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ほの暗く、しかし変化への期待感があった時代『Jam Films』

やあ、僕だよ。
11月初旬を過ぎると年末の足音が聞こえてくるよね。
さっきも夫と一緒に鳥屋さん(鶏肉専門の総菜屋をそう呼んでいる)に行った際、そんな話になったよ。

今年のクリスマスは慌てて買ったケンタッキーじゃなくて美味しいチキンレッグが食べたいなあ。
クリスマスが上手く決まると年末も気持ちよく過ごせることが多いからね。

さて、今日選んだのはこの一本。
『ポーラー・エキスプレス』を観たかったのだけれど、さすがにクリスマス気分が過ぎるなと思って、検索結果の近くにたまたま出てたこれを選んだんだ(何故これが出てきたのかは謎です)。

映画あらすじと感想

『Jam films』オムニバス映画
アマプラで視聴。実は初見でなく、何度目かの視聴である。
2002年公開。新進気鋭の7人の監督がそれぞれ作る短編はクオリティ高く、しかし長編みたいに疲れず楽しめる。
でっかいフルーツパフェのような映画だと僕は思ってる。

「the messenger -弔いは夜の果てで-」北村龍平
ギャングのボスと話す黒ずくめの謎の女の話。
「スカイハイ」の監督らしい、超自然的な美しく暗い女を表現させたらピカイチな映像だった。

「けん玉」篠原哲雄
飛行機も乗れないフリーターとその彼女の話。
篠原涼子がめちゃくちゃ可愛い。当時の理想の彼女像がぎゅっと詰まったセリフ回しは秀逸。

「コールドスリープ」飯田譲治
大沢たかおのセクシーと狂人を楽しむ話。
とにかく大沢たかおがエロい。昔は女性に限らず、男性に対してもこういうセクシャルな映像が多かった。18年ぶりに良いもの観てしまった。

「Pandora -Hong Kong Leg-」望月六郎
水虫を治すためにエロいことされる女の話。
これAVやろがい。と思ったらこの監督、ピンク映画撮ってるみたい。
そりゃえちちコンロ点火ですわ。このオムニバスの中で最もエロい映像。

「HIJIKI」堤幸彦
立てこもり犯が大嫌いなひじきを食べる話。
初めて観た僕はあまりの面白さにこの監督の作品ばかり観てた時期があった。『トリック』シリーズは今でも見直す。
生涯に一度でいいから何であんな面白いものが作れるのか直接聞いてみたい監督。

「JUSTICE」行定勲
英語の授業中にブルマの数を数える学生の話。
若き日の綾瀬はるか、妻夫木聡が可愛い。ところでブルマとスクール水着を学校指定として広めたのは誰なんだろう。エロ目的としか思えない

「ARITA」岩井俊二
紙の上に書いてあるARITAを焼いてしまう話。
映画界の印象派代表、岩井俊二って感じの映像。『リリィ・シュシュのすべて』でSalyuを起用したのはマジでセンスあると思う。また観るかな。

今見ても色褪せぬ作品が多く、若い感性をまざまざと思い出した。
創作意欲が高まる映画なので「創れない」と悩んでいる君にぜひ観てみてほしいな。

邦画観なくなったのいつだ

この映画を観て、僕は元々邦画から映画にハマったことを思い出した。
小中学生の僕は世の中のことをこれっぽっちも知らなかったので、キャストありきの作品に簡単に騙されることが多かったように思う。

それに対して僕はふつふつと怒りが沸いて、結果裏切られることが少ない洋画に傾倒していったのだ。
この怒りはきっと、今みたいに家で簡単に映画に触れられないから生じたものだと思う。

当時映画を観ようとすると、わざわざ店へ出向き、DVDを借りるか、映画館に行くしかない。
レンタルで一枚200円、延滞すると一日300円程度取られてしまう。映画館は割引の時を利用すれば1000円で観られるが、今のような豪華設備でなく、画質の悪い、ただ画面と音が大きいだけの映画館ばかりだった。
大人ならいざしらず、デフレ期の学生にとってこれらの価格帯はかなりハードルが高い

にもかかわらず、シナリオも演出も俳優(大抵後悔するのはグラドルやアイドル参加作品だ)ありきの邦画にあたると時間もお金も無駄になるわけだ。
そりゃ、観るわけがない
それでも、2000年代初頭の邦画はまだ作品としての体をなしていたものが多かったと今では思える。

今?いや、もう観てないからよくわからんよ。
漫画原作に頼りすぎなんじゃない?知らんけど

世紀末から新世紀へ

西暦2000年を迎えた時のことをぼんやり覚えている。
あれは確か、祖母の家近くにある観覧車を見上げていたのだ。

人は案外まばらで(年越し会場が遠くの方でざわついていた)中古の重たいコートを着せられ、布は分厚いのにそのコートが大きいものだから風が吹き込んで寒かった
年越しの直前、両親はやけにテンションが上がっていて年明けを迎えられることを互いに祝っていたはずだ。

が、その直後言い合い(若い頃の二人と出かけるとほとんどの場合このような結末に至る)になって、「2000年になったら色んな電子システムがダウンしてこの辺りも混乱するらしいし、今回の喧嘩はすぐ終わるだろう」と僕はうんざりしながらその時を迎えたと思う。

いつもはデジタル時間が表示されている場所に「2000」と表示されたのに何も起きず、両親は喧嘩したままだった。
僕の中ではノストラダムスの大予言程度の期待感はあったのに。
幼い妹が引き続き両親を取りなす様子を見て、なんて馬鹿らしいと思ったものだ。

新世紀は終わりの始まり?

この映画に出会ったのはそんな、ミレニアムなバカ騒ぎを引きずった2000年代初頭の頃である。

期待して裏切られる。その繰り返しに皆疲弊し始めていた。
長引くデフレと不況に大人も子供も暗かったのに、やっぱりまた期待してしまうような時代だった。

何に期待していたのだろう
西暦が丸ごと変わるってインパクトが大きかったから、そのせいで漠然とした期待感が全然終わらなかっただけな気もする。

それでも強いて具体例を挙げるとすれば、きっとデジタル化で急速に便利になる未来への期待だったんじゃないかな。
子どもだった僕の気持ちしか分からないけれど、「遠くとつながる」ことが想像しやすくなった時代だった。

僕は初めてパソコンを買ってもらって、自分でインターネットを整備した(新しい物好きな両親がモデムを貰ってきたのに一向に設定してくれなかったことに業を煮やした結果である)。
インターネットエクスプローラーで初めてヤフーのページをロードした時すごく時間がかかって、でもその待つ間ワクワクしたことを覚えている。

スマホってすげえ

それを支える通信技術もすげえ。
画像すら読み込むのに10分以上かかったのに、スクリプト埋め込みのサイトなんて有り得なかった。

色んなものが足を揃えて進化した結果、気軽にコンテンツを楽しめるようになった。
こうなると作品の「消費」が加速していって、質が下がってしまうのも収益を手堅く取ろうとするのも、仕方ないのかもしれない。

まあ、「昔はよかった」というよりは「昔もよかった」って感じがする。
昔はホロライブがないどころか、YouTubeすらない。
選択肢がテレビくらいしかなかったから、絶対今の方がいい
「消費」が加速するからこそ、他の時代にはないコンテンツを楽しめると僕は思う。

ちなみにこの映画、スマホで観た。
初見の時のように、プレステ2の電源を入れ、立ち上げをしばし待ち、DVDを入れて、読み込みを待ち、チャプター画面が表示されたら再生ボタンを押す。
などのステップを踏まず、指でタップしたら再生された。

やっぱりスマホすげえ。


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