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"What should we do next time?"

友人の紹介を通して知り合った、同世代のフィンランド人の女の子。熱心に日本語を勉強していて、読み書きはずいぶんできるみたいだし、会話でも一生懸命日本語を使おうとしてくれて嬉しい。わたしも、できるだけ簡単な単語でゆっくりはっきり話す。拙い英語よりもよっぽど伝わったりすることもある。

先日、彼女といっしょにSuomelinna/スオメリンナの要塞へ遊びに行った。実は、わたしたちは6月に一度そこへ行く計画を立てていたのだが、当日大雨が降って延期に。この日も朝からまあまあな雨が降っていて、午前中はカフェで雨宿りをし、諦めかけたところで微かに青空がのぞいたので、わたしたちは顔を見合わせお互いににっこり。"We can try!!"と、決行することに。彼女には「雨女」という言葉を教えてあげた。

Suomelinnaはヘルシンキの港から船で15分の島々に築かれた要塞で、世界遺産に登録されている人気の観光地であり、今もそこで暮らす人がいる有人島でもある。彼女曰く、Suomelinnaの子どもたちは船で本土の学校に通うそうだ。
たしかに、島の至る所で「この先には侵入しないでください」と言うような注意書きを見た。住民たちの暮らしを守るためのサインだ。彼女が以前ここに来た4年前には注意書きはなく、その先にも入っていけたという。観光客の増加に伴い、状況が変わったのだろう。帰ってから気になって調べてみると、Suomelinaの人口は最新データの2022年時点で673人。わたしが通っていた小学校の全生徒数よりも少ない。

真っ暗でひんやりとした洞窟のような石壁の中を歩いたり、海の向こう側のヘルシンキの街並みを眺めたり。午前中があいにくの天気だったので、人が少なく、かえってのんびり歩き回るにはちょうどいい。

-この島(Sushi-saari)はオオカミの島という意味です。
-あ、知ってる!sushiはオオカミなんだよね! こっちのPikkumustaはsmall black…? Iso Mustasaariはbig black island…?
-そうです。(飛んでいるカモメを見ながら)あー、lokkiは日本語でなんと言いますか?
-カモメ!ヘルシンキにあるLokkiravintlaは「かもめ食堂」だね。
-ああ、いつもカモメを忘れてしまう。そこには行ったことがあります。日本人がたくさんいました。

途中、地図の前で立ち止まってそんな会話をするのも楽しかった。

わたしは難しい英語が話せないし、彼女もまた簡単な日本語で話すので、どうしても会話は深まっていかず、詰まっているように感じることはある。でも、お互いにまだ流暢ではない言葉を使ってコミュニケーションを取ろうとしているという姿勢は共通しているから、伝わった時の喜びも、伝えられないもどかしさもきっと共有できているだろうと思うと安心する。

カフェではそわそわしてしまう沈黙も、歩きながらだと心地よい。

2時間ほど歩いて、帰りの船に乗りヘルシンキの市街に戻る。海の上でこれからSuomelinnaに向かう船とすれ違った。天気が回復したからか、2階席にたくさんの乗客をのせていて、こちらを見て大きく手を降っている人がいるのが見えた。

彼女は楽しめていたかな?
船から降りて駅へ向かう道で、そんなことを考えていると、別れ際にこう言ってくれた。

"What should we do next time?"

ああ、よかった。きっと、楽しかったんだ。次はSeurasaari(これもまたヘルシンキの港から気軽に行ける島)に行ってみるのもいいねと、ふんわり約束をして"See you soon!"とお別れをした。

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