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面白いという「現象」を解説したい 日向日影のゲームレビュー法・実例を添えて
はじめに・謝辞
私はnoteにゲームレビューを書いています。おかげさまで多くの方に読んでいただいていて、ありがたい限りです。
、今回は評を書くときにどんなことを考えているのか、あるいはゲームレビューで何をしたいのか、そのためにどのような方法をとっているのかを語ってみたいと思います!
また、作者様の許可を得てGigabit Million様制作の「おもいをつたえるプログラム」を実例として挙げさせていただきます!普段のレビューでは序盤のみのスクリーンショットやネタバレを掲載することにしているのですが、今回は中盤ぐらいまでネタバレをさせていただきます。改めてGigabit Million様、快諾していただきありがとうございました!!
先に結論から言うと「おもいをつたえるプログラム」は「名作」ですので、ぜひプレイした上でこの後の内容をお読みいただければと思います。
面白いという「現象」
ゲームって面白いじゃないですか。
いや、面白くないゲームとか面白さ以外の魅力のあるゲームもありますけど、それを言い出すと話が進まないのでここではゲームは面白いということでお願いします。
さて、「ゲームが面白い」というのは正確な表現ではありません。実際にはゲームをプレイして、プレイヤーの内面に「面白い」という感情が生まれるという「現象」が起こると言えるでしょう。
また、ゲームにはゲーム性、グラフィック、BGM、ストーリーなど色々な要素がありますが、ゲームは総合芸術的な表現ですから、ほとんどの場合ではそれをぶつぎりに受けるのではなく、総体としての「ゲームプレイ」を受けて「面白い」と感じることになります。
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「面白いゲーム」「よいゲーム」とは、この「現象」を起こしやすい作品と言えると考えています。
私がゲームを語る時、あるいは小説や映画でもそうなのですが、ゲームのどの要素とどの要素が相まってこの「現象」を引き起こしているのか、あるいはそれを起こすために作者がどのような工夫をしているのかを自分なりに考えて(おそらく私の勘違いや誤解も多聞に含まれるのでしょうが)言語化するということを心がけています。それによって、
・単純に面白いという以上に読者に作品に興味を持ってもらいやすいのではないか
・私自身がより作品への理解を深めることができる
・文章としても面白がってもらうことで他のレビューも読んでもらう
・読者が作品を楽しむ方法の一つとして参考にしてもらう
などの効果があればいいなと考えています。
これは、スポーツの解説者に近いと言えるかもしれません。試合を見ていて、なぜこちらのチームが今優勢なのか、その背景には個人や戦術などでどのような「現象」が起きているのかを言語化し解説してくれる、そのような人たちと同じようなことをしたいんだろうなと思うことがよくあります。
実際にどう考えているか、実例を踏まえて
では、ここから実際にどんな過程で考えているのか、その一例を前述した「おもいをつたえるプログラム」を例に説明していこうと思います!この先ネタバレが含まれますので、ぜひプレイしてから読んでいただけると嬉しいです!
1:探す、事前情報を入れる
当たり前ですが、ゲームでも映画でもなんでも知らなければ触れることはできません。
「おもいをつたえるプログラム」の場合は、ノベルゲームコレクションのトップ画面やランキングに掲載されていることをきっかけに知りました。
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ランキング上位に入っていたりと非常に評判なようだったのでプレイすることに決めました。
余談ですがこう考えると口コミや評って大事ですよね。私の評を読んでゲームをプレイした人ってどれくらいいるでしょうかとちょっと考えたりもしました(たまにそういうお話はいただいて、本当にありがたいなと思います)
なお、今作に関しては配信や動画での実況をしなかったのですが、それは今がティラノゲームフェス2022の開催中であり、配信外でも多くの作品をプレイしたいと思っている期間だったというのが大きいです。
プレイするにあたって事前情報は概要欄に書いてある以外のことはできるだけ読まないようにしています。やはりフレッシュな気持ちでプレイしたいのもあり、概要欄も流し読みの方が多いです。なのでたまに登場人物の読みを悩んだりするのが考え者ですね。ただ、実況をする際には実況に関するガイドラインは一字一句正確に読むようにしています。
「おもいをつたえるプログラム」の概要欄を読んだ時はやはり
最初に選択肢をぜんぶ選んで、あとはひたすら読み進める形式
という一文が強く目に入り、「プログラム的な発想ってことなのかな」と思ったのを覚えています。
なお今後の文章の理解のため作品のあらすじをこちらに転載しておきます。
自分の作ったAIが恋を教えにやってきた!
果たして主人公の高校生は無事に意中の人に想いを伝えることはできるのでしょうか!
最初に選択肢をぜんぶ選んで、あとはひたすら読み進める形式のノベルゲームです。
ラストステージのエンディングは2種類です!
2:遊ぶ
遊びます。
殆どの場合で最初から「レビューを書いてやろう」と思って遊ぶことはありません(前作をレビューしている方の続編とかであればそういうこともあります)とりあえず楽しむことを重視して遊びます。強いて言えば「無理に落ち度や瑕疵を探そうとせず積極的に楽しもうとする、作者と対話するつもりでやる」ということは意識しています。
レビューを書く方法というよりは私なりのゲームの楽しみ方としてプレイしながらの感想の言語化や分析的なことは自然に行っています。
3:「現象」を抱く
ゲームプレイ中に直感的に抱いた感情は大切にします。それが前述している「現象」にあたると考えています。
今回の場合主に2つの気持ちを抱いていました。
・先に選択肢を選ぶというシステムが面白い
・ピアがかわいい
・選択肢を選ぶシステム
おそらく今作最大の特徴ですが、プレイしてみて思った以上によくできたシステムだなぁと感心していました。
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最初に選択肢を決めてから展開を見守るという形式ゆえ、展開を理解した瞬間「もう絶対失敗だろこんなの」と理解した上で、約束された失敗を見守るという体験は独特のものでしたし、バッドエンドもコミカルになっているので過度に重くならず楽しむことができました。
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・ピアがかわいい
プレイ中ほとんど全ての方が感じることだと思いますが、ピアを終始かわいく感じました。単純に見た目がかわいいだけでなく、細かく主人公を誉めてくる言葉、3Dモデルであることを活かした様々な表情やポーズ、アングルなど、とにかくピアがかわいく見えるようにこのゲームが作られている様に感じました。
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4:なんとなく言語化する
この二つの感情、つまり私の中に起きた「現象」をもう少し心の中で言語化していきます。
その際に軸として考えているのは
この「現象」が起きるようにどのような工夫があるのか?
この「現象」によってどのような面白さが生まれているのか?
という二つです。
ここでは例として、「ピアがかわいい」という「現象」について、
なぜこんなにピアをかわいく感じるのか?
ピアがかわいいということがこの作品をどう面白くしているのか?
という、二点を考えてみようと思います。理由としては前者の独特なシステムも「ピアがかわいい」という感情の想起に大きく役割を果たしているからです。
・なぜこんなにピアをかわいく感じるのか?
勿論見た目がシンプルにかわいいというのもありますが、今作を遊んでいるとそれ以上のかわいさを感じるでしょう。
前述のとおり、3Dモデルであることを活かして、ピアをとにかく表情、ポーズ豊かに描いているということが大きいでしょう。また、この作品の特徴である先に選択肢を選ぶことで失敗する姿をコミカルに描くというシステムもピアのかわいさを引き立てていると感じられます。失敗に対してピアが取るリアクションも非常にかわいらしいのです。
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総じて、言い直しになりますがゲームの多くの部分がピアをかわいく、愛しく感じさせるように作られていると感じました。
・ピアがかわいいということがこの作品をどう面白くしているのか?
まず当然のことですが、キャラクターをかわいいと思える、好感を抱ければそれ自体が作品の魅力になります。特にこのような短編作品であればキャラクターの魅力、その一点で十分で作品として成り立つでしょう。実際「おもいをつたえるプログラム」はそのかわいさだけで十分に評価される作品でしょう。
しかし、今作ではプレイしているうちにもう一つ、別の感情が浮かんできました。
あらすじにもあったようにピアは主人公が意中の人への告白を成功させるお手伝いをするというのが役割となっています。
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しかし、練習の時期にはその意中の人物が出てこないことも含め、ピアと関わっているうちにプレイヤーの中には当然ある「葛藤」が生まれることになります。またピアも同質の「葛藤」を抱いていきます。「葛藤」とはドラマにとっても重要なもので、今作はここに豊かなストーリーが生まれてきます。このプレイヤーの中に起きる「葛藤」を極大化するためにもピアのかわいさが存分に発揮されています。そしてその「葛藤」がどのような結末を迎えるのかも含めて、ピアの驚くほどのかわいさがストーリー的にも大きな意味を持っているということがわかってきます。作者様がかなり丁寧にプレイヤーの感情の起伏を考えながら作っているなぁと感心しますし、まさにそこが多くのプレイヤーに刺さっていると思います。
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マリオやゼルダを作った伝説のゲームクリエイターである宮本茂さんの名言として、
「アイデアというのは 複数の問題を一気に解決するものである」
というものがあります。
今作品のピアという存在はまさに複数の問題を解決するアイデアであると言えるよな、みたいなことも考えました。
5:もう一度プレイする
よほどの長編でなければ実際に書く前にもう一度プレイします。
その際にすることは、
・通過していない別エンディングがあれば通過
・最後までプレイしたからわかる前半の伏線の確認
・スクショ撮影
などがあります。そういうことをしながら、少しずつ文章の構成を考えていきます。
特にスクショ撮影は大事で、スクショを撮っているうちに「こういうスクショを撮りなくなるということは、この作品にはこういう魅力があるんじゃ…」などと考えを深めるきっかけになります。
「おもいをつたえるプログラム」の場合、見てわかる通りスクショがピアで埋まります!つまりそういうことです。
6:一語で作品を表す
作品を可能なら一単語、少なくても一言で表すようにしています。
「おもいをつたえるプログラム」については、
「名作」
という単語が私の中でしっくり来ます。なのでこの文章の序盤でも使用しています。
これは今作が端正な作りであることと、ギャグやパロディを散りばめながら品があること、あと、ある名作からの引用が複数あり、きっと参考にしているのだろうななどの想像から自然に出てきた単語になります。
実はこの過程は私的にはかなり大事で、ちゃんと決めなかったレビューの中には「ちょっと評の練り方が甘かったかな…、もう少し書けたかな…」と思っているものもあるので、最近はだいたいどの作品でも評を書いたものについては明確につけています。
7:文章にする
noteのエディタを起動して直接書いていきます。下書き用のテキストエディタなどは使いません。その手間が文章を書く手を止めることを避けるためです。
形式のテンプレートはわりとかっちり決めていて、
・あらすじ
(公式サイトからあらすじ持ってきて引用にする)
・ゲーム内容
(ネタバレにならない範囲でおおよそのゲームプレイについて)
・おすすめポイント①
・おすすめポイント②
・おすすめポイント③
・こんな人にお薦め!
(3つお薦めのタイプを書いて引用)
(ゲームのリンク、プラットフォーム複数あるならできるだけ貼る)
(プレイ時間とプレイ環境、RTPの話や注意点があればそれも描いて引用)
・あとがき
(ちょっとした一言)
・おまけ
(自分の配信か、ネタバレが必要な説明があれば)
という形式にしています。
今作について、今は全文を書くということはしませんが、おすすめポイントだけどう書くかを考えてみると
おすすめポイント①失敗を楽しめる独特のシステム
おすすめポイント②びっくりするほどかわいく愛おしいピアの存在
おすすめポイント③端正で、こちらの思いを受け止めそれを超えていくストーリーテリング
あたりになるでしょうか…ちょっと③がネタバレ気味かな…?
おわりに
今回、私自身もこうやって方法論を整理することで見えてきたことがかなりありました!皆さんも楽しんでいただけたなら何よりです。
改めて、本記事で作品を例として引用することを快諾してくださった「おもいをつたえるプログラム」の作者であるGigabit Million様に感謝を申し上げると同時に、作者様の次作はぜひちゃんと評を書いてみたいなと思っています。
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