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イネス・ファン・ラムスウィールド&ヴィノード・マタディン 『 Pretty Much Everything』/目は旅をする053(写真の未来形)

イネス・ファン・ラムスウィールド&ヴィノード・マタディンInez van Lamsweerde/Vinoodh Matadin
『 Pretty Much Everything』
(Taschen刊)

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ファッションフォトは、単純には商品としての服を売るためのものである。
しかし、早くからその洋服に、資本主義的な価値生成を増幅させるための重要な共犯者であった。

ファッションの特異なところは、デザイナーによる「作品」でありながら、「流行」という常に変化し続けるトレンドを持っていることである。
それから、もう一つ重要なのは、ファッションは、どんな服を着て、何を身につけているかという外見によって、その人間のステータスや人格を示すものになったということである。

ファッションは単なる商品としての服の話にとどまらず、アイデンティティに関係する進化し続けるゲームになったということも重要だ。

さらにはファッションフォトグラファーは、もはや洋服の物撮りに長けた者ではなく、アーティスティックなイリュージョン(夢)を与えるマジシャン(別の名をアーティスト)でなければならないという存在になった。

極論すれば、洋服のディテールが写っていなくとも、価値の差異を生成できればよいという、類い稀なイメージメーカーの役割が求められるということになったわけだ。

だからそのパイオニアとしてマン・レイというシュルレアリストが現れて、ファッションフォトを切り開いたのは、ファッションフォトの根本的なパラドックスをよく示している。

そしてマン・レイから約100年がたった。
ファッションフォトは、ファッションの価値生成を増幅させるための魔術的装置としてさらにアップデートされるべき時にきた、と僕は考える。

そこで今回は、ファッションフォトの最先端にいる、オランダのイネス・ファン・ラムスウィールドとヴィノード・マタディンの2人からなるユニットの、その分厚い写真集をとりあげたいと思う。

彼らはニック・ナイトを継ぐトップファッションフォトグラファーであり、1990年以降、『 V Magazine』、『New York Times Magazine』、『Vogue』などのメディア、そしてバレンシアガ、カルバンクライン、シャネル、ディオール、グッチ、バレンチノなどのハイブランドのキャンペーンヴィジュアルを縦横無尽に作り出してきた。
加えて、レディ・ガガやビョークなどセレブリティを被写体に、ポートレイトの新境地も拓いている。

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