IQ幻想
IQ(知能指数)が高い人を称賛するのは、もはや時代遅れのはずなのだが、未だにその幻想は社会から消えていない。
マリリン・ヴォス・サヴァントという、IQのギネス記録保持者だった人がいる。
彼女は「モンティホール問題」と呼ばれる、数学に関する論争で名を馳せた。
高校時代に、このエピソードを知った私は、いたく感銘を受けたものだ。
だがサヴァントは、どうやら数学を専門的には理解していないらしい。
彼女の専門性の低さは、その著書『史上最大の難問が解けた!』で訳者が解説している。
この本は、著者であるサヴァントに批判的な人たちによって翻訳されているのだ。
数学力の程度については私は判断しかねるが、IQが高いことが印籠の紋所のように扱われるのは健全ではあるまい。
「モンティホール問題」での活躍は、もちろん立派な業績である。
しかし、だからといって「高IQ」=「万能の天才」とは限らない。
そもそも、数学などの学問に長けていることが「偉い」と決まっているわけではない。
みんなが何となく「凄い」と思っているだけの話だ。
参考文献
植島啓司『「頭がよい」って何だろう 名作パズル、ひらめきクイズで探る』集英社新書、2003
サヴァント『史上最大の難問が解けた! ミズIQの「フェルマー最終定理の証明」事件簿』白揚社、1995
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