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一番星が考える正しい冷凍まぐろの楽しみ方:解凍編

10年以上セリ人として冷凍まぐろに携わって来てたどり着いた答え

それは冷凍マグロの味を構成する3要素は

素材40%

解凍方法30%

食べ方30%

であり、冷凍まぐろの極意は解凍にあり

解凍をおろそかにする者、素材を語るべからず。

今日は冷凍まぐろの解凍の話をしたい。

ここで注目したいのは、マグロ業界の人間(生産者や卸業者)、鮨屋の大将、飲食店やスーパーのバイヤーなどがさんざん拘って議論している素材は40%の部分であるということ。つまり解凍を間違うと同じ素材を使っても30%も低い満足感しか食べる人に味わってもらえないということなのだ。

では皆さんが今までに食べた美味しくないまぐろとはどのようなまぐろだっただろうか?

おそらく水っぽいと感じたまぐろではなかっただろうか。

マグロ業界に入って先輩方から口酸っぱく言われたこと、まぐろの敵は真水。絶対にまぐろの身に真水を着けてはならない。

なぜかというと、まぐろの細胞は浸透圧の影響で真水に着けると旨味成分が外に出てしまい、逆に細胞内に真水が侵入する。つまり細胞内に水が残っているから水っぽいのである。

それゆえ築地市場や豊洲市場のマグロ卸売場では、蛇口を捻れば塩水がでるようになっている。まぐろを解凍する時は塩水で解凍するのが我々の常識であり、それが前提で素材が良いだ悪いだの議論をしている。

では、皆さんがまぐろを買っている売り場ではどうだろうか?

私がこれまで商談などをしていて感じたのは、ほとんどの売り場では真水もしくは自然解凍のような解凍方法が行われている。

台無しである。

なぜだろう?

その方が楽だからである。

お客様の満足度はどこへ行ってしまったの?

もっと素材を、生命を大切にしてもらいたい。我々は生命を犠牲にして生きているのだからそれを素材の良さを最大限に引き出すのは使命ではないだろうか。

解凍の話の前に冷凍の話をしたい。冷凍まぐろと言っても皆さんがイメージする冷凍食品とは一線を画す。まず温度帯が超低温と言われる-60℃。1960年ごろから日本の延縄漁船に冷凍機を積み漁に出るようになった。それから技術が目まぐるしく進化し20年後の1980年代にはすでに完成形になったと言われる。長さ100km(東京から富士山)以上の縄に餌の付いた針を付け海に流す。それから一気に船上に引き上げ、活きた状態で取り上げ、血抜きと神経抜き、エラ腸抜きをして急速冷凍庫で2昼夜。一気に中心温度を-60℃まで冷やし込むが、冷やし込みにも船の機関士の高い技術が必要。ここにも大荒波に揉まれながら、高鮮度で生産することに命を懸けている人たち(日本の漁師)がいるのである。

その命がけの仕事に我々も応えたい。

ではどのような解凍が望ましいのであろうか。

答えはシンプル。とにかく細胞内の水を抜いてあげること。

素材の質により程度はあるが、どんなまぐろでも細胞内に水分を含む。

それを塩水につけて水を抜きながら解凍するのである。

正しい方法で解凍された冷凍まぐろは、しばしば生まぐろを凌駕する。まぐろの味は漁場の水温に左右される。低水温の漁場で獲られたまぐろは身が締まる。冷凍まぐろ船は旬を追いかけて低水温の漁場で漁業を行うことが多い。一方、生まぐろは水温に関係なく1年中、水揚げされているため、水温の高い時期に漁獲されたまぐろは水っぽい。ヘタな生まぐろよりも時期に漁獲された冷凍まぐろの方が身が締まっている。上手に解凍すればもっちりネットリ仕上がるので実に美味しい。

ここで前提として知っておきたい知識がある。

マグロ業界の専門用語で”チヂミ””ベタ”という概念がある。

ちょっとした鮮度感の違いである。

何かというと、皆さんが口にする冷凍天然まぐろのほとんどが冷凍延縄船という非常に高い技術(日本の漁業技術の結晶)により超高鮮度でまぐろを取り上げ、急速冷凍する船で取り上げされているのだが、取り上げられてから冷凍されるまでの時間に若干の差が生じ、肉が変質するのである。

チヂミは早く冷凍されたもので死後硬直しており肉が硬い。

ベタは少し時間が立っている分、硬直が落ち着いていて身が柔らかい。

鮮度が良い分だけチヂミは色が鮮やかである。

マグロ業界ではチヂミの方が色持ちが良く圧倒的に人気が高く値段も高い。

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上の写真がチヂミで下がベタ。

これは検品のため敢えて真水で解凍している。その方が違いが分かりやすいからである。ご覧になって違いがお分かりいただけるであろうか。チヂミは中心付近が縮れ上がっていかにも硬そうな雰囲気。ベタの方は355と書かれた紙の左側が白っぽくなっている。これが細胞内に水分が侵入した状態。

肉質の違いにより、チヂミよりベタの方が真水の影響を受けやすい。ただ旨味成分が抜けてしまうのはどちらも同じことである。

そして気を付けないといけないのは、必ずしも

鮮度が良い≠美味しい

ということ。

ベタの方が冷凍されるまで時間が経っている分、たんぱく質が旨味成分であるイノシン酸に変化していて、解凍直後は味が濃い。

でもチヂミの方が人気が高いんでしょ?

そうなんです。ただそれはスーパーマーケットなどのバイヤーが好きなだけ。売り場では皆さんが買い物カゴに入れるまでが勝負。色が鮮やかな方を買いますよね?

でもベタのまぐろも上手に解凍すれば、色も良くなるのである。

↓塩水でしっかり脱水解凍したベタの一例

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では長くなったが、正しい解凍方法を見ていこう。

https://note.com/embed/notes/n171c0a719e62


ポイント1:解凍開始時間と塩水の浸け時間。

チヂミはまだ身が若いので時間をかけて解凍しながら半熟成をかける必要があり、時間の経過とともに身が落ち着て味も出てくる。ベタの方は、すでに味が出きっているので塩水中で完全に脱水し一気に解かしてすぐに食べた方が美味しい。例えるなら、青いバナナ黒い点々の付いたバナナの違いのようなもの。

ポイント2:塩水濃度と温度

ほとんどの通販サイトなどで書かれている一般的な解凍方法では塩水濃度3~4%と書かれています。1年約290営業日×10年、毎日まぐろサンプルを解凍した(それだけでも合計5万枚以上になる笑)私の経験上、薄い。脱水するためには5%必要であると結論付けた。もう一つは温度。一般的には40度くらいの温塩水と書かれているが、おそらく根拠のない数字。季節によって水温は変化する。夏と冬では全く環境が違うので、そのブレをなくすため簡単に出来るようにと考えた方法なのだと推測される。しかしこれは美味しく食べるためのベストではない。-60℃で保管されてきた冷凍まぐろが40℃の水にさらされるなんて。。。その差100℃。ヤケドしますよ。できるだけ低い温度で解凍したいところだが、そこまで追求するのは一般消費者には酷であるし手も冷たいので、ここは水道水の常温で構わないだろう。


でも冷凍された状態でチヂミとベタの違いが判らない?

確かにそうですよね。

安心して買える通販サイトを見つけることが非常に大切なのである。

今後、一番星の方でも安心して買えるネットショップを整えていきたいと考えているので、乞うご期待。

以上のことから私が皆さんに伝えたかった事は

チヂミもベタもそれぞれに適した解凍方法をすれば、どちらも美味しいこと。

美味しくまぐろを食べるのにいかに解凍が重要であるかということ。











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