大空 / let the sky fall

アンミカ vs 虎

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最近の記事

僕とヒロカズと別荘お泊まり会②

遂に迎えた夕食。 男女それぞれが、作った料理を一階の和室に持ち寄る。 女子組は流石の一言で、盛り付けの彩りも完璧な料理を完成させていた。 そして我らが男子組。シンノスケくんやワタルくん達が作った素晴らしい出来のおかずに、 僕が担当した”なぜか真っ黒い人参しりしり”と、 ヒロカズが炊いた”何か米以外の物が混ざってる、うっすら黄色いごはん”を献上した。 僕の”なぜか真っ黒い人参しりしり”は女子組から真っ先に猛バッシングを浴び、 「食べる現代アートだ」と言い張っても聞き入れてもら

    • 僕とヒロカズと別荘お泊まり会①

      高2の夏休み、進学校だった僕の高校の中でも随一のお嬢様・ヤギちゃん(仮名)の別荘に、 1年時のクラスメイト40名全員で1日お泊まりする計画が持ち上がった。 僕は参加を断っていた。 特に何があるという訳でもなかったが、男女大勢参加という時点で正直面倒臭く、 何より夏休みは『YouTubeに大量違法アップロードされている笑い飯のネタの文字起こしをする』、 『最近買った「吉本超合金」と「紳竜の研究」のDVDを擦り切れるまで観まくる』、 『X JAPANのSilent Jealou

      • 僕とヒデヒトくんとパトカーキジ

        僕とヒデヒトくんの父は、整備士と人事職という違いこそあれ、JTA(日本トランスオーシャン航空。沖縄に本社を構えるJALの系列会社)勤務という共通点がありました。 JTAでは毎年、年に一度の社員家族慰安イベントとして"みかん狩りバスツアー"を行っており、僕とヒデヒトくんは、僕の父が引率という形で小学3年から中学の時まで参加していました。 そのバスツアーは、社員とその家族総勢100名近く参加するかなり大規模なものでした。 那覇を出発した観光バスは本島を北上し、本部町の山でみか

        • 僕とヒデヒトくんとオオタカ海賊団

          僕には小学校の頃、ヒデヒトくんという親友がいました。 3年生の時にクラスが一緒になってからというもの、 同じ野球好きであること、好きなテレビ番組(K-1や筋肉番付)や笑いのツボが一緒であること、 更には二人とも長男だけど弟であり、父はお互いJTA勤務であり、母の名前も一緒という、 共通点に次ぐ共通点の嵐で、瞬く間に友達になりました。 中でも漫画「ONE PIECE」は、僕とヒデヒトくんを繋ぐ大事な要素の1つでした。 お互い4つ年の離れた姉がいたお陰で、周りの友達より多少

        僕とヒロカズと別荘お泊まり会②

          僕とヒデヒトくんと野球

          僕には小学校の頃、ヒデヒトくんという親友がいました。 新世紀の幕開けとほぼ同じくして発足した小泉内閣が、その圧倒的なカリスマで国民の支持率を総取りしている一方、 アメリカでは世界貿易センタービルやペンタゴンに、ハイジャックされた旅客機が何機も突っ込むという混沌とした年に、 僕らは初めて同じクラスになりました。 3年生の頃でした。 僕は松井稼頭央のファンだったので、西武ライオンズの帽子を被って始業式の日に登校しました。 ヒデヒトくんは、その年から日本人初の野手としてメジャー挑

          僕とヒデヒトくんと野球

          SS2 『佐々木豊の風景【昭和四十一年・冬】』

          昭和四十一年冬。 国鉄・京浜東北線鶴見駅の西口を出て、昨年建設された5階建て大型デパートのつるみCOMINを背に坂を登っていく。高級住宅街である東寺尾を抜け、明治情緒色濃い茅葺の古民家を望む馬場花木園を横目に進むと、夏は納涼祭で盆踊りや花火大会が行われ町の象徴ともなっていた曹洞宗の總持寺が左手に見える。そこを右折しまた暫く坂を上った所に、”室藤鉄工鶴見寮”と呼ばれる社宅の集落がある。佐々木豊と両親はその一角に住んでいた。豊が生まれる直前からなので、もう10年以上住んでいること

          SS2 『佐々木豊の風景【昭和四十一年・冬】』

          短編 『トムジの木』 【後編】

          2005年7月。 フジちゃんと離別して10年が経過していたが、孝志は東京で梨子と居を構えていた。 就職で上京して暫くは全く連絡を取っていなかったが、3年目に入り仕事も落ち着いてきたタイミングで、ふと貰った連絡先を引っ張り出し、梨子のポケベルに連絡を入れてみた。 梨子は大学を休んでいた。 昔からの中学教師という夢を叶える為教育学部に進学していたが、3年次に教育実習で参じた学校が”良くない”学校だった。 壮絶ないじめとセクハラが罷り通り、そして大人が誰も守ってくれない学校だった

          短編 『トムジの木』 【後編】

          短編『トムジの木』 【中編】

          卒業式を来週に控えた三月上旬、孝志の家に封筒が届いた。送り主は市役所の公園設備課とあり、中には2枚綴の紙が入っていた。 【盤上自然公園プレオープン!】 おそらく以前のチラシと同じ人間が作ったであろう、見た事のある大きく斜めにレタリングされたタイトルが踊っている。 内容はこうだった。 【4/6(土)の公式オープンに先駆けまして、3/16(土)にプレオープンする事が決定致しました! 当公園の開園に向けてご尽力頂きました関係者の皆様に、こちらの招待券(2枚目参照)を配布してお

          短編『トムジの木』 【中編】

          短編『トムジの木』 【前編】

          去年の大型台風の影響で少し東に傾いだ電波塔の、 麓に建つ町内会の寄合にそのポスターが貼り出されたのは3日前だった。 特段田舎という訳では無いが、かといって都会では決して無い。 全国に誇れる特産品も無ければ、観光出来るような名所も無い。 そんな盤上町に来年、県内一の敷地面積を有する自然公園が出来るというものであり、 その知らせが駆けてからというもの、町はどことなく浮き足立っていた。 孝志の通う農業高校の端までこの情報が行き届くには、 人口数千人のこの町では3日もあると十分だっ

          短編『トムジの木』 【前編】

          SS1 『プロペラの轟音に消えて』

          背伸びをすれば手が届きそうな程低空を、 ヘリは東西を分断する高圧線伝いにこちらへ向かって来た。 巨人が打った杭の様に街に等間隔に刺さる鉄塔のすぐ真横を、 本来そこを通るはずの無い飛翔体が通過するという突然訪れた非日常に、 私は名も無いであろう適当な小道から打ちのめされて唯見上げていた。 精々2〜30mしか無い鉄塔を嘗めたそのヘリは、いつものそれより余りに巨大に映った。 それが見慣れた高度では無かったからなのか、元々普通より大きいヘリだったからなのかはわからない。 その旋風

          SS1 『プロペラの轟音に消えて』