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ポリネシア地域で嗜まれている”カヴァ”(Piper methysticum)の民俗的背景とその効能について

今回は、ポリネシア地域(フィジー、トンガ、ハワイ、サモアなど)で嗜好飲料として使用されている植物”カヴァ”について歴史的、民俗的背景を踏まえ、注目している点、効能についてまとめ筆者による考察などを記述していこうと思う。


・カヴァの生態

カヴァ(Piper methysticum)
コショウ科コショウ属の低木の一種
南太平洋のサンタクルーズ諸島、バヌアツが原産地とされ、ポリネシア地域に広く
分布している。

参照:https://ja.wikipedia.org/wiki/カヴァ (Kava)
参照:http://tohotravel-bulavinaka.blogspot.com/2010/09/blog-post_27.html 
カヴァの根

カヴァには抗不安作用、鎮静作用、抗ストレス、不眠改善、禁煙時の苛立ちなど様々な症状に効果があり、アルコールと似たような酩酊感があることからアルコール飲料の代わりとして嗜まれている。主な摂取方法としてカヴァの根を粉末状に加工し水に溶かして飲用する。
その歴史は大変古く、コーヒーよりも古いという。主に先代の人々は宗教的、社会的儀礼(結婚式や収穫祭)において多く使用し、重要な植物であったのだがそれは現代でも変わらない。現代ではよりカジュアルに飲まれることが多く『カヴァ・バー』、『アヴァ・バー』、『シャカオ・バー』と呼ばれるバーで泥水のようで決して飲みやすくないカヴァをココナッツドリンクやコーヒーショットなどで飲みやすくしたモクテルを楽しむことができる。又、"カヴァ・バー” はポリネシア地域のみならずアメリカ本土でも目にかかることが出来るそうだ。

参照:https://heapsmag.com/kava-pacific-island-natural-drink-healthy-2017-trendy-drink-makes-you-feel-high-and-relax-happy ココナツの容器で飲む。
参照:https://ja.wikipedia.org/wiki/カヴァ カヴァを用いた儀式


参照:https://heapsmag.com/kava-pacific-island-natural-drink-healthy-2017-trendy-drink-makes-you-feel-high-and-relax-happy  
ニューヨーク・マンハッタンに構えるカヴァ・バー

カヴァの作法

カヴァで宗教的な儀礼を行う際には作法がある。
出来上がったカヴァは身分が高い人から順に飲むようになっている。
まず、2回手を叩き「ブラ!」と声をあげ、一口で飲み干す。飲み終えたら3回手を叩きココナツの殻を返して「ピナカ」と礼を言う。このパターンで一人一人回っていき、2〜3回廻ってくることもある。そして、儀式は夜遅くまで続くのだ。

現代ではアルコールを嗜むのと同じように仕事終わりにカヴァ、休みの日にカヴァ、瞑想の時にもカヴァを飲む。村へのお土産としてもカヴァを持っていく事、宗教行事にもカヴァは欠かせない。文化とカヴァの繋がりを見ているとカヴァは人々の心を繋ぐ、まさにスピリチュアルドリンクである。

カヴァの有効成分と分子構造

上記にも記載しているようにカヴァには様々な有効成分が認められている。

カヴァラクトン(Kavalactone)



参照:https://ja.wikipedia.org/wiki/カヴァラクトン  
カヴァラクトンの分子構造

カヴァの代表的な有効成分であるカヴァラクトン。6つの主要なカヴァラクトンがある。
効能として主に鎮痛、麻酔、抗不安、鎮静、神経保護、抗精神、中毒緩和、不眠症などに効果があると言われいる。
カバインなどの特定のカヴァラクトンには大麻と同様の方法でカンナビノイド受容体CB1(内因性カンナビノイド)と相互作用することも明かされている。

CB1受容体は中枢神経に存在しており、生理作用として鎮痛、食欲調節、記憶・認知、運動制御など多岐にわたる。カヴァを摂取した後、酩酊感があり少々の多幸感があるのはCB1の影響ではないかと筆者は考える。

参照:https://ja.wikipedia.org/wiki/カヴァ 6つの主要なカヴァラクトン

薬としてのカヴァ

カヴァの有効成分に関することを書いていたが、カヴァは精神作用だけではなく、
歯痛、腹痛、腰痛、関節痛、呼吸器疾患などに対する民間薬としても使用されている。欧米諸国でもこの薬効は認められ、抗うつ剤として利用されるようになったが、服用した患者から肝疾患の報告が相次ぐ様になった。ただしこのような肝疾患の正確な原因がわかっていない為、他の薬やハーブとの併用か大量服用に要因があるのではないかと考えられている。
この様に身体的にも精神的にも薬効がある為、欧米では販売を禁止している国や使用が制限している国もある。
日本ではカヴァを含む製品は無承認無許可医薬品として監視取締されているが制限はされていない為、iherbなどでサプリを購入することが出来る。

カヴァを飲んでみて

筆者は実際にカヴァの効能を体感するためiherbにてサプリを購入し、服用してみた。


https://jp.iherb.com/pr/nature-s-craft-kava-kava-1-000-mg-60-capsules-500-mg-per-capsule/133372 カヴァのカプセル

結論から言うと明確な酩酊感などは感じられなかったが、服用後30分ほどで軽い酩酊感は確かにあった。(普段に増してリラックスしている程度)筆者が効果を感じたのは睡眠時だった。いつもよりもより深く眠る事ができ、何より夢が鮮明に”リアル”に感じたのである。これには科学的な説を唱えている記事を見たのだがあいにく、その内容を忘れてしまった為割愛させていただく。(記事を見つけた際には追記する。)
以上を体験してみて精神作用のある植物、薬はその場の心理状態と周りの状況、環境によって効果が大きく変容してくる。”セッティング”がすべての根源で重要だと言う事を学んだ。そして、個人の体質や摂取量も重要である。
カヴァを自然に囲まれたポリネシアの国々で大勢の現地人と共に摂取するのと、日本で狭く四角い箱に入った部屋の中でカプセル飲むのとでは雲泥の差であることは間違いない。そのことを理解した上でのレビューであることを理解していただきたい。

最後に

今回はポリネシア地域の”カヴァ”を紹介した。
日本ではまだ解明されていない植物、いや、世界でも解明されていない植物は果てしない数になるだろう。植物と人間は非常に深い関わりを持ち、植物はその土地の文化を繁栄させている偉大なる生物であると筆者は常々感じている。
現代の人々は自然に生けている物をあまりにも軽視しているがその存在を決して軽く見てはいけない。自然が存在しているからこそ人間も存在しているのだ。
自然は万物でありその中で生かしてもらっている事に最大の敬意を払い、これからも植物と人間の観察をしていこうと思う。

*雑談*
文化や民族学の学問を勉強しているとやはり植物は人間だけでなく生態系システム自体にとって切っても切れない関係性にある。そこで思ったのはそこに着手している専門的な学問が日本に存在しているのだろうか?
民俗植物学(Ethnobotany)という学問が存在し非常に興味を持っているのだが非常にマイナーな学問でありこの学問がある大学や大学院は筆者が調べる限り日本では存在してないかと思う。(筆者が知らないだけかもしれない。)
更に民俗と植物の学問が広く浸透したらどんな社会システム下でも生き延びる知恵を得られるのではないかと思う。

ご一読ありがとうございました。

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