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今春、医療ソーシャルワーカーになる方々へ

今日から新年度ですね。
3月中に書こう書こうと思っていたのに、気付けば4月に入ってしまいました…。
相変わらずの遅筆ぶりに、今年度こそは少し進歩したいなと思いました。

早いもので、この仕事を初めて丸10年が経ちました。
決して楽な道のりではなかったですが、がむしゃら過ぎて、気付けば10年経っていたことに驚きを隠せません。
今日は新人医療ソーシャルワーカーになる方々へ、たった10年ではありますが先を歩いた人間として、自分の体験談を踏まえながらメッセージを送りたいと思います。

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今日から医療ソーシャルワーカーの一歩を踏み出した皆様。
おめでとうございます。
そしてようこそ、医療福祉の世界へ!
同じ業界で働く仲間として歓迎します!

これから皆様の目の前に広がるのは無限の道です。
この環境を活かすも殺すも、あなた次第です。
特に医療ソーシャルワーカーという仕事は、医療機関という福祉職にはただでさえアウェーな環境ではありますが、同職種の部署の環境にも非常に大きく左右される職業になります。
一致団結している職場もあれば、残念なことに支え合う文化がない職場もあると思います。
医療ソーシャルワーカーとしての自分を武器に、どんな仕事をして、どんな風に組織や社会に貢献していきたいのか、それを見失わずに継続して働き続けることで(時には転職も選択肢に入って来るとは思いますが)、きっと道は拓かれると思っています。

私はありがたいことに、この10年間、患者さんからの相談に乗る仕事だけでなく、地域活動や行政関係の仕事、職能団体の仕事等、院内以外の仕事も多く携わらせて頂くことができました。
それは私自身が地域づくりという分野に興味があり、その機会を叶えてくださった職場の理解があったからこそでした。
新人の皆さんはきっと、最初は自分自身の力量に不安を覚えて、そして色んな場面で理不尽な要求も突きつけられ、将来の自分の姿を想像することが難しいかもしれませんが、目の前の患者さんやご家族、一人一人に真摯に関わり続けていくうちに、見えてくるものがあると思います。

私自身、活動の幅は広がりましたが、医療ソーシャルワーカーの原点は、目の前の患者さんとの関わりの中にあるものだと思っています。
10年経ちましたが、その姿勢は忘れずに、誠実にこれからも仕事をしたいと思っています。

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専門職として、自分の専門性を高めることは非常に大事なことではありますが、もう一つ大事にしてほしいことは「社会人」「組織人」であることを忘れないでほしい、ということです。
筋を通すこと、時間や約束を守ること、ホウレンソウ(報告・連絡・相談)を怠らないこと。
専門職であり、同時に「組織に属する社会人」でもあるのです。
どんなに専門性が高く素晴らしい仕事をしたとしても、いつも会議の時間を忘れて無断欠席したり、誰かに自分の仕事を押し付けたり、独りよがりに仕事を進めたり(逆にしなかったり)することはしてはいけません。
恐らくそれをし続けていると、間違いなく居場所を失うでしょう。
最悪の場合、部署全体の問題として取り扱われることもあります。

現在の医療ソーシャルワーカーの労働環境は多人数職場が多いと思いますが、たとえ同職種がいなかったとしても、雇用契約を取り交わして就労している以上、組織への貢献が求められます。
新人の内は、貢献をする、というよりも不利益を生み出さない、という観点の方が大きいかもしれませんが、いずれにしても、他者に迷惑をかけない(業務上のミスはある程度は致し方ないと思いますが)ことが大事だと考えています。
筋を通すこと、時間や約束を守ること、ホウレンソウ(報告・連絡・相談)を怠らないこと、これがきちんとできていると周囲から認められる人は、組織の中でもより重要な仕事が与えられているように思います。

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今思えば、私は新人の内は、全く素直でもなく、かわいげのない新人職員でした。
圧倒的に謙虚さが足りなかった。
先輩からの指摘も、自分が納得できなければ入らなかったですし(ある程度の芯は必要と思っていますが、とんでもなく我が強かったと思います)、自分の非を認めることができなかった。

ありのままの自分。
等身大の自分。
今の自分ができること。
今の自分ではできないこと。

それを受け入れるのは、時には苦しく辛いことですが、他者からの意見を受け入れる土台を作るのも、新人期には必要なことなのだと思います。
10年経って思いますが、他者からの意見を、批判も含めてもらうことって、新人期だけじゃないんですよね。
むしろ、今の方が多い気がします。
しかも他職種の人からだったり、全く別の業界の人からだったり、時には専門職ではない方々からも頂戴することがあります。
同じ専門性の共通言語を持たない方々の意見に耳を傾けるのは、とっても難しい。
そんな時に、自分の度量の広さや狭さを感じます。

誰かに何かを教わる

この姿勢は新人期にしか養えないものだと思っていますので、常に向上心を持ち、謙虚さも持ち合わせながら、学んでいく必要があると思います。
中堅以降もできなくはないのでしょうけれど、自身の価値観が凝り固まっていることも多いので、多大な努力を必要とするような気がします。
だからこそ、誰かに「教えて頂く」姿勢を身につけることで、必ず中堅期以降のキャリアにプラスに作用すると思っています。

ただし注意しなければならないのは、先輩だからと言って、必ずしもその意見を受け入れなければならないか、ということ。
残念なことにどの業界にもあるように、医療機関内でもパワハラは存在します。
私も、とある他職種からパワハラを受け、それが原因で適応障害と診断された経験があります。
一度追い詰められると、なかなか正常な判断はできなくなってしまいます。
そうなる前に信頼できる人、味方になってくれる人を一人でも多く作って頂ければと思います。
(あまりにもパワハラが酷いときは、自分を守るために退職することも選択肢に入れてくださいね。)

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先ほどから書いているように、医療ソーシャルワーカーは医療機関内ではアウェイです。
長い職業生活の中で、他職種との関わりや、組織としての姿勢に失望したり、絶望することもあると思います。
私も実際に何度も経験しましたし、退職届提出寸前まで行ったこともあります。
自分の専門性の必要性を何度も自身に問いかけ、そして心無い他職種からは否定されることもありました。

ただそんな時に限って、今の職場・この業界に思い留まらせてくれる患者さん・ご家族に出会うことが多いのです。

「さとうさんに会えてよかった。」
「こんなに話を聞いてくれて嬉しかった。」
「また少し、明日から頑張れる気がします。」

丁寧に患者さん・ご家族と面接を重ねる内に、私の方が力をもらうことが多々ありました。
患者さんからお礼を言わるたびに、「こちらこそ、あなたと出会えて力をもらえたのは私の方なんですよ。」と言いたくなります。

人を傷つけるのは人であり、そして人を癒すのもまた人。

その意味を深く理解できるようになってから、簡単にこの仕事を辞めようとは思わなくなりました。
(実はそれに気づいたのは、ほんの数か月前ですが)
新人医療ソーシャルワーカーの方々も、きっとそれぞれの形で壁にぶつかり、失望したり、辛い気持ちになることがあるかもしれませんが、私の経験が少しでも何かのヒントになってもらえればな、と思います。

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ここまで書いて読み直してみると、医療ソーシャルワーカーってなんだかおっかなくて、過酷な環境で働いているように感じますね。
確かにそういう一面もありますが、もちろんそれだけではありません。

この仕事の醍醐味は、「人々が持つ人間としての力強さ」「人々が力強く変化していく過程」を感じることができるところではないかな、と思います。
人って不思議な生き物で、そして強く逞しく自由な存在なのだなと何度でも思い知らされ、その度に感動します。

この仕事は、人一人の人生を大きく変えてしまう力があります。
しかし、人の人生はコントロールすることはできませんし、自分の力を過信して自惚れてもいけません。
一人の患者さんの前では、私達医療ソーシャルワーカーは無力です。
だからこそ、今自分ができることを突き詰めて考えなければなりませんし、そこには高い専門性が必要になります。
きちんと専門性を身につけることができれば、辛いことや悲しいこともそれなりにある仕事ですが、それ以上に大きな喜びや感動を感じることができる仕事だと思っています。

医療ソーシャルワーカーって、面白いですよ。
今日、その第一歩を踏み出した新人医療ソーシャルワーカーさん達が、これから出会う人々との関わりから感じてもらえれば、これほど嬉しいことはありません。
同じ業界の仲間として、切磋琢磨しながら一緒に頑張っていきましょう!

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