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「音の鳴る街でみた彼女」コラムエッセイ #7

ある街で女性を見かけた。白髪混じりの、というかほぼ白髪の小柄なおばあちゃん。洗髪をしている気配はなく、季節に合わない、ボロボロの衣服。おそらくホームレスなんだろう。

そんな彼女は推測するに帰る家はなく、一年中外にいることが前提なような気がした。肌は夏場の浜辺に生息するサーファーやオーガニックな生活を好む女性よりも黒く、しかも健康的ではない黒さ。

そんな人柄の彼女は何やら沢山の荷物を持っていた。

それはペットボトルや、空き缶が大量に入った袋。1袋がものすごい質量なのに、それを4.5個抱えてカートを引いていた。

カートと言っても配達員の方が使うような押してモノを運ぶようなものではない。ただのバカでかい入れ物に、モノが積まれている。ではそれをどう運ぶか。

黒と黄色で紡がれた紐をカート巻き付けて、前後左右に動いていくというわけだ。

それをみた僕はこうまでしないと生きていけない世の中なんだと痛感した。まるで発展途上国に生きる子どもたちがやっていることじゃないかと。

そしてそれをただ見過ごし、自分の想いを書くことしかできない自分が不甲斐なく思えてしまった。

彼女はどうして今の生活をしているのだろう。
何がきっかけでそうなってしまったのだろう。

推測できる材料はある気がするが、本当のところは彼女にしかわからない。もしわかったとしても、わかってあげられない。そんなもどかしさ。

僕は人を心配できるような立場でもないし、そんな心の余裕もないから、何もできない現実にちょっとだけ不満を抱きました。

だからといって日本の情勢がどうとか、政治とか、そういうものに口出ししようとはまったく思わないけど、少しずつでもいい方向に進むように、手を取り合っていける未来がくればいいな、と国民の1人として感じた。

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