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ゴルフ場と都営住宅は『美しい景観』じゃなかったのかな?

社会派じゃないはずなんですけどぉ…。

前回までのまとめ

新宿三丁目で開催されている『わんだふるぷりきゅあ!』のポップアップショップを見に行こう、とささづかまとめに提案したたかやまさん。しかし集合場所はなぜか明治神宮外苑。思うところがあるイチョウ並木を眺めつつ、わたしたちは歩き始めました。

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本文です

イチョウ並木を歩いて、噴水の前の信号を左に曲がって道なりに進むと、神宮球場のバックスクリーンの後ろに出る。

たかやまさん
「野球やってないときに来る野球場って寂しいな」

ささづかまとめ
「閑散としてますからね。グッズショップ行きますか?」

たかやまさん
「私はいい、先月来たから。明治公園のほうに行こう」

ささづかまとめ
「敷地通っていきましょうか」

たかやまさん
「うん。クラブハウスは…だれもいないか。今日福岡だしね」

スワローズのクラブハウスは入口だけならなんとなく眺めることができる。警備員が立っているだけだった。

ささづかまとめ
「スワローズ、オープン戦の調子良さそうですよね」

たかやまさん
「最近ね、オープン戦って負けたほうがいいのかなって思い始めてるんだ」

ささづかまとめ
「そうなんですか?」

たかやまさん
「とりあえず、連覇したときはどっちの年もすごく負けてたよ」

ささづかまとめ
「そうでしたっけ?」

たかやまさん
「うん。野球ってつくづく変なスポーツだよね。勝負も時には負けたほうがいいって言ってるみたい。私は全部勝ちたいのに」

寒空を見上げながらたかやまさんが言った。


Uターンしてレフトスタンドのほうからまわっていく。工事現場でよく見るフェンスが右側をずっと覆っている。この向こうはゴルフ練習場を兼ねた第二球場があったはずだ。

たかやまさん
「野球のない日はこのへんゴルフしにきた人の駐車場になってたね」

ささづかまとめ
「あーそうでしたね、高級そうな乗用車がたくさん停まってました」

神宮球場の外周のスペースに止まっている車が動き出すときに、駐車場を整理している警備員の人に「もっと球場寄りを歩いて」と注意されたことがある。

たかやまさん
「そもそも野球場を打ちっぱなしの練習場にしようって発想はどこから来たんだろう」

第二球場は本来は1塁側の観客席があるはずのところに2階建ての打ちっぱなしの打つところ(打席というのかスタンドというのか)が設置されていた。

ささづかまとめ
「昔って都心にもけっこうたくさん打ちっぱなしの練習場があったと思うんですよね。再開発されてるところで元々ゴルフ練習場でしたってところ、いくつか知ってます」

たかやまさん
「それでも供給が十分じゃなかったんだね。ゴルフ人気だったんだ」

たかやまさん
「第二球場の跡は完全に封鎖されてる」

ささづかまとめ
「構造物が全然見えないですね」

国立競技場と第二球場の間の道路から第二球場のほうを眺めるが、フェンスが張り巡らされている。

たかやまさん
「きっともう全部取り壊されてるんだよ。後で上から見てみよう」

ささづかまとめ
「上から?」

たかやまさん
「うん。明治公園通って国立競技場の上から見よう

国立競技場の上のほうに上れるというのは聞いたことがあるけれど、そんなに自由に立ち入れるのだろうか。

たかやまさん
「普通に入れるから大丈夫だよ」

なにも言っていないが、わたしの心の中を読んだかのようにたかやまさんが補足した。


ひときわ新しい明治公園に入る。空いているが、近くの保育園から子どもたちがお散歩に来ていて、遊具のある空間だけが賑わっている。

たかやまさん
「この公園の敷地は、数年前まで都営住宅が建ってた」

ささづかまとめ
「わたしはちょっと覚えてないですね…」

たかやまさん
「明治公園って本当はあのPS5みたいなJOCのビルのところと、昔の国立競技場の南側にあったんだけど、そこをそれぞれに譲って、代わりに都営住宅をつぶした跡に改めて開園した感じだね」

たかやまさんは学生時代から神宮球場に入り浸っていたので、神宮球場周辺についてはさすがに詳しい。

ささづかまとめ
「だからなんかすごく新しいんですね」

たかやまさん
「うん。去年開園したばっかり。でもさ、イチョウ並木うんぬんよりこっちのほうがダイナミックだと思わない? あっちに人は住んでないけど、こっちは人が住んでるのを移動させてるんだよ?」

ささづかまとめ
「ここに住んでた人の中には引っ越したくない人もいたでしょうね。都心なのに静かでよさそうなところですし。駅もほどほどに近くて便利ですし」

たかやまさん
「ね。まあ私は公園ができたほうがうれしいけど。そういえばこの前いちがやさんとサッカー見たとき、この公園にスタグルの屋台出てて食べたよ」

ささづかまとめ
スーパーカップのときですね。全国のスタジアムグルメが集まるやつ」

たかやまさん
「うん。シュラスコからあげ、おいしかったな」

ささづかまとめ
「またお肉ばっかり」

たかやまさん
「あとね、軟式グラウンドのほうの屋台でカレー芋煮も食べた」

ささづかまとめ
「それはまただいぶ食べましたね…」

たかやまさん
「いちがやさんはキーマカレーののった焼きそば食べてた。あれどこのごはんだったんだろう」

ささづかまとめ
「うわー、それおいしそう」

本当においしそうである。今度家で作ってみよう。

たかやまさん
「さーさちゃんも来られればよかったのにね。サッカー関係なさそうな人もたくさん来てたよ、ごはん食べに」

ささづかまとめ
「微妙に花粉シーズンに入ってたのでわたしはいいんですよ」

たかやまさん
「……はあ、なんかごはんの話してたらお腹すいてきた。朝のおやつ食べよ」

腕時計を見ると10時40分。たかやまさんは小さなポシェットから堅あげポテトの小さなパッケージを取り出した。その少女趣味なライラック色のポシェットからまともなものが出てきたのを見たことがない。

たかやまさん
「食べる?」

ささづかまとめ
「じゃあ1枚だけ…あーん」

たかやまさんがわたしの口に雑に放り込んだポテトチップスをがりがりと咀嚼する。本当に硬いので口の中を傷つけないように気をつけないといけない。

たかやまさん
「そこの階段上ったら国立競技場。行こう」

波打った塩辛い破片に唾液を含ませて細かく噛み砕きながら、わたしは無言でうなずいた。


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