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【読書記録】戸谷洋志「学びのきほん 哲学のはじまり」NHK出版

戸谷洋志『哲学のはじまり』を読み返した。薄くて字が大きいのでパラパラと読んで1時間かからず読了できる。もう3回くらい読み返している。哲学の三大領域(存在論、認識論、価値論)の基本を平易な言葉で噛み砕いて解説してくれていて、哲学書を読むときの見通しが明るくなる……気がする。解説もさることながら「はじめに」と「あとがき」の文章がめちゃくちゃいい。 今の世界で「当たり前」とされることを問い直すことが哲学の営みであると。 ただし、本当の意味で「哲学する」のはハードルが高い。単に知識

    • 240415 日常

       クリストファー・ノーラン監督の映画「オッペンハイマー」を観た。「数学は楽譜だ。楽譜が読めることが大事なんじゃない。音楽が聞こえるかどうかなんだ。君には聴こえるか?」序盤のシーンでケンブリッジ大学の学生だったオッペンハイマーにニールス・ボーアが言ったセリフが印象に残っている。数学とは、単に計算をしたり方程式を解いたりする能力だけを問うているものではなく、深く直感的に理解することが大事であるということなのだろう。一流の物理学者かそうでないかかを分ける分水嶺が直観力だと聞いたこと

      • 【読書記録】星野道夫『旅をする木』文集文庫

         haruka nakamuraの音楽を寝る前に聴くのが習慣になりつつあったある晩、haruka nakamuraのピアノ演奏と星野道夫の本の朗読のコラボレーションの動画を見た。みずみずしい星野道夫の言葉が素敵な音に乗って届き心が穏やかに満ちていくような感覚があった。  最近はいくら休んでも休んだ気になれず、なんとなく寄る辺ない気持ちで過ごしていたこともあって、日常から離れてどこか遠い土地に行きたいと考えていたところで、昔見た、ある作家さんがインタビューで「読書は旅に似ている

        • 山の上ホテルとの別れを惜しむ

          2月上旬の山の上ホテル訪問を振り返って。 目の前の大学に10年近く通っている身としてはたまに会う長い付き合いの友だちのような存在。あの時あの人とカフェでお茶したな、とか、天ぷらを食べにいったな、みたいな記憶を共有している。 ホテルは御茶ノ水駅の近く、大通りを折れて少し坂を上っていったところにある。都内にあるのに、どことなくひっそりとした雰囲気が漂っていて、アンティークな内装と相まって時間が止まってしまっているかのよう。ホテルはひっそりしているに限る。 三島由紀夫も次のよう

        【読書記録】戸谷洋志「学びのきほん 哲学のはじまり」NHK出版

          【読書記録】マーチ&オルセン『組織におけるあいまいさと決定』有斐閣選書R

          第5章:テクノロジー・オブ・フーリッシュネス この章では「愚かさのテクノロジー(technology of foolishness)」に焦点を当てている。 ここで言う「愚かさ(foolishness)」とは、一見非合理的であるが、実は新しい視点や可能性を開くための思考を指す。この理論の核心は、おもしろい(=革新的な)人や組織が持つ、従来の枠組みにとらわれず、既存のパラダイムを逸脱して新たな視角を提示する力にある。 組織の発展過程においては、ある程度の慣性―すなわち、合理

          【読書記録】マーチ&オルセン『組織におけるあいまいさと決定』有斐閣選書R

          240106 日常

          「お先にどうぞ」 目の前に並んでいた小学生らしき風貌の男の子に声を掛けられる。 本郷三丁目駅の改札前でSUICAの残高が足りないことに気づいたわたしは、精算機に並ぶ少年のうしろに立った。残高不足で改札に止められるたびにオートチャージ設定にしていないことを悔やむ。 そして、先のように声をかけられるのであった。手元のスマホから目をあげると、こちらを見上げる少年と目が合った。 どうやら精算機の順番を譲ってくれようとしているらしい。こういう場面で後ろの人を優先するように教えられて

          240106 日常