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Activism/M&A Weekly Roundup (2023年9月18日週)


アクティビズム

日産車体、スタンダード市場への移行を発表(9月22日)

エフィッシモの書類提出拒否により、プライム上場維持基準に抵触したことが波紋を呼んだ同社。
結局その後もエフィッシモの協力は得られず、スタンダード移行を選択したようだ。

移行後も流通株式比率でスタンダードの上場維持基準には抵触。
一部株主への売出しの働きかけや自己株式消却での対応を考えているようだ。

プライム市場上場維持基準への適合に向けた計画の変更、 スタンダード市場上場の選択申請の決定及びスタンダート市場上場維持基準への適合に向けた計画

本件については下記noteもご参照。


東洋建設、YFOからの非公開化提案の検討・意思決定過程等に関する調査の開始を発表(9月20日)

6月の定時総会でのYFOの勝利により、取締役会の体制が刷新された同社。
YFOは、自らの提案に対し前体制が「不公正・不適切な対応」を続けたとして調査を求めていた。

新体制となった東洋建は、YFOの提案のみならず、その発端となったインフロニアHDによるTOBへの賛同表明や22年6月総会に上程も取下げとなった有事導入型買収防衛策の検討過程を、2名の外部弁護士に委託して調査する。
YFOはこれを受け、かかる調査を議題とする臨時総会の招集許可申立を取下げ。

調査結果は開示予定とのこと。
YFOへの対応をめぐる東洋建の内部での議論がどこまで明らかにされるのか、その内容が注目される。

当社株主との合意に基づく調査の開始及び 株主による臨時株主総会の招集許可申立ての取下げ(予定)に関するお知らせ


ダルトン系のNAVF、インテージHD株式の一部を売却(9月20日)

昨日提出の変更報告書で保有割合の減少(11.28%→9.52%)を報告。
ドコモが同社へのTOBを実施中だが、市場内外で売却を進めている模様だ。

同社はTOB後も上場を維持するが、支配株主がいては勝算なしとみて早期回収を図る方針か。

変更報告書(2023年9月20日)


J-STAR、焼津水産化学へのTOB期間の延長を公表/3Dインベストメントが焼津の大量保有報告書を提出(9月19日)

言わずもがなの展開というべきか。
ナナホシが異議を唱え、旧村上系が買増しを進めたことで株価がTOB価格を超えて推移し、本日期限だったTOBが延長となった。

奇しくも日を同じくして、3Dの株付け(9.78%)も判明する展開。
旧村上と合わせると20%弱をアクティビストが保有する格好になる。
まさに最近のアクティビストの傾向として欧米で言われている”Swarming”(群がる)である。

突っ込みどころの多い焼津に関し、PBR1倍を大きく割れる価格設定にはやはり無理があったようだ。

(変更)公開買付届出書の訂正届出書の提出に伴う 「焼津水産化学工業株式会社株式(証券コード:2812)に対する 公開買付けの開始に関するお知らせ」の変更に関するお知らせ

3Dが提出した大量保有報告書


フジテック社長、オアシスと早期に対話したい(Bloomberg)(9月19日)

オアシスと内山前会長が激突した6月の総会を経て、新社長に就任した原田氏が初会見。

『現時点でオアシスからの特別な要求やアプローチがあるわけではない』と語る。

直近オアシスが、ツルハやクスリのアオキで多忙だったこともあるのだろうが、総会で社外取の送り込みに成功したこともあり、当面は見守る方向なのだろう。

原田氏は84年入社のプロパーだが、ガバナンス体制の入れ替わりを『会社が変わるべきよいきっかけになった』と評価。
一方で、内山前会長とも対話する姿勢を示すなど、配慮も滲ませたようだ。


M&A

東芝、JIPによるTOBの成立を公表(9月21日)

JIPによる東芝へのTOBが無事成立し、東芝の非公開化がついに確定的となった。

TBJH 合同会社による当社株式に対する公開買付けの結果 並びに親会社及び主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ

以前ご紹介のとおり、価格の妥当性の説明ロジックは痺れる内容だったが、結局、対抗提案者も異を唱えるアクティビストも現れず、JIPが「最良かつ最後の買い手」だったことが示された格好だ。

本件に係る東芝の意見表明の背景を考察したnoteも改めてご参照頂きたい。


論文、インサイト

有価証券報告書 サステナビリティ情報開示に関する調査(KPMG)(9月21日)

日経225企業の23年3月期有報を対象に、GHG排出量の開示状況とサステナビリティ情報に関する第三者保証の状況を調査・分析。

  • 概算/速報値、過年度実績も含めるとScope1およびScope2は64%、Scope3は35%の企業が開示

  • 23年3月期のサステナビリティ情報に関して、保証を受けている旨を記載している事例はなし

  • 10%の企業で、過年度の何らかの指標について第三者保証を受けている旨の記載

以前から言われているScope3開示の難しさや、サステナビリティ保証がまだ黎明期にあることを示唆しているといえそうだ。


ここが知りたい『業種別の視点から考える収益性と株価』(第一生命経済研究所)(9月20日)

業種別にプライム上場企業のROEを分析。
製造業(特に時価総額1千億円未満)のROEの低さが浮き彫りに。

  • プライム市場は製造業が社数で4割、時価総額で過半数を占める

  • (言うまでもなく)ROEの高い企業ほどPBRは高い傾向

  • 自己資本規制に縛られる金融業を除くと、低ROE企業の比率は製造業が最も高い

  • なかでも時価総額1千億円未満の製造業は低ROE企業の多さが顕著

  • 一方、情報通信・サービス業では規模によるROEの差が然程見られない

特性上アセットヘビーにならざるを得ないことに加え、長い社歴の中で積み上がってきた自己資本が製造業企業のROEを下押ししていることが推察される。
規模が小さい企業はスケールメリットを活かしたマージン改善を行いづらく、資本効率にも意識が向いていないということではなかろうか。


2023年6月株主総会シーズンの総括と示唆(大和総研)(9月19日)

過去最高の株主提案件数や、機関投資家の議決権行使厳格化が目を引いた23年6月総会。
その状況を非常に良く纏まめているレポートだ。

今年の総会シーズンと来年6月に向けた展望は、これ一本読めば十分語れるようになるだろう。


その他(新聞記事等)

市場が問う「ジャニーズ」と人権(日経)(9月23日)

ロンドンのESG投資家の話を総合すると、ジャニーズを起用している企業について、
『問題意識はもっているが、すぐに(株式は)売却対象にはならない』
という感触という。

とはいえ、日本の企業や社会の人権対応の遅れは長らく指摘されている点でもある。
すぐの影響がないからといって、お得意の「ほとぼりが冷めるまで待つ」対応では海外の目は誤魔化せない。
海外マネーを呼び込み続けるには、人権対応もグローバルスタンダードにアップデートする必要がある。


ジャニーズ起用 上場企業の半数「見直し」 「脱ジャニーズ」1週間で倍増(帝国データバンク)(9月21日)

CM等にジャニーズを起用する上場企業65社のうち半数の32社が起用見直しを表明。
見直し企業の海外売上比率は平均3割超。
ESGの潮流の中、人権対応を求める海外の取引先や投資家を意識した対応ともいえそうだ。
他方で「タレントに罪はない」と起用を継続する企業もあり、対応は二分する。

ジャニーズは社名変更を検討しているようだが、海外投資家からすればそれで済む問題ではない。
広告主企業のみならず、その先にいる取引先や投資家の目線をも意識した対応が求められる。


アクティブETF、割安・高配当シェア9割(日経)(9月20日)

今月から上場開始となったアクティブETF。
「エンゲージメント型」のシンプレクス「PBR1倍割れ解消推進ETF」が累積売買代金、純資産ともにトップで滑り出し好調のよう。

個人の買いが8割とのことで、エンゲージメントやバリュー株への関心の高まりが窺われる。

京セラなど上場企業の1割、「持ち合い」で投資家反対も(日経)(9月20日)

政策保有株が純資産の20%以上の企業は、23年3月期の有報ベースで161社。
うち8割でPBR1倍割れという。
比率のトップ3は戸田建、京セラ、TBS。

機関投資家の議決権行使基準の厳格化で、ようやく企業も縮減に本腰を入れてきたようだが、コーポレートファイナンスを理解していれば、政策保有株の保有が非効率で、投資家からも求められていないことなど自明のはずだ。
実際はそうでもないのに「売るに売れない」という「空気」とともに、分かっていても外圧がないと動けなかったあたりは、極めて日本的だ。


社外役員兼任、前年比4割増 女性候補少なく(日経)(9月19日)

東証全上場企業の社外役員のうち2社以上の兼務は全体の17.5%。
女性役員に絞ると、兼務の割合は30%に高まるという。

『目立つのは弁護士や会計士、大学教授などの経歴』といい、内部昇格の女性取締役層が少ないことによる歪みが表れている。
形式基準を上から落とさないと動かない日本企業のことなので、こうした歪みも過渡期的なものとしてやむを得ないと、私は思っている。
女性取締役候補の逼迫が、企業が真剣に女性活躍とそのための方策を考えるようになる危機感の醸成に繋がることを期待したい。


ディズニーCIOが退任 相次ぐ幹部流出、経営混乱か(日経)(9月19日)

年初にTrianがキャンペーンを展開したディズニーが再び揺れている。
6月のCFOに続き、CIOも退任。

大規模なリストラやコスト削減を打ち出したことでTrianは矛を収めたが、保有を継続している。
23年4-6月の最終損益は赤字に転落し、Trianのキャンペーンで一度は上昇した株価もキャンペーン以前の水準に沈む。
目下ABCほか傘下のテレビ局の売却に動くが、改革の成果は目に見えて来ない。
今後の展開次第ではTrianが再び牙を剥くこともあり得そうだ。


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