なんの写真だっけ | 500文字のエッセイ
ずっと撮りためていた写ルンですをようやく現像した。たかだか20枚どりぐらいだったのに、かれこれ半年以上は温存していた。
もう撮り始めたころのことなんてすっかり忘れてしまっていて、現像された写真を見てまず、これはなんの写真だっけと思い出すことからはじめた。
20数枚を撮るのに半年以上もかけているわけだから、よっぽど印象に残したい場面だったろうと思うのだけれども、大半が他愛もない瞬間だったりする。
iPhoneが手元にあって、カメラを撮ることにあまりにも慣れてしまってからは、シャッターを切ることにも切られることにも、特別な感情を抱くことは少なくなってしまった。
だからこそ、iPhoneで撮った写真を見返しても特段何かが込み上げてくるということも少なくて、どこか寂しい気持ちになる。
少なくとも写ルンですは、一枚撮って撮るごとにカウントが減っていくことが目の当たりに分かるし、だからこそ撮るという行為にも撮られるという行為にも、少し特別感が生まれる。
なんの写真だっけ、と立ち止まって考えているうちに、その時の場の流れや空気感や、シャッターを切ろうとした自分の感情が思い出されるような気がして、少しおもしろい。
今日の文字数:500文字
サポートいただく度に、声をあげて喜びます。