祖父母が同時に認知症になった
この世界のどこかにいる、1人の女性の話。
そして24歳の私の、おばあちゃんの話。
愛情深くてお世話好きでちょっとせっかち
これがおばあちゃん。一言で言うのがもったいないからちょっと詳しく。
物心ついた頃からおばあちゃんに怒られた思い出はない。小さくて、可愛くて、優しくて、いい匂いがして、口紅を端から端まできちっと引いてるような人。祖父母宅からの帰り道は、車の後ろにおばあちゃんからの山盛りのお土産が詰め込まれる。で、角を曲がるまで手を振ってくれる。いわゆる田舎のおばあちゃん、という風貌じゃなくて、都会のおばあちゃん、という感じ。一緒に住んでるわけじゃなかったから、小さい頃は月一回くらい会えるのがすごく楽しみだった。
和室の豆電球がオレンジになったとき、おばあちゃんは1000回目くらいの桃太郎の話をしてくれる。
どんぶらこ〜〜どんぶらこ ……
最初桃が流れてきた時におばあちゃんは寝てしまう。
続きを催促すると、布団をかけなおし、トントンしながらまた話を続けてくれる。
おばあちゃんの話は桃太郎以外覚えてない。浦島太郎も話してくれたっけ。どんぶらこ〜〜が子守唄みたいで心地よかった。たまに仲間に他の動物も加えてくれた。
おばあちゃんとスーパーに行くと、
「お肉あるえ?」
ってお肉屋さんに連れて行ってくれる。みんなでワイワイするのが好きだから、焼肉とか鍋率高め。家にいたら買ってもらえないポケモンシールもいっぱい集めたし(そのおかげで転校先でいじめられなかった)、可愛いパジャマや、おもちゃ付きのお菓子をたくさん買ってもらった。スーパーに行くと出会うおばあちゃんの知り合い1人1人に、
「孫なんです〜」
と、
うれしそうに紹介してもらえるのがなんか誇らしかった。
書いてて思い出したが、私が浪人して2年目の受験の時、おばあちゃんの家から受験会場へ向かう日があった。おばあちゃんが作った出し巻き玉子が美味しくて、また作って!!と言ったことがあったのだけれど、その受験当日持たせてくれたお弁当には、玉子6個くらい使ってそうな大量の出し巻きが詰め込んであった。
「緊張して食べきれなかった〜〜」
って言ったけどシンプルに多すぎた。でもそんなとこも愛に溢れていて嬉しかったし、受験前には最高のクスッと丁度いいスパイスだった。
こんなに大好きで、思い出もいっぱいあるのに、私はおばあちゃんにあまり会いに行けていない。
続く
#認知症 #家族 #note始めました #エッセイ #スキしてみて #日記
ちなみに、7月3日朝、Twitterでのニュース
認知症の行方不明者が過去最多の17479人になったらしい。本人も、家族のことも責めて欲しくない。みんな頑張ってる。
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