タクシーに乗りながら | 500文字のエッセイ
そういえば知らないうちに、タクシーを止められるようになっていた。
タクシーなんて乗ったことのなかったころからすれば、道行く車に手を挙げてヘイタクシーなんて、思いもつかない行動だった。
少なくとも大学生のころはまだ、タクシーを止めるのに躊躇をしていた気がする。躊躇というのはお金が高いことへの懸念もあったし、なんとなく身の丈に合わないもどかしさもあった。
飲みすぎて終電を逃せば、頑なに何時間でも歩いて帰った日々はちょっと久しい記憶だ。(とはいえ毎日タクシーを乗り回すような生活ではないけれど。)
ふと10年前の自分は今の自分をどう見るだろうかと考えることがある。
大人だと思うだろうか、まだまだ子どもだと思うだろうか。今の境遇を羨むだろうか、こうはなりたくないと思うだろうか。
昔の自分に未練はないけど、昔の自分が思い描いた未来の自分には少し未練がある。
どんな自分を信じていたかは、今となっては分からないけど、少なくとも、思い描いていたより少しでも、大きくなっていたいものだ。
今日の文字数:450文字
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