#友崎くん は加速度的に面白くなる最高の青春RPG【アニメ2期完結記念レビュー】

はじめに

「君と青春を照らし合うRPG」な学園ストーリー『弱キャラ友崎くん』がラノベ・アニメ共にとても面白かった話をします。
原作11巻読了済の筆者より、TVアニメ2期まで視聴した人向けです。けどネタバレが気にならない人は初見でもどうぞ!

Tutorial. 友崎くんインビテーション

神ゲーへの道は、他作品から伸びていたりする

僕が『友崎くん』を読み始めたのは先々月の頃、その大きなきっかけは主題歌を担当するDIALOGUE+でした。

花澤香菜さん目当てで観ていた『久保さんは僕を許さない』のEDですね、名曲ラッシュだった2023年の中でもトップレベルに好き。オタクの集まりで発表した年間ベストでは1位で推しました。
そんな超名曲を歌ったDIALOGUE+、プロデューサー&メインコンポーザーは(USGも提供曲も大好きな)田淵智也だしもっと聴いてみるか……と掘っていくうちに、あれよあれよとファンになった昨年からあけまして。

「最新曲めっちゃいいな、タイアップの友崎くんも評判良かった気がするな」
「とりあえずラノベ1巻だけ読んでみるか」
からノンストップで原作最新巻まで読了、放送中のアニメ2期まで駆け抜けた次第です。

Stage 1. 友崎くん学概論

研ぎ澄まされたデザインのRPGでは、どのキャラにも見せ場がある

まずはガガガ文庫より出ている原作小説。
全体的な読み味として、まずは学園ラノベらしい軽快さが嬉しいです。眠気や疲労に襲われがちな通勤電車でもグイグイ読ませてくれる(学生の頃の方が読書に集中できた社会人、多くないです?)
それでいて心理・思考の描写はとてもディープ。心模様をロジカルに分析・思索しまくる長大なモノローグ、長くて理屈っぽいけど全くダレないのも強みですね。

友崎のゲーマー的発想と日南の人生攻略メソッド、みみみたちのポップなアオハルと†聖天使†菊池風香様の発せられる神聖なる空気に導かれるように次々とページをめくるうちに、ガッチリと要素の噛み合ったクライマックスに胸が熱くなる。

その楽しさに魅せられてもう一巻、また一巻と買い進めていくうちに。

「(n-1)巻までの要素がないと成立しないn巻の面白さ」
「n巻は(n-1)巻までの世界観・キャラ観に変化が起きており、よってn巻読了により(n-1)巻までの印象も変化する」
よって(n+1)巻を読めばn巻のさらなる面白さに気づける

という定理が確立していることに気づくのです。そして気づいたら11巻まで読破して「早く12巻をください屋久先生!!!」という心境に陥っています。

….…訂正、無理しないでくださいね屋久先生。いくらでも待ちますから。

こうした「積み上げては移り変わっていく」面白さの根底にあるのは、キャラクター造形と配置の妙だと思うのです。
美少女のいっぱい出てくる学園ラブコメでありつつも、ヒロインとの恋愛成就が最大の軸というわけでもなく。むしろ恋愛面の攻略対象ではない女子キャラの方が多いし、男子陣もしっかりストーリーに噛んでくる。
(そして未アニメ化部分の8巻以降では年上キャラが多く登場してさらに厚みが増してきますが、詳しくは後述)

そうした信条も境遇も異なる多数のキャラクターが、共通の体験を経て影響を及ぼし合っていく様子が、友崎の視点で克明に描写されていきます。
「自分はこう考えている、君はこう考えているんだね」という会話。
「きっとあの人はこう考えている」という推測と「じゃあ自分のすべきことはなんだ」という思索。

コミュニケーションにしても創作にしても基本的な営みではありますが、その深さと広さが圧倒的です。友崎が言語に依存してオーラルが苦手な陰キャ言語化に長けた高校生ということもあり、モノローグでの心理描写は圧巻。

それでいて基本的には友崎視点でのみ描かれるので「推測はできても理解しきれない」もどかしさや無力感が強調されることもあります。この「分かる」「分からない」のバランスも絶妙ですし、だからこそ他キャラ視点の短編が掲載された6.5巻の貴重さも爆上がり。

……といった具合にハマりまくった小説版を経てのTVアニメ版。
こちらもまた素晴らしかった。

グラフィックとボイスが、プレイヤーを主人公へと没入させてくれる

まずこのOPを観ていただきたいんですね、いやアニメ履修者はとっくに脳に焼き付いているかな(目玉ガンギマリ)

これ観ただけで「あ、いいアニメ化だわ」と確信しました。
・無数のアタファミ画面からタイトルに移行するインパクト(この膨大なゲーム経験が友崎のバックボーンなので)
・ヒロインズの個性と可愛さがバッチリ出たカットの数々(みみみが画面からはみ出がちなのわかりて)
・曲の楽しさを完璧に活かした音ハメやリップシンク
・クレジットのオシャレさ
大宮首都化の野望に燃える原作者に忖度した美麗な大宮の街並み

それにサビが短いパートの繰り返しなの「失敗したら『もういっちょ!』頑張るのがゲーム攻略だろ?」という信条をひしひしと感じてとても良いのです。
重めのアニメOPフェチなのでOP飛ばす派の彼女に説教しそうになった筆者としても大満足の90秒でした。

そしてアニメ本編、まずはなんといってもキャラ絵がめちゃくちゃ可愛いのですよ。キャラデザ&総作監の矢野茜さん、『100カノ』アニメで感銘を受けまくった方ですが、今作でも見事すぎる手腕……


声優陣も、イメージ・演技ともに完璧。
というのも『友崎くん』はストーリーの都合上「演技してるキャラの演技」や「喋り方を変える演技」に説得力が必要なんですよね。そうした二段階の演技力、見事に体現されていました。

そして動いて喋ることでキャラへの愛着もグッと増しました。菊池風香様のことは原作から深くお慕い申し上げておりましたが、茅野愛衣さんが声を務められたことで益々聖き存在となられ……
あと声がついて一気に好きになった、というか魅力を分からせられたのが中村です。岡本信彦さんボイス、雄としての色気があまりに濃厚……そりゃ泉ちゃんも惚れちゃうよね……

良ゲーは主題歌の仕掛けも凄かったりする

(なお僕はFF零式でのBUMP『ゼロ』の使われ方をずっと語りたいオタクです)
冒頭でDIALOGUE+きっかけだと書きましたが、やはりOP&EDいずれも素晴らしいのです。同じアーティストなのに毎回違う方向で作品を彩ってくれる君はすごい。

日南&友崎の師弟関係、ゲーマー的努力賛歌を直球で表現した1期OP。
「がんばってないのは君の甘えだ」というパンチラインへの悲鳴が方々で観測されていますが、最初期の友崎を奮起させるにはこれだけの鬼ただ正論パンチ強烈なポジティブさも必要でしたからね。エンジンをかけていくシリーズ序盤に非常にフィット。
ゲームらしいギミックが詞にも曲にもトラックにも満載で楽しいです、これぞ声優ユニットの本領。やはり田淵智也を信じるべし。

一転してアンニュイながらも緩急が激熱な1期ED。このOPとのコントラストが『友崎くん』の多面性を表しているようで好きです。
青春期の自意識の葛藤、迷いと焦燥感をぎゅっと詰め込んで駆け抜ける多重コーラスワーク。メンバーの入り乱れっぷりもキャラクターの群像感に通じますし、ラスサビの怒涛の展開たるや……畳みかけて重ねてからの「自分のことは嫌いにならないで」の響き方、格別です。

そしてこの曲、一部EDでも使われたキャラver.もございます。キャラが歌っているどころか、歌詞もキャラごとにリメイクされている豪華仕様。田淵智也のキャラ解釈力の凄まじさ……

シリーズ履修のきっかけとなった2期OP。1期とはまた違う晴れやかなポジティブさと共に、友崎を取り巻く人間模様を丸ごと描くような包容力が染み渡ります。
2期では友崎・たまちゃん・風香様などを通して、人の輪に入ることと自分らしさを貫くことのバランスが語られていました。それらを踏まえての「向き合って、ちゃんと考えて/もちろん君も連れていくぞ(おいで!)」の尊さたるや……

そして「ランキングなんかどうでもよくない?」「昨日よりもちゃんと前を向けた君はすごい!」と、努力の在り方を主観に寄せていくのも良いのです。1期を経ての友崎のスタンスの変化にもつながる、丁寧なアップデート。やっぱり田淵智也だよなあ……

パスピエのお二人が手掛けた2期ED。ここまで散々「コンポーザー田淵智也が~」と語っておいてですが、これがまた凄まじく推せるのです……「田淵が曲書いてるからDIALOGUE+の曲は良い」という印象の人もいそう(ぶっちゃけ僕も以前はそうだった)なのですが、田淵さんが作詞曲に入っていなくても名曲揃いですからねDIALOGUE+。
(勿論、田淵さんの総合的な舵取りと、メンバー8人のボーカル&パフォーマンスが素晴らしいから……という前提の上で)

『誰かじゃないから』という直球のタイトル、その意味が非常に深く響くのです。日南から「私みたいなリア充になれ」と告げられた友崎からのアンサーと言いますか、あるいは「みんなと違う私でいいのかな?」という悩みを抱く彼らへのエールと言いますか。
温かな感触でありつつも、何度も聴き返すうちに「これ日南さんのコアの話では……?」と原作の後半を想起してしまうような、絶妙な引力の楽曲です。

スタッフインタビューが和やかだと、プレイするのも楽しい

さらに『友崎くん』まわりで好きなの、関係者の盛り上がり方(≒盛り上げ方)だったりします。主に屋久先生が常に前のめりに、SNSで賑やかに暴れまわっている印象。

(……いや暴れすぎでは?)

けどアニメ期間、みみみ愛を語るスペースやったり、最終回は関係者で鑑賞会やったりと、随所で和やかさが伝わってきたんですよね。
ときにメディアミックスは関係者の対立を招いてしまうこともある現状、そうした『友崎くん』まわりのバイブスはすごい心地よかったと思うのです。
屋久先生、これからも無理のない程度に盛り上げを率いていただいて……

あっはい……


……というように!
とにかく楽しさ盛りだくさんな『弱キャラ友崎くん』について、以降はキーキャラ3人にフォーカスして語って参ります。

Stage 2. 日南は師匠? ライバル? しかして学べっ!

工夫と努力でこそ勝てるバランスが良ゲーの証

「人生はクソゲー」と言い切るゲーマー友崎が、学園最強の人気者・日南から「人生の攻略法」を伝授され、自己を変革し人間関係を広めていく……という師弟関係から始まる本作。

正直に言うと僕は性根がDTなのでフィクションにピュアさを求めがちなので、人間関係をテクニカルに攻略する日南(や水沢)の世界観はあまり馴染まないタイプです。
けど本作のテーマは恋愛工学でもモテ理論でもありません、人生もゲームも
「工夫と努力で世界は広がるし」「工夫と努力をバカにするな」という黄金律の話をしています。

原作1巻ラスト(アニメ1期4話)で友崎が「中村のアタファミを笑うな」と啖呵を切るシーン、印象に残っている人も多いのでは。僕はこのシーンで一気にお話への愛着が増しました。

友崎が日南からのミッションに挑み、仲間と出会い成長していく……というサイクルはギャルゲーの合法化だしRPG的な楽しさでいっぱいです。真っ向からリア充メソッドを叩き込まれるとオタクはルサンチマンで狂って受け止めづらい人も多そうですが、要所要所でゲームに例えてくれるのでラノベ読者層にもフィット(こいつラノベ読者をなんだと思ってんだ)

しかし、教わるだけじゃ終わらないのが主人公。

師匠兼ライバルなキャラとの対決には熱が入りまくる

友崎は日南から人生の攻略術を教わり、リア充・陽キャとされる少年少女との交流を深めつつも、そうした価値観に完全に染まりはしません。
ときに日南の主張を疑い、あるときは強く反発しつつも「日南からもらった武器で、俺は何をしよう?」と自らに問い続けては答えを深めていきます。

生徒会選挙では「日南のライバル」という共通点からみみみと手を組んで日南と対決。
夏休みでは、菊池さんという彼女候補への姿勢を巡って日南と対立。
エリカVSたまちゃん事件では、日南と違うゴールに向けて別行動。

どのケースでも友崎は日南と違う道を選んでおり、しかし常に日南からの影響をベースに行動しています。
あとアタファミだと常に戦っててほとんど友崎が勝ってる(原作11巻の話は後述)という逆転構造。

この、守破離のバランスといいますか、距離感と温度感の変遷といいますか、師弟でありライバルであり友情でもある無二の関係性がね……巻を重ねるごとにグツグツと面白くなってくるのです……
(原作後半ではさらなる波乱が待ち受けているのですが、こちらは後述)

こうした日南との絆の意味を友崎に教えてくれる、そして自身もその絆に魅せられている大事なキャラクターといえば。

そう、菊池風香様です。

Stage 3. 菊池風香に1000万回ラブなんだ

やっぱり、好みの美少女キャラはパーティーから外したくない

筆者は「友崎くんで誰が好き?」と問われたら迷わず「菊池風香様です」と答えます。
小説では(友崎視点での)清廉な存在感と、美しさの意識された言葉遣い、鋭い観察眼に惹かれまして……後はやっぱりフライ先生の描かれた可憐さと神秘性を両立された奇跡的なお姿にはあらゆる理屈を越えて魅了されたのですね。

故に「おい友崎!!風香様と絆を深めた責任取るんだろうなゴラァ!!」というヤクザめいた心境で文化祭編を読んでおり、万感の想いでカップル成就を見届けたのですが。

声が茅野愛衣さんなんですよ……めんま(あの花)や楪いのり(ギルクラ)、めぐねえ(がっこうぐらし!)で散々僕の情緒を支配してきたかやのん先生なんですよ……しかもめっちゃ合ってる……

めっちゃ!!!合ってる!!!!なんたる神の如き人選と演技!!!!!!奇跡的透明感フェスティバル!!!!!!!!!!

これはつまり、とどのつまり、菊池風香おにただ原理主義者と化してしまったのです。ほんとに幸せなアニメ体験でした。

守りたくなる美少女キャラは、パーティー最強の魔法アタッカーだったりする

いますよねそういう子、レム(FF零式)とか雪子(ペルソナ4)とかリシテア(FE風花雪月)とか。

風香様の本領、まずは人間への鋭い観察眼。その感性は日南との向き合い方に悩める友崎を救い、たまちゃん救援ミッションでも大きなヒントにつながっていました。
そして、観察した事象を創作へと翻訳する技術。「キャラの心理が反映された作中作」が大好物(なので自作小説でもガンガンやってる)なオタクとしては、文化祭編の作劇過程は最高に面白かったです。

このように風香様は、『友崎くん』の魅力である心理表現・キャラ描写を随所で支えているのです。彼女の存在によって、キャラの多面性・多層性の厚みがぐっと増している。

そして人の観察に長けるあまり「世界にとっての理想」を優先して自分の感情を抑圧してしまうそして友崎×日南関係性の強火オタクと化すという苦しみも味わっていました。その痛みは友崎によって救われた……というのがアニメ2期ラスト。

めでたしめでたし……とは、なりません。

小説家・菊池風香の真髄はこれからです。
その業の深さは、「人の心を創作へ取り込む」危うさは、まだ片鱗しか見せていません。

清楚なだけでも可憐なだけでもない、けどだからこそめちゃくちゃ面白いのが、アニメ2期以降の風香様です。
風香様が友崎の彼女になった意味すら、これからじわじわと効いていきます。詳しくは後述。

Stage 4. みみみは絶対絶好スーパーガール!!

最初の村から冒険してきた相棒は、ラスダンでも隣にいてほしい

ここまで女子キャラをRPG的に例えてきたんですが、じゃあ七海みなみはどうなるんだろう……と思ったら。
「ヒロイン」も間違いじゃないしヒロイン性はバッチリなんだけど、それ以上に「相棒」だと僕は思うのです。最初にパーティーに入ってくれる人と言いますか。
というのも、この物語で「友崎と隣り合って、お互い支え合って」一緒に歩んできたキャラとして思い浮かぶの、日南でも風香様でもなくみみみなんですよ僕の場合。



それにみみみ、友崎がピンチのたびに優しさと強さで救いに来てくれるヒーローなので……そう、たまちゃんの言う通りヒーローなんですよみみみは。
友崎の彼女として相応しくないとかではなく、女として魅力がないとかではもっとなく、みみみにはもっと似合う輝かしいポジションがある……と僕は信じています。


というか、みみみが友崎と付き合うルートだったらこんなに愛されてないと思うんですよ。不遇で不憫だからこその輝きと言いますか、それが自分の得にならないと知っても友崎と風香様の仲を応援できる度量といいますか……はぁみみみ……胸がくるし……

人間っておかしくなりそうなときに自分よりおかしくなってる人を見ると落ち着くんですよね

ゲームのやりがいが勝ち負けや報酬だけじゃつまらない

そしてヒロインレースとは別の次元で、みみみの存在は『友崎くん』にとって超重要だと思うのです。
というのもこの物語、日南から友崎への人生攻略コーチングから始まり、徐々に友崎が日南ビジョンからの独立を進めていく……という構造にもなっています。

全てにおいて一番を獲る日南と、ずっと二番手のみみみ。
リア充になるために彼女を作れと指導する日南と、友達を想って恋から身を引いたみみみ。
そのみみみが、こんなにも愛されていること。

勝ち負けやカップル成立という結果が全てなのか、感情や心は無意味なのか……という、たびたび問われるテーマに対して。
みみみの存在は、強い証左となるのではと思うのです。

あるいは希望ですね。
負けてしまった誰かが、選ばれなかった誰かが、
「それでも頑張って良かったよね」
と誇れるために。みみみは今日も青空のような笑顔を振りまくのです。

いや振りまこうとか思わなくていいから、とにかく僕らは君に笑ってほしいんだ、わかるかいみみみ。


※以降、アニメ2期ラスト以降(原作8巻以降)の内容を含みます。
あくまで未読者向けの予告として書いていますが、気になる方はご注意を。


Next Stage. ラノベ続刊をよろしく

友崎の恋愛という大きなテーマが決着したアニメ2期ラスト(原作7巻)。

しかし物語は、ここからさらに大きな波乱へと、よりディープな心理模様へと進んでいきます。

・高校生たちの進路
まず大きなテーマはこれですね。高3が近くなり、みんな進路について考え始めます。
友崎はというと、ゲームを仕事にするビジョンを描き出し、プロゲーマーやストリーマーと交流を持ち始めます。アタファミ描写も本格化、そして深まったゲーム描写が友崎&日南の心理を深掘りしていきます。

「ゲーマー的発想で人生を攻略する」から出発した本作が、腰を据えて「ゲーマーの生き方」に踏み込んでいく構造の綺麗さ。
そして「将来の俺、何して生きていく?」という問いにしっかり向き合ってくれるのも嬉しいです。やっぱり高校生ですからね。

そして風香様は小説家という生き方の模索を始めます。

・絆と業のジレンマ
波乱を経てカップルとして歩き出した友崎と風香様。その尊い初々しさは随所で我々を幸福で包んでくれます。
そう、初々しさ。
リア充属性も獲得してきたとはいえ友崎にとって「彼女」は初めてだらけの存在です。カップルらしいイベントは新鮮さでいっぱいですし、風香様も新たな魅力を人民へとお見せになってくださいます。
(そしてみみみは風香様ルートでもめきめき株を上げていきます、すげえ女だよほんと)

とはいえ、やはり恋愛ビギナー。
友崎は鈍感(というか「愛される彼氏」という自意識が希薄)だし、風香様も優しさの余り上手く気持ちを伝えられず……日南師匠もなんかおかしいし、新たな泥棒猫女子キャラが介入してくるしで、すれ違いまくってます。非常に胃が痛い。

そしてこの二人、魅かれ合ったお互いらしさ故に、付き合い方に悩むのです。
孤高のゲーマー・友崎文也も、心を取り込む小説家・菊池風香も、どうにも「業」が深い。

屋久先生が友崎の恋人として風香様を選んだ理由、友崎の視点で彼女の業を描くためでは……と思ってしまうくらい、キャラ描写は危険な深淵へと突き進んでいきます。

そうした彼女の危うさを知った上で改めて断言します。

菊池風香は、最高のキャラクターだと。

・これは日南葵という魔王を救う物語

2期では幾度となく、日南の本心に迫るようなシーンがありました。
風香様が日南の虚無性を推察していたり、日南の家庭事情の複雑さが示唆されたり、昔の日南は普通だったよね~と語られていたり。イジメ加害者であるエリカへの強烈な憎悪も、引っかかった人は多いのでは。

そして、そもそもの前提すぎるのですが。
そもそも日南葵、どうしてこんなに友崎文也を熱心に指導しているんでしょうね?

9巻後半から11巻にかけて、こうした問への答えが明かされていきます。
そのとき、友崎と日南の関係のみならず、日南と学校の仲間たちの関係にも大きな変化が生じます。

というか、崩壊していきます。日南を囲んでいた温かな人の輪が、愛しいキャラたちの笑顔あふれる日々が、嘘のように崩れていきます。これまでの積み重ねなんて無意味だったのかと打ちひしがれるような、友崎たちにとっても読者にとっても辛く苦しい時間がやってきます。

それでも、希望は消えていません。

11巻を読み終えた筆者は確信しています、ここからの『友崎くん』はとてつもなく面白いと。
この寂しさもやるせなさも全て、来るべき熱いストーリーへの布石なのだと。
長編小説という媒体それ自体の地平を切り開くような読書体験が待っているのだと。

屋久先生の仕掛ける魔法、一緒に確かめにいきませんか。


以上、長々とお読みくださりありがとうございました。
つまり原作買ってね!!!※このnoteはガガガ文庫様からのプロモーションを含んでいません。

あとヨルクラ絶対に観ようねみんな!!

最後に筆者のオススメ記事を置いておきます。





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