噛んで、吐き出す


下剤を買うには高校生の私にとって金銭的に負担がかかる。

選んだ別の方法は、



「食べ物を噛むだけ」



これは「チューイング」と言われる行為である。

チューイングとは、
食物を口に含み、咀嚼だけした後ビニール袋などに吐き出すこと。



恐らく、多くの人がそんな行為をとてつもなく汚い事と思うだろう。
想像しただけで、汚いと思うだろう。

当時の私だってそう思った。
本当に、食べ物が勿体無いと思った。
でもそんな考えよりもはるかに勝っていたのは、



太りたくない





この気持ちだった。この気持ちだけが私を動かした。

それからしばらくは食材を噛んでは吐き出し、噛んでは吐き出し、を繰り返す毎日で
家族とテレビを見てる時だって家族に隠れながら、そっと食べ物を袋に吐き出していた。


初めは(やっと、好きなものが食べられるのか)と浮かれていた私も、しばらくすると噛みすぎて、とにかく顎が疲れる。
しかも食べ物に対する罪悪感が半端ない。




もうこの時からは誰も私のことを見て欲しくなかった。
こんな汚い私を見られたくなかった。


みっともなくてチューイングもやめたが、
どーするもこーするもなくただ食べた。






止まらない。




お腹いっぱいなのにもうここまでいくと止まらない。


美味しくて。
って言う微笑ましいものではなくて、
食べなきゃ、という焦燥感に駆られて。

もう何も考えられずに食べていた。


野生動物にでもなった気分。




泣きながら、ご飯を食べる。

ご飯を食べたくないと思いながら、ご飯を食べる。



あれは、明らかに過食期だった。



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