Eriko Sugita

Writer | とりとめのない日々のかけら。フィンランドでかんがえたこと、かんじたこ…

Eriko Sugita

Writer | とりとめのない日々のかけら。フィンランドでかんがえたこと、かんじたこと。 📷→https://www.instagram.com/e_sary125/ ✉️→https://note.com/ichinisan/message

最近の記事

それは、ラッキーなんかじゃない。

思いがけない縁での人との出会いとか、もうダメかもしれないという状況で信じられないようなチャンスが舞い込んできたりとか、ラッキーとしか言いようがないようなできごとが、しばしば起こる。 それは日本にいても同じことなのだけど、不慣れな海外生活では、そのラッキーが余計に輝いて見える。自分の身に起きたことも、他人の話でも。 でも、それって本当にただのラッキーなんだろうか。 友人知人のラッキーエピソードとして語られる話を聞いて、わたしはそれを軽々しくラッキーだなんて言えない。 い

    • Raumaの窓辺

      週末、少し足をのばしてフィンランド西海岸のまち、Raumaへ。世界遺産にも登録されている古い街並み、ラウマ旧市街(Old Rauma)を中心に、とにかくよく歩いた一日だった。 ミントグリーン、パステルピンク、レモンイエロー。カラフルな建物が通り一面にずっと続く。まるでアイシングクッキーかマカロンみたい。旧市街にはこうした北欧の伝統的な木造建築が約600棟あり、今も800人ほどの人々が暮らしているのだという。 ほとんどが一般住民のお宅ということで、あんまり立ち止まって見たり

      • 料理は知っている味の再現

        フィンランドにいるんだから、フィンランドでポピュラーな料理を作りたいと思ってトライするも、食べたことがないメニューに関しては、完成しても正解がわからないことに気がつく。 レシピを探すのも一苦労だ。日本のレシピだったら、お気に入りのサイトがあったり、ある程度うまくいきそうなものや、人気のレシピを検索するコツが、自然と身についているけれど、どれが良さげなものか検討もつかない。 最近、どうしてもあんこが食べたくて、アジアンマーケットで小豆を買って、初めてあんこを炊いた。はじめて

        • 繰り返す生活の安心感、素直に楽しめるまで半年かかった。

          数日から1か月単位で滞在場所を転々としていたため、スーツケースからできる限り無駄なものを出さないよう、ものの移動を最小限に抑えていた生活に終わりを告げ、洋服はクローゼットに、食品はキッチンの戸棚に、洗面用品のストックはバスルームに、フィンランド渡航5か月目にしてようやく、それぞれ仕舞われるべき場所へとものの居場所を落ち着かせることができた。 決まったスーパーに買い物に行き、見慣れた道を往復し、毎日同じ場所で眠る。起きたら、まず、朝食にコーヒーとお気に入りのシリアルとヨーグル

        それは、ラッキーなんかじゃない。

          森のご馳走、キノコ狩りへ

          森に出かけるのにハマってから、ずっとやってみたかったキノコ狩り。夏の終わり頃から秋にかけてのフィンランドの森の、シーズン限定の楽しみだ。 キノコは猛毒を持つものがあったり、食べられるかどうかの見分けがつきにくいものもあるので、知識のある人といっしょでないと危険だと聞いていた。そうしたら先日、現地の方に誘っていただいて、待っていました!と言わんばかりに、意気揚々と連れて行ってもらった。 小さなバケツをひとつ提げ、近所の森へ。特に公園になっているような場所でもなく、看板も何も

          森のご馳走、キノコ狩りへ

          ひまわりサイクリング

          前日に遠出をしていて帰りが遅かったので、今朝は寝覚めが悪かった。 午前中、少し遅れた起床を取り戻すかのように、いつもより念入りに掃除をし、洗濯を済ませ、洗濯物を干すためにベランダに出ると、よく晴れたいい天気。 8月だから、まだ夏が続いていると思いたいけれど、体感でいえば日本の“秋晴れ”。気温は20度弱、湿気はなくて、いわし雲が出ていそうな気候だ。 これは外に出なくては勿体無いと、Googleマップをチェックして、気になってピンを立てておいた場所の中から、サイクリングで行

          ひまわりサイクリング

          住みたいまち

          8月でフィンランドでの生活が5か月目に入った。 これまで、住む場所を転々としてきたけれど、この先(計画通りにいけば)あと8か月はTurkuというフィンランド南西部のまちで暮らすことに決めた。 Turkuにはまだ吹雪いていた4月と、夏至間際の二度、来たことがあって、古い建物が街並みに溶け込む雰囲気や、市街地の活気はありつつ、Helsinkiよりもずっとコンパクトなまちの規模が肌に合う感じがしていた。何よりも、バルト海に注ぐアウラ川沿いの日常風景が素晴らしい。 4か月間にわ

          住みたいまち

          hug

          hugはいい。 はじめましてのhug、 お別れのhug。 いってらっしゃいのhug、 おかえりのhug。 がんばってねのhug、 大丈夫だよのhug。 ひょんなことから始まった、クルド人の青年との1か月の共同生活が終わりを迎え、今朝、わたしが今日ここを離れるということと出発時間、それから1か月間ありがとうと彼に伝えた。 彼は「OK、その時間はここにいるよ」と言って部屋に戻りかけたけど、「Eriko」とわたしの名前を呼んで、hugしてくれた。 会話をしようとすると、

          フィンランドの森より

          先週、先々週にフィンランドの森へ出かけた日のことを書こうと思っていたのだけど、うまく言葉が出てこない。せっかく余計なことを考えずに、ただただ歩いたその記憶を、無理に言葉で書き起こす必要はないと思い直して、すこしだけ撮った写真で振り返ってみようと思う。

          フィンランドの森より

          湖に寝転がる。フィンランドのサマーコテージで。

          週末、日本から遊びに来てくれた友人カップルといっしょに湖のほとりにあるコテージを借りて2泊3日を過ごした。手入れが行き届いたきれいなコテージとガーデン、そこから境界なく広がる自然。非現実的なほど静かでうつくしく、風が止んで、鳥のさえずりすら聞こえないと、大袈裟なんかではなく、世界に自分たちしかいないんじゃないかと錯覚させられた。これまでの人生で経験したなかで、いちばんの静寂だったと思う。 食事をとりながら、花から花へ忙しそうに動き回るハチを見て、ああよかった、わたしたちだけ

          湖に寝転がる。フィンランドのサマーコテージで。

          "What should we do next time?"

          友人の紹介を通して知り合った、同世代のフィンランド人の女の子。熱心に日本語を勉強していて、読み書きはずいぶんできるみたいだし、会話でも一生懸命日本語を使おうとしてくれて嬉しい。わたしも、できるだけ簡単な単語でゆっくりはっきり話す。拙い英語よりもよっぽど伝わったりすることもある。 先日、彼女といっしょにSuomelinna/スオメリンナの要塞へ遊びに行った。実は、わたしたちは6月に一度そこへ行く計画を立てていたのだが、当日大雨が降って延期に。この日も朝からまあまあな雨が降って

          "What should we do next time?"

          お隣さんはクルド人。奇妙な共同生活の隣人との適切な距離。

          薄い壁を一枚隔てた向こう側で、クルド人の青年がEURO2024決勝戦、イングランド対スペインを観戦している。ちょうど今、ゴールが決まったのか、実況中継の音声の合間に、遠慮がちな拍手と、うぁ!っという声が聞こえてきた。あ、笑ってる。どっちを応援しているんだろう。 ひょんなことから、今月はその彼とアパートで2人暮らしをしている。2人暮らしと書くと、なんだか親密な関係性に聞こえるかもしれないが、結果的にこうなっているだけで、友達でもなければルームメイトという響きも実際の感覚には合

          お隣さんはクルド人。奇妙な共同生活の隣人との適切な距離。

          他人(ひと)と比べてしまうわたしたち

          高校時代からの親友と久しぶりに電話をした。15歳の頃からの仲だから、もうお互いを熟知していて、SNSには書けないようなできごとも、自分のなかだけに溜め込んでいる気持ちも、彼女との会話に隠すものは何もない。 (今、これを書いていて気づいたけれど、今年で30歳を迎えるわたしたち、もうすでに人生の半分をいっしょに過ごしてきたんだね。) 一通り、お互いの近況報告をし終えれば、いつも飽きもせずにだいたい同じようなことを話している。東京で仕事をがんばっている彼女と、フィンランドで人生を

          他人(ひと)と比べてしまうわたしたち

          コーヒーとバスタオル

          フィンランドに渡航するにあたって、自分にとっての必需品が何か、というのはずいぶん考えた。なんせ滞在期間に関わらず荷物は最大でも機内預け入れ23kg×2、手荷物×2までなのだから、それに収めるためには必然的にミニマリストにならざるを得ない。 追加料金を払えば、それ以上の荷物も持ち込めるものの、そもそも一人で運べる量ではなくなるので、わたしの場合は上限ギリギリの重さで、大きなスーツケース×1、ボストンバック×1、リュックサック×1、ショルダーバック×1が日本から持ってきた1年間分

          コーヒーとバスタオル

          コラム「サウナで近づく人々との距離」#works

          WEBmagazine「リンジン」さんで、フィンランドにまつわるコラムを書かせていただくことになり、連載がスタートしました。 初回は、はじめてパブリックサウナを訪れたときのエピソードです。さくっと読めるコラムなので、ぜひ覗いてみてください。 わたしはフィンランドに来るまで1度もサウナに行ったことがありませんでしたが、先日は滞在先のホストと子どもたちとサウナに入ってそのままタオル1枚で庭に出たり、友人のアパートに遊びに行った時には、サウナの合間にベランダでビールを飲みながら

          コラム「サウナで近づく人々との距離」#works

          Day trip to Fiskars 〈後編〉

          Fiskars Antique Daysの会場を後にして、Fiskars Museum、それからショップやギャラリー巡りへ。昔の工場や、学校、マナーハウスなど、建物自体に見応えあって、いちいち立ち止まっては見惚れ、写真に収め、建物ごとに設置されている解説を読み、なかなか先へ進めない。Fiskars社の創業は1649年で、工場をはじめとした建造物は19世紀に建てられたものだというから、こうしてきれいな状態で役割を変えて今も使われているのは、これらの建物が大切に守られてきた証なの

          Day trip to Fiskars 〈後編〉