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【日本語教師のための】漢字②【試験合格へ】

日本語教育能力検定試験、登録日本語教員試験の対策講座です。
今回は、「漢字」の第二弾です。
第一弾はこちら!



前回の復習

前回は、漢字の種類について書きました。
そもそも文字の種類にもいろいろあるという話から始まりましたね。
では、文字の種類について少し復習しましょう。

日本語の文字には、「漢字」「仮名(平仮名・片仮名)」「ローマ字」があります。では、これらの違いは何でしょうか。

文字の種類は、大きく分けると二つになります。
その文字に、音・形・意味がそろっているものは、表語文字。漢字はこれにあたります。
その文字が音だけを表す場合は、表音文字
その中でも、母音と子音を区別できるものがローマ字
母音と子音が一体になっているものが仮名です。

ああ~、そんなのあったな。と思いましたか?
そんな風に、少しずつ記憶が重ねられていくと忘れにくくなります。積極的に復習していきましょう!

では、ここで本題。漢字の分類に入ります。

漢字の分類方法

漢字の分類と聞いて、何か思いつくものがありますか?
いろいろな分け方がありますが、最も有名なものは学校で学んだはず!

例えば、これらの漢字をどう分類しますか?

実は、6種類に分類できます!

これらも含めて、漢字の分類法を明らかにした人物がいました。
中国の後漢の時代、許慎という人です。
説文解字』という本で、六書と呼ばれる分類が書かれています。
これ、「ろくしょ」ではなく「りくしょ」と読みます。

六書とある通り、分類は6種類です。

なんか見たことある!

では、先ほどの漢字は、それぞれその分類に当てはまるでしょうか。
正解は次のスライドで!

予想は合っていましたか?

それぞれの分類について解説します。

象形は、ものの形を漢字としてそのまま表したものです。
土が持りあがった形を見て、山というような文字になったわけですね。現在の楷書の漢字を見ても、なかなかわかりにくいかもしれませんが…

指事はどうでしょうか。象形との違いは?
それには、抽象度が関わっています。
山を見て、その形をうつすことは簡単かもしれません。しかし、「上」という概念はどのように表すことができるでしょうか。すべての「上」を示すような物体を探すことはなかなかできません。
指事は、そのような抽象的な概念を、線などで示しているのです。

では、会意は?
「鳴」や「森」を見ると、それぞれに特徴があります。
それは、漢字内のパーツも、漢字であるということです。
「鳴」は「口」と「鳥」、「森」は「木」でできていますよね。
会意は、このように意味を表すパーツによって構成されている感じです。

形声になるのは、どんな漢字でしょうか?
「声」とありますが、読み方に注目してみてください。
そうです、実は、読み方に特徴がありますね。
「花」の音読みに「カ」があります。それは、「花」の一部である「化」の音読みと同じですね。「河」の「カ」も、「可」の音読みです。また、草冠は意味が植物であることを示し、さんずいは水に関係することを意味しています。
つまり、形声は音を表す部分と、意味を表す部分から作られた漢字のグループなのです。

ここまでの4種類の分類には、共通することがあります。
それは、造字法です。
ちなみに、残っているあど2つの分類は用字法に基づいています。

造字法というのは、漢字の成り立ちによって分けるというものです。象形・指事・会意は、確かに漢字がどのように生まれたかという点についての話でした。
用字法はそれと異なり、漢字がどのように使われるかに重きが置かれています。

では、残りの2つの分類も見ていきましょう!

転注は、漢字の意味が本来のものから変化し、別の意味になったものです。たとえば、「楽」は、元々は音楽を表していました。しかし、そこから楽しいという意味になりました。このように、意味するものが転ずるということで転注になったのです。

仮借は、「かしゃ」と読みます。
仮に借りるって、何を借りるのでしょうか。それは、別の漢字です。同じ音を持っている別の漢字を借りて表しているのです。
「豆」は、肉を盛る皿のことでした。しかし、それをあの植物、マメを表すのに使ったのです。「云」も、雲という意味でしたが、「うんぬん」という、何かを話しているというものを示すために用いられました。

これら用字法の漢字は、現代の日本語母語話者が見て判断することはかなり難しいと思います(私も調べないと、どの漢字が転注なのかはわかりません)。
ですから、転注と仮借に完璧に分類できるようにならないといけない!と意気込まずに、この記事にあるいくつかの漢字だけでも覚えておけば大丈夫です。
造字法は比較的わかりやすいので、他の漢字が試験に出ても分けられるように練習しておきましょう。

これらの漢字は、象形・指事・会意・形声のどれにあたるでしょう?

わかりましたか?
正解は、

象形:月、人
指事:一、末
会意:信、男
形声:町、理

でした。予想と反していた場合は、それぞれの用語の意味を見返してみてくださいね。

ここまで、漢字の分類を行いました。
六書は6種類あるだけあって、結構分量が多いですね。
知らない用語を覚えるのは大変ですが、一つひとつ地道にやっていきましょう。

さて、分類にはほかにもあります。
六書だけじゃないんです。
漢字の分け方として、他に何があるでしょうか?
それは、部首です。
漢字検定にも、部首の問題がありますよね。へん・つくり・かんむり・たれ・あし・にょう・かまえに分けられます。
ですが、部首にはわかりにくいところがあります。
たとえば、「問」の部首はどこだと思いますか。「門」ではなく、「口」が正解です。「売」は?「士」です。
私は部首を見分けるのが苦手ですが、漢検のために学ばれた方もいらっしゃるでしょう。
日本語教師関連試験では、細かな部首が訊かれたとしても1問程度です。あまり固執しないようにしてくださいね。

その他、部首と似ていますが、各パーツの配置で分類するという方法もあります。


読み方(音読み)

次は、漢字の読み方についてです。
音読みと訓読みがありますが、まずは音読みを学びましょう。

実は、単に音読みと言っても、それが日本に伝わった時代で分けることができるのです。何にしても、人間は分類することが好きなようです。用語が多くなりますが、覚えていきましょう。

「行」という漢字を考えてみてください。この漢字のおにょみは何でしょうか。
ギョウ、コウ…。 アンもあります(「行脚」のときなど)

呉音って何?

これら、「行」の3つの読み方は、ちょうど音読みの歴史を示しているんです。
音読みの中で、5~6世紀に伝わったものが呉音です。ギョウがこれにあたります。仏教の用語などによく見られます。
漢音とは、遣唐使が日本に持ってきた読み方になります。コウがこれです。
唐音は禅僧や商人などが伝えたもので、アンは唐音です。あまり聞くことがない読み方ですよね。
それぞれの見分け方には

  1. ナ行で始まる音読みとザ行で始まる音読みの2つがある場合、ナ行が呉音、ザ行が漢音である(「日」の場合、ニチが呉音、ジツが漢音)

  2.  ナ行で始まる音読みとダ行で始まる音読みの2つがある場合、ナ行の方が呉音、ダ行の方が漢音である(「男」の場合、ナンが呉音、ダンが漢音)

などがあるようです。詳しく知りたい方は、下の記事をご覧ください(上記の2点も、下の記事を参照しました)。試験で転注などと同じく、あまり細かく聞かれることはないと思います。あったとしても少量でしょう。なので、ここではあまり分量を割きません。ご了承くださいませ。

音読みには、慣用音もあります。これは、寛容的に日本で読まれてきた音のことです。呉音・漢音・唐音のいずれでもありません。
たとえば、消耗の「耗」があります。本来はコウというのですが、このときはモウですよね。情緒の「緒」もそうです。

読み方(訓読み)

訓読みは、そんなに大変じゃありませんよ。

異字同訓は、その名の通り、異なる漢字でも同じ読み方のものを指します。「あう」という漢字もいろいろありますよね。合う、会う、遭う…。これらが異字同訓の漢字です。

熟字訓は、熟語の特別な読み方のことです。「昨日」や「五月雨」は、その熟語のための読み方ですよね。


日本生まれの漢字

ここまで、漢字について話してきました。
ちなみに、漢字がいつごろ、どこで生まれたか、覚えていますか?
漢字の起源は甲骨文字でしたよね。忘れていたら、前回の記事を見直してみてくださいね。忘れることは仕方がない!その分、何度も思い出すことで記憶が強化されますよ。

さて、漢字は中国で生まれたのですが、日本生まれの漢字もあるんです。
それを国字と呼びます。

中国では使われない漢字もあります!

日本で生まれた漢字、国字です。さきほどあった六書の会意にあたるものが多く、音読みが存在するものも。
中でも有名なのは「働」です。これは日本で作られたのですが、中国でも使われているのだとか。面白いですね。


表記方法の歴史

漢字についていろいろ覚えてきました。この分野で最後になります。
ですがここが肝心!ややこしいですが、ゆっくりいきましょう。
年号もありますが、全部を完全に覚えようとせず、時代の流れを意識してくださいね。

な、なんだこの歴史の授業感…

漢字に関しては、様々な歴史があるんです。
まず、重要人物に前島密がいます。「密」でヒソカと読みます。ヒソカさんって、かっこいい名前ですね。
彼は、1866年に「漢字御廃止之議」を書きます。漢字を使わないようにしたい!というを著したものでした。どうして、漢字を辞めようと言ったのでしょうか。
これには、この時代背景が関係しています。当時、日本は近代化まっしぐら。筆順が多く複雑な漢字を使うのは、その妨げになると考えていたのです。甥に国語教えたときに、漢字教育の難しさに気が付いたのだとか。実は、前島は鉄道や新聞事業にも携わっていました。中でも郵便分野での活躍は目覚ましく、「日本近代郵便の父」とまでされています。お家に1円切手がある方は、確認してみてください。写っているのが前島です!

ただし、そんな優秀な前島の漢字廃止論は受け入れられず、実現はしませんでした。ただ、1946年には「当用漢字表」が告示されます。これは、日本で初めての漢字制限でした。当用漢字表にない漢字は漢字で書いてはいけないなどかなり厳しいものだったので、長くは続きませんでした。その後にできた「常用漢字表」は、みなさんもよくご存じのはず。2010年には改定され、漢字数も増えました。この「常用漢字表」は制限ではなく、漢字使用の目安として示されています。戦後に大急ぎで作成された当用漢字と違い、きちんと国民の漢字使用を考慮して作られました。
教育漢字は、小学校で学ぶ漢字のこと。1026字が示されています。


今覚えちゃおうのコーナー

漢字の後半戦、お疲れさまでした!
長くなってしまいましたが、いかがでしたか。

単語は丸覚えするよりもエピソードと絡めたほうが良く(記事でも、単語のみではなく豆知識的要素を加えています)、人に説明するほうが頭に残りやすい(そもそも残っていないと教えられませんが)そうです。みなさまの記憶を後押しするため、以下の質問に先生になった気分で説明してみてくださいね。

いかがでしょうか。忘れてしまっても大丈夫!何度も思い出すことで、徐々に覚えていきますよ。


今回の重要語

では、今回の内容のおさらいです。
この記事で登場した重要用語をまとめたので、良ければご活用くださいね。



おわりに

お疲れ様でした!
漢字はややこしいですね。次回からは仮名に入ります。
もしよろしければ、また次の記事もご覧ください。


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