見出し画像

#2 日本におけるCovid-19の地域拡散と緊急事態宣言の効果の可視化

Visualization of Covid-19 regional spread and emergency declaration effect in Japan

2021/03/21

1. はじめに

日本におけるCovid-19の流行は1年が経過した。その間、4月下旬をピークとする第1波、8月上旬の第2波、年末年始の第3波が来ており、2回の緊急事態宣言が発令された。報道で示されるグラフは東京都など個別の都道府県内の新規感染者数(陽性者数)等の時系列グラフである。しかし、これだと地理的な拡散状況は把握できない。また地域拡散と地域内部での拡大で分けてみる場合、緊急事態宣言が地域拡散を止める効果があるかどうかはわからない。そこで本稿では県ごとの到達数で地域的な拡散を可視化する。

2.地域拡散モデル 

Covid19が日本に上陸し、神奈川県から全国に拡散した。ここでは県ごと拡散としてモデル化できる。
時刻t=0でN個の県に広がったとする。c(t)は時刻tにおいて新規陽性者が生じた県の数。短時間δtに生まれた県δcは、
               (ⅰ)発生済みの県数 c(t)
               (ⅱ)未発生の県数 N-c(t)   
の2つに比例する。よって、
        δc=kc(N-c)δt  k:正の定数       (1)
が成立する。両辺をδtで割ってδt→0とすると、ロジスティック方程式
        dc/dt=kc(N-c)                                   (2)
が得られる。この微分方程式を解き、神奈川から始まる初期条件c(0)=1とすると、この特殊解は、
        c=(Nexp(kNt))/(N-1+exp⁡(kNt))       (3)
となる。時間経過tと累積コミュニティ数cで図示するとS字型となる。
この拡散モデルの当てはめ曲線をデータとともにグラフ化した。この際、Nは最新の累積の県数に一致する数値を採用し、二乗誤差を最小にするkを探した。このNは当面の頭打ちになる最大の県数と考えることができる。

3.地域拡散
3-1.等累積数線グラフ

2020年1月16日を0日として各県の1人目の陽性者発生までの日数を数える。同様に各県の累積の陽性者数(1、3、5~100人、千人、1万人まで)について日数と県数の推移をグラフ化した。これを等高線ならぬ「等累積数線」と呼ぶことにする。これで地域拡散と緊急事態宣言の効果を可視化する。なお、累積が進むと桁が大きくなるため絶対幅の単純比較はできない。また、形状の変化は小さく見えることに注意が必要である。

以下で3期に分けて詳しくみることにする。なお、本稿は字数の関係で死亡者数のグラフ化は割愛する(別のnoteで)。

画像1

3-2. 緊急事態宣言までの拡散

初期の100日までの等累積数線グラフをみる。陽性者数の1人目、3人目の等累積数線は拡散モデルにフィットしている。80日後(4/5)から急増している。

画像2

3-3.緊急事態宣言後

緊急事態宣言後の陽性者数は、拡散は収まり平坦な形状となった。180日後(7/14)辺りから増加に転じて220日後(8/23)から落ち着いた。200日(8/3)に11県で400人~1000人の線が止まっている収束点が特徴的である。

画像3

3-4.第2期緊急事態宣言まで

陽性者数は、300日後(11/11)頃から増加し始めた。330日後(12/11)から増加が明らかになって年明けに二回目の緊急事態宣言となった。しかし370日後(1/20)まではむしろ増加した。それ以降は緊急事態宣言の効果がある形状に見れない。

画像4

4.地理的距離と拡散時間

県ごとに到達日数と距離の関係をみる。距離は東京からの県庁所在地までの直線距離とした。グラフの県名は3人目のデータで表示した。沖縄は除いている。
陽性者数の図5-1をみると左上のグループは距離のわりに早く到達した県である。北海道、九州などが早い。右下は距離のわりに到着が遅い県である。北関東、福島、富山、静岡などが遅い。

画像5

5. まとめ

等累積数線で地理的な拡散をグラフ化した。

初期の地域拡散は拡散モデルにフィットしている。緊急事態宣言後はその効果で平坦に戻った。7月後半から夏休み中は増加した。その後は落ち着いたが11月後半から明らかに増加が始まった。年末年始の急増を受けて二回目の緊急事態宣言となったが、実際には宣言後も増加した。2月以降は、地域拡散の阻止の効果は見られなくなった。これは感染が国内全域に行き渡ったため県境の移動制限に効果がなくなったからである。

今後は地域内部における相互感染に対策の主眼を移す必要があると考える。ただし、変異ウイルスの地域拡散も起きれば移動制限も効果があるだろう。

このような分析は、行政圏ではなく都市圏のデータが必要である。たとえば東京都と埼玉県を区別することに意味はなく、逆に埼玉県の東京圏と秩父地域をいっしょに考えたり制限を加えるのは無理がある。データも分けて提供してもらいたい。

[利用したデータ]

東洋経済ONLINE 新型コロナウイルス国内感染の状況
https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/
NHK特設サイト新型コロナウイルス感染者数
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/
各県のウェブサイト
 新型コロナ:道内の発生状況 北海道保健福祉部健康安全局              http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/kth/kak/hasseijoukyou.htm
 新型コロナウイルスに感染した患者の発生状況 神奈川県
 https://www.pref.kanagawa.jp/docs/ga4/covid19/occurrence.html

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?