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「キングオージャー」5話に見える体制側に結局は逆らえない「ヒーローの振りした道化」の哀れさ

「キングオージャー」5話までを見て「やっぱり所詮はこの程度だったか」というのが正直な感想である、私の予感は的中していたようだ。
大森Pをはじめ、脚本家の高野水登も監督たちもやっていることは「なんちゃってアンチ王道」でしかないのだなと思えてならない。
スーパー戦隊シリーズもとうとうここまで堕ちたかと思うものだが、まあそもそも2001年の「ガオレンジャー」の時点で魂をスポンサーに売り渡していたしなあ。
ギラが今回無実であっさり釈放される流れを見て得られる教訓は「人間は結局誰しもが権威に弱い」ということではないだろうか。

1話であんなにも悲壮な覚悟を決めて反逆者=悪党になるという展開を描いたにも関わらず、舌の根も乾かぬうちに無実を証明してあっさり国王から認められる。
最初からこの結末に持っていくのであれば今までの話が単なる茶番でしかなかったことになるし、ギラ自身も結局ヒーローの振りした哀れな道化ということにならないか。
第一なぜシュゴッダムで起こった問題に他国の連中が絡んでギラが売り渡されたり、他国の民が真実を暴き出す展開を描かねばならんのか?
脚本家はそもそも「治外法権」を知らないのかと思うし、何よりギラ自身が今まで無実を晴らすため主体的に行動したような痕跡もそぶりもない。

思わせぶりなシリアスめいた展開を振っておいて雑に解決するというのは駄作によくある手口だが(大体同人作家に多い)、本作も例外ではなかった。
一見体制側に逆らう反体制側と見せておきながら、権力側が自分に味方するや否や掌返しであっさり味方化するという最悪の展開は子供騙しですらない。
今の子供たちは「結局権力に逆らえないうだつの上がらない若きはだかの王様たちの物語」なんか見て本当にかっこいいと思うのか?
つくづく、真っ当に物を考えることがない人間としての情緒や論理というものが欠落した者たちが作るものがこれかと今年も落胆している。

そういえばつい昨日だったかな、「シン・仮面ライダー」で仮面ライダーが公安ら体制側についたことでやたらと騒ぎ立てたファンをTwitterで見かけたが、あれも滑稽である。
政治のことなんて勉強すらしていないくせに、ヒーロー作品で描かれている体制と反体制の問題についてしたり顔で語っているのを見ると、「これが意識高い系か」なんて思えてしまう。
そして「キングオージャー」に出てくる5人の王様たちも正にその「意識高い系」であり、一見反体制側のようでも奥底ではギラみたいに体制側の手先になることを望んでいる。
それが右翼に端を発しようが左翼に端を発しようが、「どうせ世の中は変わらない」という強烈な諦観がスーパー戦隊シリーズにもあることを本作は証明してしまった。

そもそも「キングオージャー」はそれ以前の問題として、なぜ地下帝国を倒すためにわざわざ5つの国の者達が国境を超えて徒党を組んで戦わなければならんのか?
今までを見ているとどうもその至極当たり前の前提が描けておらず、むしろ敵側は狭い地下テントみたいなところで作戦会議をしているらしい。
どう考えても逆だろう、敵側が強大に踏ん反り返っていて、ヒーロー側が背水の陣で戦うからこそヒーロー作品とは面白くなるんじゃないのか?
そこを本作では逆手に取って、どうせ後半になって「俺は国の民達を守る!」だの言わせるつもりだろう。

何れにしても、今年のスーパー戦隊シリーズもピカレスクロマン風を装っておきながら、いざという時には主人公を体制側につけて人を守るために戦わせるつもりだ。
しかしそれは作り手が真剣に「ヒーローとは何か?」に向き合った結果ではないから、所詮上辺だけで役者の演技も演出力も追いついていなくて薄っぺらいハリボテにしかなっていない。
例えば「タイムレンジャー」のように既存のレールから大きく逸脱した作品は描きたくない、さりとて「ギンガマン」のように従来のシリーズが提唱してきた王道的なテーマと格闘する作品にもしたくない。
そんな意識の低さなんて長年ファンをやっている私のような人間には一発でわかってしまう、それで公式サイトを見るといかに自分たちが大掛かりなセットで撮影しているかの自慢話ばかり

シュゴッダムにつづいてンコソパの国のアセットを制作してくれたのは、Chengdu Black Flame LinkageTechnologyの皆さんです。こちらの要望に対してかなり早いスピードで、しかも想像を超えるクオリティで毎回上げてくださるプロフェッショナルチームです。

そんなしょうもない身内自慢をする暇があったら、それ以前にやるべきことがあるのではないか?
まあ何れにしてもこの5話までで見えたのは、作り手が改めて子供向けの特撮番組を舐めているということだ。
ギラのような「ヒーローの振りした道化」に憧れることは決してないであろう。

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