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大人がハマる昆虫研究

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40になって知ったディープな昆虫の世界。身近な環境も、視点次第で宝の山に。
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#自然観察

アキノヒメミノガ―身近なミノムシの謎の多い生態―

アキノヒメミノガ―身近なミノムシの謎の多い生態―

はじめにアキノヒメミノガ Bacotia sakabei Seino, 1981という虫がいる。ミノガ科(いわゆるミノムシ類)に属する小型で焦げ茶色の地味な蛾である。ミノムシ類は、幼虫が植物質の材料を綴り合せて作ったポータブルケース(ミノ)を背負って暮らす生態で広く知られている。また、下手に自然度の高い所よりも、人間の居住環境近くの方が多く見られるため、蛾類の中では特に身近な仲間である。その中で、

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アサヒナコマルガムシが生息する高原の湧水帯

アサヒナコマルガムシが生息する高原の湧水帯

妻の実家が長野県央の白樺湖に程近い高原にあるため,帰省の度に現地の昆虫相を調査するようになった。長野県の茅野市と立科町の境界に位置する白樺湖周辺の一帯は,周辺の霧ヶ峰や八ヶ岳連峰の太古の火山活動によって形成された高原となっており,標高1,300~1,700 m程度の範囲で緩やかなに起伏する地形が広範囲に広がっている。この一帯で特徴的なのは,緩やかに起伏する樹林帯の至る所に湧水流があり,林床にミクロ

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コマルガムシ―神出鬼没すぎるその生態―

コマルガムシ―神出鬼没すぎるその生態―

2022年5月中旬のこと、近所の行きつけの相模川で水際の微小ゴミムシ類でも調べようと石を起こしたところ、微小で細長い水生甲虫がゴマ粒のように大量に浮き上がってきて驚いた。

何だこれは?一見してガムシ科だが、見たことがない。ツヤヒラタガムシに形態が似ているが、ツヤヒラタは翅の端部が明るい色に見えるはずだし、これより一回り大きいはず。本種は真っ黒で、体長2 mm弱しかない。調べると、本種はどうやらコ

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コモンシジミガムシとヒメシジミガムシ―最も身近な水生昆虫―

コモンシジミガムシとヒメシジミガムシ―最も身近な水生昆虫―

はじめにコモンシジミガムシとヒメシジミガムシという流水性の水生甲虫がいる。いずれも、開けた河川の河原の水際の石を動かすと、ワラワラと泳ぎだす個体がたくさん出てくるほどで、見つけるのは容易である。個体数の多さとその見つけやすさから、最も身近な水生昆虫といえるが、体長が2.5 mm前後と小さいためか、水生昆虫をやっている人以外では認知度は今一つである。

両種とも外見はよく似ているが、ヒメシジミガムシ

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