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フィオナ・タン『Vox Populi Switzerland』/目は旅をする056(人間の秘密)

フィオナ・タン『Vox Populi Switzerland』(Aargauer Kunsthaus刊)

スイスには僕のお気に入りの現代美術館がいくつかあって、そのうちの一つが、アーラウにあるAargauer Kunsthausアールガウアー美術館である。
この美術館はスイスの現代アーティストの膨大なコレクションで知られるが、2003年に建築家ヘルツォーク &ド・ムーロンが見事なリノベーションをはたして、小ぶりながら実に先見性のある施設とプログラムを提出してくれるのだ。

スイスと現代アートというと、アートバーゼルやバイエラーファウンデーション、あるいはホフマン一族によるシャウラガーなどをすぐに思い浮かべるかもしれないが、アーラウの美術館や、ヴィンターツールの写真美術館など、速さと深さを両立させる営為あってのことだと実感する。

2020年から世界を覆ったCOVID 19から海外への渡航が出来なくなって2年半以上がたち、やっと規制が緩くなり、ヴェニスからカッセルへ旅する途上にチューリッヒに遺留した。
アートバーゼルのタイミングではまだ、規制がきつかったので諦めて、何もフェスティバルのない9月に訪ねることにしたのだった。

しかしそれでも新館ができたクンストハウス・チューリッヒではニキ・ド・サンファルの見応えのある大回顧展に出会い、そしてチューリッヒ近郊にあるアールガウアー美術館では、何の下調べもしないで行ったのだが、「Frau ist eine Frau ist eine Frau...」(女は女、女は女…女性アーティストの歴史)と「現代コレクション展」の2つが同時開催されていた。

「女は女、女は女…」展は、豊潤なコレクションを活用しつつ従来の美術史に対する疑問を投げかけることを意図していた。
約50人の女性アーティストは殆どが未知だったが、その中には以前から好きだったゾフィー・タウバー・アルプやメレット・オッペンハイム。シルヴィア・ベクリ、ミリアム・カーン、ピピロッティ・リスト、イケムラレイコそして旧知の写真家マリアンヌ・ミュラーが並んでいた。

また、同時開催の「現代コレクション」は、タイヨー&ニコ、シラナ・シャバジ、マイ・チュー・ペレら僕が愛してやまないスイスのコンテンポラリーアーティストが並んでいて、そのキュレーションのセンスは「女は女、女は女…」と二重奏のハーモニーを奏でていて、豊かな響きを増幅させていた。

そのコレクション展の中で、一際嬉しく、そして懐かしい作品がフィオナ・タンが、スイスにレジデンスして制作した作品「VOX POPULI」(Schweizerische )であった。

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