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#19  非代替性トークン(NFT)の可能性と留意点

ここまでのデジタルのコピーの問題、改竄できないブロック・チェーンの話を融合してみましょう。

参照は次のとおり、#6 企業経営における知的財産について~模倣がキー~、#13 ”模倣””コピー”のシソーラス/関連用語を挙げてみた、#16 ブロック・チェーンとビットコインの世界を覗いてみよう!、#17 スマートコントラクトを覗いてみよう

NFT(non-fungible token)はブロック・チェーンの単位です。

英語のfungible(形)”代替性のある”がnon(無い)、だから、”代わりのない””唯一無二”という意味。 

ブロック・チェーンの登場によって念願のデジタル・アート(アート、オーディオ、ビデオなど)のデジタル・ファイルの所有権を証明できるようになりました。

ついに人類は、デジタルアート、ビデオゲームのアイテム、音楽ファイルなどのデジタル創作物も”唯一のモノ”として商品化できるようになったわけです!

NFTオークション市場(KnownOrigin、Rarible、OpenSeaなど)に、ファイルをアップロードすることで作成できます。

2015年イーサリアム(やっぱり)が最初でした。

その後はバブル的な様相です。低金利と投資先探しの中、投機家が仮想通貨から流れてきた模様。

デジタル・アーチストのBeeple(Mike Winkelmann)の「Everydays. The First 5000 Days」 はクリスティーズで2021年に6930万米ドル。

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他にも短時間で100倍で転売した人も出る始末。

ツイッターのジャック・ドーシーの記念すべき最初の投稿が、292万米ドルで落札されています。

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日本では「せきぐちあいみ」さんのVR「Alternate dimension 幻想絢爛」が約1300万円で落札されています(3月25日)。

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次は、萌白(メジロ)さん辺りかな。タブレットで「ibisPaint」というソフトを使って指で書いてる。

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さらに、ファッション、建築はどうかという議論もあります。

ただし、誤解がありそうなので注意点があります。以下にまとめてみます。

(1)ファイル・コピーは所有者に限られない

(2)創作者はどんどん複製でき、基本的に著作権は創作者のままです(別途、譲渡契約が必要)。

(3)よってファイルはデジタルとしてコピーされて再販されます。現物の油絵のようにその”所有者””購入者”だけに留まらないわけです。

つまり、NFTの”購入者”は、独占的なアクセス権を得るわけではなく、最初のオリジナルのデジタルファイルの所有権を得るわけでもないのです。

(4)また、ビットコインのような仮想通貨のように他のトークンと交換できない。そのまま転売するしかない。

(5)アーチスト側への注意としては、アップロードするとき創作者である事の証明は不要なので、勝手にNFTされたアートもあります。

「アーチストのサインに近い」ような説明もありますが、全然違うことがわかります。

何しろデジタル・データなので従来の版画、フォトよりも複製は簡単、コストゼロに近い。木版が古くなったり失われることもないので北斎や写楽にはならない。

マン・レイのオリジナル・プリントやウォーホールのシルクスクリーンにも届かず、現代書籍の初版刷りに謹呈のサイン入りくらいか。初版て元々少ない数から始まって、捨てられたり焼失して供給量が減り、しかもたまたま有名な本として歴史に残る場合に限って希少性が出てそれに価値が出るだけの話だからね。

アートがソフトウェアやハードとのセットになるとすれば、バージョンに指定ってあるのかな?それともデータをいろいろなハードで見たり、ちょっと違った色や音や感覚で感じることも楽しいかもしれないけど、これはちょっと変。今までもそういった事は多少あったかもしれないけど、デジタルデータになるとそれはアーチストから離れすぎだと思う。

もし再生するハード・ソフトが失われてしまったら、永遠に再現はできなくなっちゃう。現に大金のビットコイン取り出せなくなった人もいます。

また、日本の著作権法は「著作権」と「著作者人格権」をおく二元的構成なので、英米法の著作財産権だけの説明を鵜呑みにできません。

なお、大陸法では実定法上の権利(著作財産権、著作者人格権、著作隣接権)の総体とさらに広くなります。

著作権を考えないと。

話はズレるけど、「私の絵」「my picture」と言われたらどう伝わりますか?

A.私の描いた絵(私が創造した) The picture I drew 著作権

B.私の持っている絵(所蔵)The picture I have 所有権

C.私を描いた絵(モデルが私)A picture of me  肖像権

ここではBだけの話なので。

じゃあ何のために買う? 自慢、自己満足、話題づくり、投機

目新しい技術の話で惑わされず、ここは単純に需要と供給で考えればいいだけ。

億はさすがに・・・「バブルだ」な。

今までマネタイズできなかったこの分野のアーチストへのリスペクトがあるというなら、多くの人×リトグラフレベルの「投げ銭」で報うのはどうでしょうか。むしろこちらをブロックチェーンで残せば投資家の見識・先見が残る。

つまり永遠に改竄せず残すべきは「パトロン名簿」の方。それが結局アーチストの価値を高める。それがテクノロジーでできるようになったわけです。

どうしてみんなそっちに気づかないのかなあ


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