感のことだ。いつも歩く大通りから人通りの少ない通りへ、道を一本外れてみることにした。

ところで、日本には路地と呼ぶのに相応しい、細い道がそこら中にあるけれど、ここにはあまり入り組んだ路地や建物と建物の間の隙間の道、みたいなのがない気がする。メインではないサブ的な通り(…?)でも、道の両側に縦列駐車できるくらいのゆったり感があって、あの見事なまでの縦列駐車には毎回感動させられる。

それはさておき、選んだ道は大正解。どこかレトロな建物の並び、人の姿はないのに置かれた自転車や窓辺に感じる人々の生活感、昼下がりの光、そこに何があったわけでもないけれど、一人心の中で興奮した。いい道、見つけちゃった。しかも、このまま行けば、待ち合わせ時間ぴったりに現地に着く。パーフェクト!

そして、なんだろう、いつもの道から一本外れて歩いたことが、それで新しい景色に出会えたことが、すごくしあわせに思えてきた。実は、この日、朝から好きな音楽を聴きながらヘルシンキのまちを歩いていて、薄々、しあわせかも…と、感じていたのだけど。やっぱり、まちがってなかったみたい。
ああ、こういう光に、景色に、瞬間に、もっと出会いたいと思うとき、すこし大袈裟だけれど、生きててよかったなあと思う。


数日前、偶然友人がシェアしていた記事を読んで、すこし泣いた。しあわせを感じながら、そのことを思い出した。

これを読んで、ずっと、ずっと、苦しめられてきたものの正体がわかって、次に進めそうな気がした。8年も前の記事が、未だにこうして人を救っているという事実に感動しての涙でもあった。

それから、もうひとつ、

“Are you happy? ”

口癖のように、繰り返しそう聞く友達と出会ったお陰で、しあわせを受け入れられるようになった。正確に言うと、Noとは言えないな…ってことはわたしhappy…? そんなところ。友達にとっては気軽なあいさつ程度のつもりなのだろうけど、真剣に考えると、結構どきりとする問いだ。

いつもの道を、すこしだけそれてみる。
それだけのことが、ささやかなしあわせに出会わせてくれたりするのかもしれない。

気に入っていただけたら、サポートいただけると励みになります。よろしくお願いいたします◎