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【ブレジンスキーの地政学】三大中央戦略戦線とアメリカによるチェスゲーム

こんにちは。いつもお越しくださる方も、初めての方もご訪問ありがとうございます。

今回は三大中央戦略戦線とアメリカによるチェスゲームについて書きたいと思います。


ブレジンスキーの三代中央戦略戦線

かつて、アメリカの政治学者で、ジョンソン政権の大統領顧問、カーター政権の国家安全保障問題担当大統領補佐官のズビグニュー・ブレジンスキーは彼の著作の中でユーラシア大陸を巨大なチェス盤に例えていました。

この考えは彼が理事を務めていたアメリカのシンクタンク、戦略国際問題研究所、通称CSISにも受け継がれ、かつてこの組織は東アジアを巨大なチェス盤に例えていました。

彼はその著作『ゲーム・プラン』という著作の中で彼の地政学的な考えを明らかにしています。その中に興味深い概念である三大中央戦略戦線とかなめ国家というものがあります。今回はこれらの概念について考え、現在のウクライナを巡る両国の対立を考えていきたいと思います。

⬛三大中央戦略戦線

ブレジンスキーは米ソ対立には三つの中心となる戦線があるとしています。それがヨーロッパ、極東、中東地域に存在します。

◾第一戦略戦線(ユーラシア極西半島地域)

当時の第一戦略戦線は主にワルシャワ条約機構とNATOとの境界域に位置しています。より大まかに表現するならば中欧あるいは中東欧地域と表現していいのではないかと思います。この地域はソ連の崩壊により戦線は大きく東側に移ったと考えることもできるかもしれません。ほかにも中欧からウクライナまで戦線が間延びしたと見ることもできるかもしれません。

◾第二戦略戦線(ユーラシア極東地域)

当時の第二戦略戦線は、日本、韓国、フィリピンからマラッカ海峡に通じる領域で、アメリカは当時、台湾をソ連側として認識していたことが分かります。恐らく今日でさえもそのように考えるアメリカ人は多いと思います。より大まかに表現するならば極東地域と表現してもいいのではないかと思います。フィリピンも含まれていますが、日本とソ連・中国の対立が中心なのを考えると極東と見なすのがいいと思います。

この地域はソ連の崩壊以降も大きな変化は起こっていませんが、台湾がより独立の機運を高めていると考えると、紛争の中心地が日本のシーレーンから台湾海峡に移ったと考えることができるかもしれません。

◾第三戦略戦線(ユーラシア南部人口稠密地域)

第三戦略戦線は、ソ連とアフガニスタンを含む地域と、イランとパキスタンを含む地域との境界に位置します。より大まかに表現しますと中東地域と呼ぶことができると思います。現在の中東は冷戦当時と大きく形を変えていますが、この地域の裏テーマ、あるいは本質は、今も昔もイスラエルという国家にあるという点でいいますと大きな違いはないかもしれません。

◾アメリカの国益のために利用される三大中央戦略戦線

これが米ソ冷戦時代の三つの主要な戦線で、今日もアメリカとロシアが対立した場合は、これら三つの地域がきな臭くなります。

ブレジンスキーの著作のタイトル『ゲームプラン』という名前の通り、これらの三つの地域で外交や紛争などの局地戦を通じて、自分たちに利益を生み出すというのが冷戦体制以降一貫したアメリカの戦略であると見做すこともできるでしょう。

◾ロシアとウクライナの紛争と三大戦略戦線

アメリカとロシアによる長期的な対立の主戦場であるウクライナと関連して、第一戦略戦線であるユーラシア極西半島地域であるポーランドにはミサイルが墜落したり、西ヨーロッパ・ドイツへとつながっていたノルドストリーム・パイプラインが爆破されたりと、アメリカ・ウクライナ陣営はこれらの地域への飛び火を狙っています。

極東地域でも中国と日本が台湾を巡って対立している構図が描かれており、アメリカやウクライナ関係者がこれらの地域について、繰り返し言及するのは、彼らにとって利益があるからと考えるのが無難でしょう。

第三戦略戦線は特にNATOとは関係がありませんし、イランは現在はほとんどロシア側との協調路線を歩んでいます。第一戦略戦線・第二戦略戦線とは異なり、ウクライナが原因でこの地域から紛争が発生するとは思えませんが、イランの核問題を通じてアメリカ・イギリス・イスラエルが何かを仕掛けてくる可能性がないとはいえないでしょう。

⬛かなめ国家

ブレジンスキーは三大中央戦略戦線と関連してかなめ国家という概念を提唱しています。

かなめ国家の定義は、本来的には重要性を持ち、同時にある意味で「手を出しやすい」国のことをいいます。

◾かなめ国家:ポーランドとドイツ

極西戦線におけるかなめ国家はポーランドドイツであるとしています。アメリカにとってポーランドとドイツは、現在も対ロシア戦略において重要な役割を与えられていると言えるかもしれません。それは現にこれらの国家が直接的にウクライナ紛争に巻き込まれていることからも言えると思います。

この二カ国をウクライナ紛争にどのように絡めるのかがアメリカの国務省・国防総省・CIAの力の見せ所と言っても言い過ぎではないような気がします。

私はウクライナはアメリカにとっての代理戦争を戦わされている国とは考えていません。ウクライナはアメリカが実際に乗っ取ろうとし、しかもそこに新しい国家、世界政府の首都を建設しようとしている本命の国だと考えています。将来ドニプロやオデッサが世界における重要な都市となるべく、ポーランドとドイツは今後もアメリカに利用されるのではないかと推測しています。

◾かなめ国家:韓国とフィリピン

ブレジンスキーは極東地域におけるかなめ国家を韓国とフィリピンであるとしています。冷戦後も朝鮮半島は未だに分断されたままであり、アメリカとしてもロシアとして紛争を起こしやすい地域ではあると思いますが、今日はそこに台湾が加わっています。

おそらく台湾がなければ、今頃は「台湾有事は日本有事」の代わりに「朝鮮半島有事は日本有事」というフレーズが使われていたのではないかと思います。日中戦争が決して起こりえない戦争ではないということをアメリカは巧みに日本・中国両国に意識付けし続けています。一方で、フィリピンはかつてほどにはかなめ国家としての機能は果たしていないような気がします。

◾かなめ国家:イラン

ブレジンスキーは南西戦線におけるかなめ国家をイランあるいはアフガニスタン。パキスタンを合わせた地域と表現しています。しかし実際のところこれはある種の方便であり、中東におけるアメリカ最大の同盟国であるイスラエルの周辺国家すべてが、工作のターゲットになるというのが本音でしょう。

ソ連崩壊後、アフガニスタンとイラクはアメリカによって破壊され、シリアもまたそのターゲットとなっています。これらの国々に限らずイスラエル周辺国は常に紛争地域として利用される恐れがあると思います。

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最後に

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