【レビュー】『ひと』
ほとんど本を読んでこなかった人間がポツポツ読書を始めました。
そんな人間によるレビューです。カナリ個人的で的外れな内容もあるかと思いますので、その点ははじめにお断りしておきたいと思います…。
『ひと』
小野寺史宣 著 祥伝社 2018.4.11
●この本について
・本屋大賞2位
・重版続々
●レビュー
★★★★★(星5つ)
読み終わった直後に発した言葉は…
「ここで終わり!?」
やられた…
絶対続編 書くやつやん!
絶対続編 買っちゃうやつやん!
作者の術中にハマった感、満載。
でも不快なわけでは決してない。
おでこに手を当て、空を仰ぎ見、笑顔で
「やられたぁ〜〜」
と言ってしまう、あの感覚だ。
私が良い本の条件の一つとして挙げている、読後感の良さ。それがピカイチだ!
高級ホテルのスイートルームを担当する清掃員が掃除した後かのようなピカピカ具合だ。曇りがないどころか、もはやそのモノから光が発せられているのではないかと見紛うほどの輝き具合だ。
しかし、光っていたのは終わり方だけではなかった。
初めの設定である主人公の境遇が辛くて痛くて…途中ちょっと読む手が止まりそうだったが、そんな暗いドン底の主人公に徐々に差し込み始める幾筋かの光…。
主人公や登場するキャラクター達の細かい描写によってそのシーンがありありと想像でき、温かい人間関係と心の動きをよく追体験できたと思う。
いつもはついミステリーを手に取ってしまい、読後は事件解決の爽快感を味わっていたが、こういう温かく希望に満ちた読後感もあるんだよな、と改めて気付かされた。
前回読んだ『medium』に引き続き、素晴らしい当たり本だった。
今後はしばらくは不発本に当たっても仕方がないなと思えるほどの当たりだった。
続編、早く読みたい…。
今、私史上最高に、エベレストも顔負けやな!と言ってしまいたいほど程に積まれてしまった積読本を、せめて1/3は消費しなくちゃ次を読んではいけない気がする状況なのだが…それでも次を読みたいと思わせる本だった。
この作品では文学賞は取っていないようで、見る人によっては本屋大賞の2位を獲得しただけと言われてしまうかもしれないのだが…
私はそこまで本に精通しているわけでもないし、こんなことを言えた立場ではないが、解釈は人それぞれでいいと思っているので、私は自信を持ってこの作品を★5つとしたい。
発売されてしばらく経ってからの読書になってしまったのだが、今この時期にこの本に出会ったことは運命だった気がしてならない。
主人公ほどの暗い辛い境遇にはないが、私も人間関係や仕事、金銭面で辛いと感じていた。そんな中、コロナ禍で拍車が掛かったように希薄となっていた人間の温かみをこの作品で思い出させてもらった。
★5つです!!
●真似したい点
・全体の構成
・描写
・キャラクター
・地の文と会話のバランス
・セリフにも散りばめられたキャラクターの個性
・読後感
●う〜んな点
・主人公の辛さが辛すぎる
→温かさを出すには仕方がない部分とも分かっているのだけど…
●最後に
オーディオブックのホーム画面で、『この本も聴き放題に追加されました』と書いてあり、そこからジャンプして読んだ。
発売当初から本屋で表紙は見ていた。
その本屋では一推しだったのか、相当数が平積みされ、エンドはその本ほぼ一色になっていた。
だから気になってはいた。
本屋を覗くたびに気になっていた。
こういうのも巡り合わせなのだろうなと思った。
そしてタイトル。
短過ぎてそれから内容を想像することは不可能だったが、読んだら納得。それ以上はないと思うくらいならピッタリ。
物語の長さは長すぎず短過ぎず。適度。
キャラクターや全体の構図については、私の理想!というべきものだった。
こういう話を私も書いてみたい。2冊買って、1冊は書き込んで勉強したいくらいだ。