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幸運の燕 ─アマツバメのエアレース─


5月8日。
今年はじめてツバメを観た日です。
日本にも欧州にもツバメはいるので、春の楽しみの一つとして初ツバメの日を毎年記録しています。

今年も半月型の素早い影を空に見つけて、
わ!ツバメだ!!!
と急いでベランダに出ました。
しかし目を凝らして観ると、全身が茶色い。
加えてピィーッとまっすぐ甲高い鳴き声を出すので、これはツバメじゃないのでは…?と思って調べてみました。
ドイツ語を学習中なので、ドイツ語名でも表記してみます。

私が観た茶色いツバメのような鳥は
【Mauersegler】(マウアーゼグラー)、
和名でヨーロッパアマツバメといいます。
ツバメと名がついていますが厳密には違うものだそうです。でも飛ぶ影はどう見てもツバメ。軽妙にひるがえるあの飛び方もまるっきりツバメそのもの。
あんなに小さな身体のどこにそんな持久力があるのか、成体となって飛び立ったらほとんど地上には降りないんだそうです。食事も空中で虫を捕まえて食べ、滑空中に僅かに眠り、子育て以外の間はずっとずっと飛び続ける…
巣作りをしているらしいところを見かけたことがあるのですが、飛来して目当ての場所で滞空してはまた離れるを繰り返し、確かに羽根を止めることはありませんでした。

何羽ものアマツバメが絡まり合うように凄いスピードで滑空し、垂直に上昇しては時に急降下し、家の壁にぶつかりそうなギリギリまで突っ込んでは鋭くカーブを切るその様は、まるで戦闘機のドッグファイトでも観ているかのようで、興奮が抑えきれず、週末の夕方、空に鳥たちがいなくなるまでずっと観ていました。
予測不能な進行方向、速すぎて目で追いきれなくなりそう。
ベランダに出て観ていると、まるっきりこちらを気にしない勢いで私の眼前まで飛び込んできては目と鼻の先でサッと切り返して飛び去っていき、羽根がまとった空気が顔に当たりそうでした。ここまで言うと冗談のようですが、本当です。あれほどの速度で自由自在に空を駆け抜けられるアマツバメにとって、直立している人間なんて取るに足らないものなのでしょうね。

関東に住んでいた頃、実はエアレース観戦に凄く行きたかったんです。
千葉で開催されたレッドブル・エアレースのチラシをまだ持っています。
観に行きたい!!と思いつつ、都合がつけられなくて一度も観ずに終わってしまいました。

その私がいま自宅で!目の前で繰り広げられる空中戦を観ています…!
なんだかとても感慨深いです。

これからの時季、アマツバメのアクロバット飛行は私の楽しみの一つになりそうです。


ツバメのショーを是非写真でお伝えしたいところなんですが、
速すぎて私の腕では撮れないもので…残念ながらお見せできる画像はこれくらいしかありません。

画像1

画像2


…かろうじて撮れたのがこんな感じ。
これはこれで気に入ってますが、迫力が伝わりませんよね。

代わりに別のツバメたちをご紹介します。

画像3

こちらの写真はアマツバメとは別の種の、
(左)ニシイワツバメ【Mehlschwalbe】(ミェルシュヴァルベ)と、
(中・右)日本でもよく見かける一般的なツバメ【Rauchschwalbe】(ラウフシュヴァルベ)です。
縁あってお手伝いした生物救護施設で以前撮らせて頂いた写真です。
(このツバメたちはのちに無事巣立ち、野生に還りました。)

ニシイワツバメはパッと見でも目に馴染んだ黒いツバメとは見え方が結構異なり、頭が平たくて色もうっすらとアッシュに近いトーンです。
羽根の色が灰茶と青みの混じったなんともいえない絶妙な色合いで、この翼が夏の日差しをはね返すと強く青く輝いて、本当に息を呑む美しさです。

ちなみにドイツ語名のMehlは小麦粉、Rauchは煙を意味するんですが、なぜツバメたちがこの名前になったのかは調べ足りずで解っていません。(ご存知の方がいらっしゃったら是非教えてください!)

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ニシイワツバメとツバメ幼鳥のせなか。
尾の近くまで白が入っているのもニシイワツバメの特徴です。

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奇跡の♡型!

もともとは別々に救助され、衰弱していたところから元気になっていった燕たちがつくったハート型。しかも本来は交流のない別々の種どうしです。それがこんなに仲良くぴったりと…!

燕は古くから家の繁栄や夫婦円満の象徴と言われ、江戸時代には縁起ものとしてツバメ柄が好まれたり、日本だけでなく海外でも幸福のモチーフとして愛されています。

この写真を見てくださった方にも良いことがありますように!


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