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住みたいまち

8月でフィンランドでの生活が5か月目に入った。

これまで、住む場所を転々としてきたけれど、この先(計画通りにいけば)あと8か月はTurkuというフィンランド南西部のまちで暮らすことに決めた。

Turkuにはまだ吹雪いていた4月と、夏至間際の二度、来たことがあって、古い建物が街並みに溶け込む雰囲気や、市街地の活気はありつつ、Helsinkiよりもずっとコンパクトなまちの規模が肌に合う感じがしていた。何よりも、バルト海に注ぐアウラ川沿いの日常風景が素晴らしい。

きれいに整備された遊歩道。読書をしたり、アルコールを飲んだり、犬の散歩の休憩をしたり。
向こう岸へ渡るためのCity Ferry。人間も犬も自転車も、みんなを乗せてゆっくりゆっくり動くこのFerryの、なんとも言えない愛おしさ。
水辺のあるまちが好き。

4か月間にわたり、ずっと2週間から1か月単位で場所を転々としていたせいで、そのまちに「住んでいる」という感覚が薄く、かといって旅行ともちがって、なんだか宙ぶらりんな状態だった。
いろんなまちを見ることができて、それはそれで楽しかったけど、Turkuに来て、これから数か月ここに住むんだと思うと、もうすでにまちへの愛着がこれまでとは全然違う。

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将来住みたいまちを聞かれれば、迷わず学生時代を過ごした長野と答える。

何か一つ大きな理由があるわけではなく、いろんな要素が絡み合って、その意志はずっと固いものとして心の中にある。土地に対する愛着をはじめて抱いたのが、長野(特に松本)だったというのが大きいのではないかと思う。

住んでいるまちを愛している状態というのは最強だ。
悲しいときも寂しいときも、散歩するだけで癒される。
旅から帰ってきたときに、心がほっとほぐれる。
そして、そこに暮らしている自分自身をも肯定できる感覚になる。

生まれ育った東京は嫌いじゃないけれど、愛着というのはさっぱり感じなくて、故郷というよりは“たまに遊びに行くと刺激的で楽しい場所”。東京に降り立っても“ただいま”感は、もう、ない。

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松本とTurkuに何か共通点があるだろうか。当然、日本とヨーロッパとでは街並みはまるっきり違う。松本には友達がいて、お気に入りのお店がたくさんあるけど、ここではまだ見つけられていない。それでも、何か松本に似た安心感をTurkuにも感じる。

黄色い自転車がレンタサイクル(DONKEY REPUBLIC)。アプリひとつで位置情報や自転車の鍵の開閉がすべて管理されていて、とても便利。それでいてコストも安い。フィンランドではTurkuとKouvolaのみだけど、デンマークやドイツなど、ヨーロッパの他国でも利用されているみたい。

レンタサイクルを長期契約して、今日もそれを乗りこなし、まちへ出て、ひとついいお店を見つけた。いつか、このダサい自転車さえ恋しくなる日が来るだろう。

ただ、わたしはまだこの国の厳しい冬を経験していない。胸を張って、このまちが好きだと宣言するのは、冬を乗り越えてからにするべきかもしれない。

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