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【教案】あなたはどのタイプ?教案作り方まとめ

授業のごとに、何かしらの形で作る「教案」。
セリフを一つ一つ書くタイプ、発言のきっかけだけ書くタイプ、
ネット上の教案を丸パクリするタイプ(かつての私)…
あなたはどのタイプですか?

この記事では、自分に合った教案作りができるよう、
いろいろなやり方をまとめました。
無理せず授業ができるヒントとなれば幸いです。

教案は何のため

教案は、授業の計画です。作成の目的は人によりますが、主に

・授業の流れを考える
・授業の記録として残す
・学校に提出しなければならない(新人教師など)

などの理由で作られます。
ちなみに、私は最近はあまり作りません。そのわけは、記事の後半に記しています。

教案の作り方タイプ

【初心者、疲れている教師向け】ネットそのまま

日本語教師になって最初のころ、私はまさにこれでした。

ステップ1 テキスト名を検索
ネットで調べると、だいたいの教案はヒットします。
とくに日本語学校の内容であれば、有名な『みんなの日本語』はすべての課を探すことができます。
また、無料で公開されているものに加え、noteなどでは有料販売されているものも。

ステップ2 一番自分ができそうなものを選ぶ
『みんなの日本語』の教案は無数にあります。簡単にネットで調べただけでも上位に出たいくつかを比較することができます。
そうしてみてみると、各サイトによって様々な「導入」があるとわかります。導入は学生の気を惹いて、授業内容に関心を持ってもらう大事な部分なので、自分が「この導入ならできそう」と思うものを選んでください。
「練習」は、どの教案もあまり変わりません。リピートなど、やりやすいものを使いましょう。
そして、必要なスライドや授業に使う資料を作ります。ネット教案には、導入のイラストなどが載っているものもあるので、それをそのままpowerpointに貼り付けることもできます。

ステップ3 書き起こす
とくに、新人の先生や毎日の授業に疲れている先生は、不安解消のためにも書き起こすとよいと思います。
その際、調べた教案をwordなどで見やすい形に編集し、各行の余白を多めにとって印刷すると、授業の振り返りをパパっとメモしやすいのでおすすめです。

【授業に慣れてきた教師向け】既存+ひと手間

ステップ1 テキスト名を検索
ここまでは、上記の「ネットそのまま」と同じやり方です。
担当範囲をネットで調べ、よいと思ったものを選びます。

ステップ2 発話量を増やす方法を考える
ネット教案には、教員と学生の受け答えを簡単に書いたものが多くあります。しかし、現実にはそのモデルのように、スムーズに進むとは限りません。そこで、ネット教案を読みながら、自分の学生ならどのような反応をするか、考えてみます。そして、それを書き込むか、頭の中でシュミレーションします。

ステップ3 例文・練習を考えて、少し増やす
すでに調べてある教案に、例文をプラスします。まずは検索して、簡単な言葉で意味が伝わりやすい文を選びます。そして、それをこれまでの教案に入れた後、自分でもいくつかの例文や練習に使う文を考えます。
完全に既存そのままの授業ではなく、ひと手間を加えることで、例文づくりに慣れることができます。早く例文を考えられるようになれば、学生からの突発的な質問への対応力も上がります。

【余裕がある教師向け】意外とできる、完全オリジナル

ステップ1 テキストを見て例文を考える
担当範囲を確認します。そして、その文型やテーマを使った例文を考えます。例文はできるだけ簡単な単語を使い、それを使っている状況がわかりやすいものにします。学生は、その課で新出の文法事項を学習するのに頭の容量を割きます。そのため、導入する例文で「新しい文型」と「難しい・知らない単語」が出てくると、一気に理解の意欲が下がります。文法を教えるなら、簡単な単語と新しい文型で。単語を教えるときは、簡単な文型と新しい単語で。バランスが良い文を作ります。

ステップ2 導入を考える
では、さっき作った例文をもとに導入を考えます。
基本的には、その文を導く問いを想像します。

たとえば、『みんなの日本語』45課の「のに」なら、
例文「昨日たくさん寝たのに、眠いです」の導入として

昨日は何時に寝ましたか?

などの問いが考えられます。その後は、学生の答えを想像しながら

教師「○○さん、昨日は何時に寝ましたか?」
学生「昨日は12時に寝ました」
教師「何時まで寝ましたか?」
学生「8時半まで寝ました」
教師「長いですね。何時間寝ましたか?」
学生「8時間半です」
教師「たくさん寝ましたね。今は眠いですか?」
学生「ああ、はい、少し…」
教師「○○さんは、たくさん寝ましたね。でも、今眠いです」
  「【例文】昨日たくさん寝たのに、眠いです」

と、例文を導くまでシュミレーションします。
「今は眠いですか?」に、「いいえ」と言うかもしれません。その時には、そう言わなそうな、いつも眠そうな学生に当てるとか、

「ああ、たくさん寝たから、眠くないですね」
「でも、この私は【例文】たくさん寝たのに、眠いです」

とするなど、いずれにせよ例文につながるように(上のものは強引ですが)します。上の「既存+ひと手間」の教案作成法にも書きましたが、学生は教師が思ったようなスムーズな受け答えをするわけではありません(それが面白いところでもあります)。ですから、あまりに完璧な進行だけを想定すると、授業の話題がそれてしまい、修正が難しくなるかもしれません。
それぞれの学生やクラスの雰囲気に合わせて、いろいろなパターンができると思います。

ステップ3 発話量を増やす方法を考える
これも、「既存+ひと手間」と同じですが、できるだけ教師が話さないようにします。それは、聞いているばかりの授業だと集中が切れる学生が多いからです。ちょっとしたことでも問いかけるようにします。

さっきの「昨日たくさん寝たのに、眠いです」の導入では、必要がないですが「何時間寝ましたか?」と質問しました。それぐらい、口を開ける機会を増やします。

授業が終わったあとに

上記のような方法で教案を作成し、実行します。
授業が終わったあとは、今後もためにも教案を修正することが必要です。
授業後は疲れていて、テストのチェックに追われたり、何もかもめんどくさかった私ですが、ほんの少しでも振り返るようにしていました。
うまくいったところ、導入があまり伝わらなかったところなど、一言だけでもメモしておくと、次に同じ教案を使う際によりよいものへと変えることができます。
「初心者向け」には、教案は印刷して、そこに書き込むのがおすすめだと書きました。ですが、付箋に書くなり、スマホに書くなり、一番手軽なやり方を採用してください。

論争:教案見ながらの授業はダメ?

教案を作ることには様々な考え方があります。
必要だ、必要ではない、授業中確認するべきだ、全く見ないほうがいい…

それぞれの立場に言い分がありますが、個人的には、

慣れない間は見て、余裕が出たらメモ程度にし、徐々に見ないようにする

というのが現実的だと思います。
私もこの流れに則っています(当時は意識していませんでしたが)。
最初のころは、印刷した教案を見ながら話し、慣れてきたころには、教員の発話きっかけだけを小さな紙にメモし、それをもとに授業しました。最近は、授業で使うスライドに例文を入れてあるので、それがきっかけのようになっているので、何かを確認しながら授業することはなくなりました。
授業の流れも、何度もしていくうちに自然と頭に入ったので、教案を書き起こしません。

教案見ながら反対派の意見として、授業中にまるでカンペを見るように教案にかじりつき、教案にない答えが返ってくると対応できないという声があります。もちろん、そんなこともあるかもしれません。しかし、慣れない新人時代に「覚えるまで練習しないのが悪い、徹底的に練習してから授業しろ」というのは酷です。そんな風に取り組むのが一番いいことは、みんなわかっています。ですが、慣れないうちにそんなことをして、文法の導入さえできないてんやわんやな状況になるより、教案を見ながらでも教えられたほうが、学生と教師のためになるのではないでしょうか。

教案作成で一番大切なこと

「教師のやりやすさ」重視は悪くない

ネットの教案をそのまますることは、悪くないと思います。
私もしていましたし、している先生を見てもひどいとは思いません。むしろ、教案を売るビジネスが成り立っていることからしても、教師は教案作りに苦労していることが伺えます。

既存の教案のいくつかを切り貼りするもよし、
少し自分テイストにするもよし、
一から作り出すもよし、

一番大切なのは、教師が無理をしないことです。

「教師のやりやすさより、学生のわかりやすさを重視する」
ことも大事です。教師は教育する立場だからです。
しかし、そのプレッシャーにのまれて、毎日ただ無心で、楽しくもなく教案を機械的に作るだけならば、ネットの教案を参考にして時間の余裕をもったほうが、精神的にもプラスではないでしょうか。

私は、教師になって1年を過ぎたあたりから自分で作る教案を増やし、いちからか負担なくオリジナル教案を作成できるようになりました。
それは、日本語教師という仕事に慣れてきたことと、授業が楽しいと思えるようになったことがきっかけです。

みなさんの、教案の悩みが少しでも解決できれば幸いです。


こんな投稿者の、波乱の教師1年目の記録はこちら


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