在るものを在るがままにという話
先人に学び、先駆けを追う。
誰も彼もが自らを唯一無二と語る、誰も彼もが自らを唯一無二と望む。
0. まずはあらましから
もう半年ほど前の話になる。
ハノイ発成田行の便で帰国し、3日間の隔離を経て立ち寄った都内の本屋。そこで1冊の本を手に取ったことから今回の話は始まる。どっちが表題なのかよく分からないが"WAREHOUSE HOME"と銘打たれて……いや、せっかくなので(?)Amazonのリンクでも貼ってやろうか。あとまぁまぁいいお値段する。
今だからこそ明かせるが、日本に本帰国した時点で建築士になった後の事は特に考えていなかった。その最たる理由は「その頃にはきっと、何かしらの次の目標が定まっているはず」という実に射手座のAB型極まりないものだ。
※全ての射手座AB型がそういう訳では無い
1. 海外の事例という切り口
本書で掲載されている事例は全て海外の事例になる。アメリカ・イギリス・スペイン・イタリア・ベルギー・オーストラリアの6ヶ国で、かつては工場や倉庫だった建物を住宅に改装したものを取り上げている。
掲載の仕方も、躯体*1をはじめ壁や床、さらには中二階*2など工場・倉庫ならではのオブジェクトに着目した上で紹介されたものもある。
写真と併せて解説も丁寧になされているので、より一層の理解を深めやすいのは好印象。設計に携わった者や、そこに実際に住む人々の声はとてもいい刺激になる。
2. 前提が大きく異なるこの国で
しかし、それらはあくまで海外の事例である。出羽守*3になるつもりは毛頭ないが、ここに掲載されているのは私達の住む日本とは前提が大きく異なる。とりわけすぐに思い付くのは、以下の3点だ。
例えば水回りには換気設備は必須だし、地域にもよるが断熱と結露対策など、癖のある様々な課題がある(場合が多い)この国で本書のデザインや設計をそのまま引用できる訳ではない。もちろんできないとは断言しないし、参考にすること自体は可能で……次に進もうか。
3. 潜在的需要から先を読む
今回の本題というか、私自身の感想に入る。
今日の日本において、経営難や後継者問題など様々な理由で廃業する町工場は各地に存在する。そうした土地は、多くの場合住宅用地になったり駐車場になったりするが、いずれにしても一度まっさらな土地にされる場合が多い……気がする。
これを、根底から見直す事はできないだろうか?
通常よりも確かに堅牢な作りの工場や倉庫を、住宅なり店舗に生まれ変わらせる。コンクリート床はそのまま土間やガレージとして活用できるし、無柱は間取りの自由度を大いに保障するだろう。加えて本来ならそれなりにかかる解体費用を大幅に抑えつつ、リフォーム費用へと回す。下のリンク先は個人的にもいいなと思った、先駆者様の一例だ。
夢は一人で描くだけが全てじゃない、
何かの拍子に届くことだってある。
*1 建物の構造の根幹をなす部分、具体的には基礎・柱/梁などを指す。
*2 1階と2階の中間に入る空間。高さ1.4m以下に抑えることで床面積に含めないロフトとは、似て非なるもの。
*3 「海外では~」「○○業界では~」とあるテーマに対して別のものを引き合いに出して難癖をつけこき下ろす論調、及びその論者を皮肉った表現。
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