読了!石田衣良「池袋ウエストゲートパークⅪ,憎悪のパレード」
《粗筋》
IWGP第2シーズン、満を持してスタート!
ストリートの“今”を切り取り続けてきた本シリーズ。時を経て池袋は少しずつ変容しているが、あの男たちは変わらない。脱法ドラッグ、仮想通貨、ヘイトスピーチ。次々に火を噴くトラブルをめぐり、マコトやタカシ、そしてとびきりクールな仲間が躍動する。IWGPシリーズ第11弾!
《感想》
石田衣良は時代に切り込んでいく。彼もマコト同様、ネタを必死で探してるのかも。でもそれが衣良先生のスタイルか(笑)
1巻から読み進めて、巻が進むにつれて、最近の時事問題になってきて、どんどん親近感が湧いていく。最近の時事問題だからこそ考えやすい気がする。何言ってるか分からないって人は引用見てみて!
あーーー寂しいな〜。
戦争は減ったけど、それでも俺らは平和に生きられないのかな。みんな仲良くなんて、甘ったれたこと言ってたらおいてかれちゃうのかも…俺はリンもアインもフエンも大好きなのに…
あの手のビジネス書もどきの内容の薄さは、最新型ポリウレタン製コンドーム(0.02m!)も真っ青で、はなから勝負にならない。おれの圧勝だ。(P142)
これはマジで勝てないなと思った(笑)
衣良先生とマコトの圧勝。
《引用》
この数年で政権交代が二度ばかりあったけど、世のなかはまるで変わらなかった。増えるのは国の借金と電気料金、減るのは子どもと正規職と給料ばかり。(P9)
「化学者は60年代にTHCの化学合成に成功した。クラシカル·カンナビノイドだヘブライ大学のHU210やナビロンなどだな。それから三十年後、アメリカのホフマン博士がつぎつぎと新しいカンナビノイドを合成した。自分の名前にちなんでJWHシリーズと命名した。最初の脱法ハーブに使用されていたのは、IWH018だ」(P29)
世界一のギャンブル天国がどこかといえば、察しのいいあんたなら、すぐわかるよな。正解はもちろん、わがニッポンだ。馬とボートと自転車とバイク。お墨つきの公営ギャンブルが四種類に、パチンコ。(P72)
場所にも時間にも縛られない自由な働きかたなんていわれてるけど、実際にはそんなのひとにぎりだ。創造性なんて必要ないデジタルのフリーターだよ。労働条件はよくないし、将来の保障もない。みんな個人事業だから、「一発あてる」とか、「夢の印税生活」なんていう人が多いよ。でも実際にはなかなかね…(P140)
言葉はときに命を救う薬になり、ときに命を奪うナイフになる。おれは思うんだけど、デフレで物価がさがり不景気になるほど、言葉の価値はインフレを起こして空っぽになるよな。牛井が三百円以下でくえるようになったと思うと、池袋では「死ね!」「殺せ!」の大盤振る舞い。なんとも殺伐とした空気が漂っている。虚ろで安い言葉ほど激しくなるものだ。無記名のネットで書き散らす言葉を、生身の人間が生きてる世界に持ち込むものじゃない。(P202)
出身国や民族といった、その人間の個性ではなく、属性だけで無条件に憎む。おれたちはそこまで追いつめられていたのだ。(P211)
おれは闘う相手が ストリートギャングやストーカーや違法薬物だったころがなつかしかった。あのころ問題は単純だった。今ではばらばらに砕け散った愛のなかから憎悪だけ慎重につまみあげなければならない。(P211)
タカシの温度が急速にさがっていく。集中したときのやつの癖だ。勝負になると熱くなるのでなく、逆に極端なほど冷めていく。そういう相手と闘うときは、あんたも注意したほうがいい。(P276)
格差はどんどん広がり、自分の身を守るのに精いっぱい。数字をあげられない者は、努力不足だとか愚か者と罵られる。おれには格差社会というのは、自分より下の人間にはどんなにひどいことをしてもいい社会に見える。生活保護を受けている人間、在日の中国人や韓国人、非正規雇用のワーカーたち。ネットを開くと憎しみの言葉が泥の奔流のようにあふれだしてくる。(P288)
(2021/6/9)