素直とは

素直だとか純粋だとかピュアだと言われる人がいます。
素直で純粋でピュアである事、それはとても良い事だと僕自身は思っています。
しかしこの手の言葉は人によって解釈が違うように最近感じています。
というのも、素直な人が従順な人と混同されていないか?と思うのです。

辞書を見ると「素直」というのは飾り気がなくありのままの姿であるというような意味や腹黒さなどがなく穏やかであるという意味だと記載されています。
僕の個人的な感覚で言うのならば、どちらかと言うと前者の意味合いが「素直」の本来の意味なのかなあと思います。

「素直」と「従順」が混同される理由としては、素直に相手の言う事を信じたり受け入れる人に対して「素直な良い子だね」というようなニュアンスの言葉をかける事に由来するように思います。
世の中にはズルい人や騙そうとする人や支配しようとする人というのがいます。
そういう人たちの言う素直とは相手が自分の思う通りに行動する事でしかないのです。
そして形式上は相手に善を促す形で自分の言いなりにさせるのではないでしょうか。

この例が最もよく起こるのは親子関係においてではないでしょうか。
親が子供に対してこうなって欲しいと希望や理想を持ち、その主張を子供に押し付けるという事はありがちな話ではないでしょうか。
そしてそうやって都合よく言いなりになってくれる子供を「素直だ」とおだてて持て囃す。
それはハッキリ言って卑怯で汚い事だと僕は思います。

もちろん親が子供に優しい子に育ってほしいとか強い子に育って欲しいという気持ち自体は僕にも分かります。
しかしそれは子供が親に対して優しさや強さを感じられたからこそできるものです。
自分都合の「こうしてあげた」というような押し付けがましい愛情の見返りに子供として「こうして欲しい」「ああして欲しい」と一見正当性のあるような言葉で言いなりにさせるという事が当たり前になっているのはいかがなものかと思います。

ではもし仮に子供に対して本当の意味で素直でいて欲しいと思った場合はどうしたら良いでしょうか。
(素直になって欲しいと思う事自体が悪ではないという事は強調しておきたいです)
まず真っ先に言える事は「素直になりなさい」と言う言葉は決して素直さを生まないという事です。
「素直になりなさい」という命令口調によって生まれるのは、素直さの演出であり親の顔色をうかがう事に繋がります。
少なくとも子供においては、なろうとして素直になるのではなく、素直になる条件が揃うと自然と素直になるものです。

感情や意思を尊重されていれば、人は自然に素直になるのではないでしょうか。
よって素直な気持ちを出せる子に育って欲しいのであれば、自己主張を抑圧せずにしっかり聞く事、そして一緒に考える事、つまりコミュニケーションを取る事に帰結するのではないでしょうか。
自分の感情や意思を相手に伝える事で相手が理解しようとしてくれる、一緒に考えてくれる、このような土台が子供の素直な自主性を育てる土台になるのではないかと思います。

しかし幼少期における親とのコミュニケーションで培われた経験というものはなかなか抜けないものです。
大人になってからも従順という素直の演出をし続ける事によって無理な要求を断れなくなったりしてしまう人はとても多いです。
従順でい続ければい続けるほどに本心との乖離が進みます。
文句や不満を垂れ流す事は良い事ではないかもしれませんが、このように文句や不満すらも言えない従順な生き方で本心とは逆向きに進み続けて心が破裂してしまうくらいなら、文句や不満を言う方がまだ救いがあるとすら思います。

彼らが本当の意味での素直を取り戻すにはどうしたら良いのかずっと考えていますが、未だに答えが出てきません。
皮肉な事にうつ病や適応障害などになって明らかに日常に支障が出て何もできなくなるくらいの経験がないと彼らが生き方を改めるチャンスというのは訪れないように思います。
強い抑圧状態にある人たちはきっと僕が想像している以上に本心を出す事に対する強い恐怖心があるんだと思います。

できる事なら適応障害やうつ病にはなって欲しくないし苦しんで欲しくはないが、何らかのキッカケで本人がその従順な生き方を変えない限りは確実に心を完全に病むまで無理をし続ける未来が想像できてしまうので心がとても痛いです。
彼らもきっともっと自分の気持ちを尊重されて生きて来れていれば、人に素直に気持ちを伝えられるような本当の意味で愛される人になっていたのでしょう。

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