青学の3人の天才はどのようにして球の回転を操っているのか?

今回は「球の回転」についてですが、テニプリでは一貫して「球の回転」を如何にして操るかが話題になっていますが、私は決して物理学専攻ではありません。
そのため細かい理屈はわかりませんが、青学の3人の天才である越前リョーマ・手塚国光・不二周助の球の回転について説明します。
3人がなぜ青学の中でも天才と言われているかというとセンスやテクニックに優れているのは勿論ですが、何より「球の回転」を自由自在に操れるからです。
ただし回転の操り方は各自で違っており、また「力の使い方」なども併せて考察・解説していきますので、今回は若干乾っぽい解説になるかもしれません。

テニスボールと空気抵抗

まず球の回転を考察していく上で避けられないのは「そもそもテニスボールにはどんな力が働いているのか?」ですが、主な要素は以下の4つです。

  1. 重力

  2. 空気抵抗

  3. ボールの回転の種類(トップスピン・スライス・フラット)

基本的にこの4つで決まってくるものですが、特に大事なのは空気抵抗力とボールの回転の種類が物をいうところなのかなあと思います。
重力はまあ大前提なので今回は取り扱わないものとして、ボールの回転の種類は作中でも割と重要な要素なので、知らない方のために改めて解説していきましょう。
テニスの球は基本的にトップスピン・スライス・フラットの3種類であり、わかりやすい例は不二の「つばめ返し」や石田・河村の「波動球」がそうですね。
つばめ返しはトップスピンを超スライス回転で返す技であり、石田・河村の「波動球」はフラットショットであり、越前のドライブ系ショットはいわゆるトップスピンかと思います。

そして空気抵抗ですが、これがテニスボールの球の回転では一番の肝であり、空気抵抗は主にボールの密度・空気の密度・抗力係数辺りで変わってくるとのこと。
これらの原理原則を用いて上手に独自の回転を生み出せるから越前・手塚・不二の3人は「天才」といえるのですが、球の回転の生み出し方や描かれ方は違います。
パワー・テクニック・スピードなど様々な要素が付加されて各自のプレイスタイルが生み出されているため、表面上の数値だけでは分かりにくいものです。
ここでは劇中の描写から彼らがどのようにして球の回転を操っているのかを分析して見ましょう。

越前リョーマの場合


主人公である越前リョーマはトップスピン・スライス・フラットのいずれも完璧に使いこなす技術を持ち合わせた天才少年です。
代表技のドライブ系ショット(ドライブA・ドライブB・ドライブC・COOLドライブ・サムライドライブ)からツイストサーブ、更には手塚が使っていた零式まで使えます。
実は手塚がドイツ戦のS2で使っていた零式ロブ(跳ねずにコートinするロブ)を越前は既に旧作の最初の方で佐々部を相手に使っているのです。
不二との試合でも百腕巨人の門番を二乗の超回転の逆回転を使ったカウンターを行うなど、判断力や機転にも優れていて隙がありそうでありません。

なぜここまで多種多様な技を操ることができているのかといえば、プロの南次郎に幼少期から鍛えられていてテニスに特化した体作りができているからです。
氷帝戦前の実家のテニスコートでの練習風景で「そのショットはまだ無理だ」と言われているシーンがありますが、越前リョーマの強さの秘訣はこの「指導者ガチャ」にあります。
新テニでも三船コーチ・平等院・リョーガ・ラインハルトなど最適なタイミングで越前に技術を指南してくれる人物が現れ、その人のおかげで伸びているのです。
因みに画像のシーンはおそらく「COOLドライブ」の練習シーンだと思われますが、プロや専門家から直々に指導を仰いでいるというのが大きな強さの根拠となっています。

そんな越前のパラメーターはスピード4・パワー3・スタミナ4・テクニック5・メンタル5となっていますが、これを見てもわかる通り弱点と呼べるものがありません
唯一パワーが弱点と言えそうですが、真田戦や田仁志戦を見れば分かるようにパワーショットにもしっかり対応しているため、あとは肉体の成長が追いつけばもっとパワーは上がるでしょう。
しかもこれだけ完成度が高いにもかかわらず伸び代がまだまだありますが、いわゆる「テニス肘」「テニス膝」のような「肉体の故障」とは無縁です。
それは自身のプレイスタイルをきちんと俯瞰で見れているのもそうですが、きちんとプロの南次郎から指導を受けており、自己流でやっていないのが大きいかと思われます。

「新テニ」ではパワー系ショットの最上級である光る打球も身につけていますが、単に操ることができるだけではなくそれを実線で使えるレベルに昇華することも含めての「天才」です。
また、最初の荒井との試合でも描かれていましたが、ボロラケットでも体のバネを使って凄まじいスピードとパワーを生み出しており、まさに「弘法は筆を選ばず」を体現しています。
パワー3であれだけの強烈な回転のショットを肉体の故障なしで使いこなせているのは流石の主人公力ですが、分析してみるとやはり「攻め」のテニスが強いようです。
特にCOOLドライブは越前版「つばめ返し」ですが、つばめと違うのはノーバウンドで打ち返しても球がイレギュラーバウンドで顔面めがけて跳ね上がるところにあります。

おそらく空気抵抗も含めて「どうすれば自分の肉体で安定した最大のショットを打てるか?」を日々研究しており、それが越前の球の回転の秘訣ではないでしょうか。

手塚国光の場合


越前リョーマを唯一草試合で負かした手塚国光の球の回転は基本的に「守り」のテニスであり、どんな打球でも自分のところに返ってくるようにする手塚ゾーンがベースにあります。
手塚はおそらく球の回転を操ることそのものよりそれをどうゲームメイクに活かすか?というところまで含めて考え、徹底的に無駄を省いて構成されているようです。
アニメオリジナルのJr.選抜で大石が「手塚のプレイを見ていると、テニスは強力なショットを打つことが目的の競技ではないと思い知らされる」と言っていました。
そしてすかさず越前が「対戦相手のコートに一球でも多くボールを入れること」がテニスの目的と述べていて、手塚のテニスはこの原理原則に従って必要なものだけがあるのです。

それが「守り」の手塚ゾーン「攻め」の百錬自得の極み、そして「決め技」の零式ショットであり、この3種類の基礎が完成しているため越前とはプレイスタイルも発想も異なります。
立海ビッグ3ですら一目置いている手塚ですが、プレイスタイルそのものは決して派手ではなくむしろ地味であり、幸村や白石のような「基本に忠実であるが故の完璧テニス」の系譜でしょう。
幸村がどんな打球も普通に返すマジレステニスからのイップス、そして白石が教科書テニスを昇華させた聖書テニスですが、その究極の完成形が手塚のテニスかもしれません。
なので手塚が天才たる所以は「球の回転を操れること」ではなく「球の回転を操ってうまくゲームメイクをすること」にあり、しかもそのコントロールが終盤でも崩れないのです。

跡部様でさえ「極限の状況でこれだけ高度なプレイができる選手が一体何人いる?」と言っており、その前にも「さすが手塚部長、終盤に来てもあのコントロール」とありました。
だから手塚の恐ろしさはこの「制球力」にあるといえますが、反面その弱点は乾が指摘するように「柔軟性」に欠け新たなプレイスタイルを試そうという気概がなかったことです。
また、旧作ではしょっちゅう左肩や左肘を痛めており、「肉体の使いこなし方」にも問題があったため相当に精神と肉体のバランスが悪かったのではないでしょうか。
跡部戦も真田戦も負けたのは球の回転に肉体が追いつかなかったことですが、じゃあなぜこうなったのかと言うとほぼ独学による自己流でやっていたからでした。

亜久津の記事でも述べましたが、テニプリにおいて独学・自己流でやる人は天才肌に多いのですが、越前と違ってハラハラする理由は正にここでしょう。
越前は上記したように南次郎をはじめ様々な技術指南や体づくりの方法をプロのコーチや指導者から仰いでおり、幼少期からテニスに特化した肉体と精神を作り上げています。
手塚はこの点精神面に置いては間違いなく最強ですが、手塚ファントムで左肘を壊しそうになるなど体作りにおいてはきちんと指導してくれる人に恵まれなかったのでしょう。
この問題に関しては新テニでドイツに行きボルクに師事することによって解決され、VS幸村戦ではゾーンとファントムを一体化させたアルティメットゾーンを生み出すことに成功したのです。

球の回転そのものではなく、それも含めてテニスの原理原則に忠実な完璧テニスこそが手塚の強さの秘訣ではないでしょうか。

不二周助の場合


青学No.2の不二周助は越前・手塚のどちらとも違う独自のプレイスタイルを生み出しており、それが「カウンター」「風の攻撃技」ですが、どちらも「球の回転」が重要視されます。
まず「カウンター」は上記した力の中で「球の回転の種類」と「風」が重要なキーワードであり、自然の力を利用して巧みに操ることができる、正に魔法使いや猟師のようなセンスが不二にはあるのです。
この中で「白鯨(と白龍)」は強力な追い風が出てこないと打てないという難点がありますし、またツバメ返しは相手のトップスピン、そして羆落としは強力なスマッシュが必要になります。
不二のカウンターは相手合わせで発動するからこそ、相手が一定ラインの強さに達していないと不二の本気のテニスは見ることができないというのが難点です、ムラっ気があるんですね。

それは「風の攻撃技」も同じことであり、葵吹雪も光風も、そして狐火球も確かに攻撃ではあるのですが、それもやはり相手の能力や強さに合わせて発動するようにできています。
例えば葵吹雪はスマッシュをスマッシュで返す技ですし、光風は相手が超スピードの打球を繰り出したり天衣無縫を使われたりした時の反応速度を極限まで高めるものです。
不二のテニススタイルは越前や手塚と違って、球の回転数を常に相手に依存しており、また基本的に風が自分に味方しなければ使いこなせないという難点があります。
はっきり言って上級者向けの戦い方であり、テニスの原理原則を突き詰めた無駄のない手塚のテニスやプロ直伝の英才教育で作られた越前のテニスとは趣を異にしているのです。

ただしこのスタイルには大きな弱点が2つあって、まず1つ目が不動峰の石田が指摘していたように不二がパワー不足であるということであり、同じ越前のパワー3とは意味合いが違います。
越前の場合は小学生上がりの未熟な骨格と体格であれだけのパワーが生み出せているのが凄いのであって、肉体が成長すればもっとパワーが上がって安定感も増すでしょう。
しかし不二はもう中3でパワー不足を本人のテクニックに依存していますから、パワー系ショットに対して「柔よく剛を制す」ことで難を逃れている感じです。
そのためパワー系のプレイヤーと当たってしまうとどうしてもその弱点が露呈してしまい、実際に白石戦では羆落としを強力なスマッシュで破られていました。

そして2つ目の弱点は「風」であり、風が味方してくれるときはうまく行きますが、その風が不二に反旗をひるがえすことになるとうまくいかなくなります。
例えば狐火球はわずかな空気で動くため触れることが不可能な打球である反面、強力な風でアウトになってしまうという大博打も良いところな技です。
また、星花火はすり鉢状のコートじゃないと威力を発揮できない、蜉蝣包みは雨のスリップで返すことができるという天候にも左右されてしまいます。
自然と一体の不二のゲームメイク・テクニックは素晴らしいのですが、それは自身のパワー不足を悟られないようにするための諸刃の剣でもあるのです。

不二の強さの秘訣は球の回転そのものより「相手の打球の回転」と「風」を活用し己のハンデをうまく補っているところにあるのではないでしょうか。


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