マガジンのカバー画像

小説

258
物語です。
運営しているクリエイター

2023年4月の記事一覧

魔剣騒動 5

 延々と続いた階段を降り切るとそこは開けた場所になっていた。
 長方形の形をしたそれなりの広さの部屋は背後に降りてきた階段、前と左右の壁には奥に続く道が続いている。
 それ以外には何も無い。
 いきなり三択問題に遭遇した空也は一度宙を仰ぎ見てから手に持った松明兼武器の水晶の剣を掲げ、部屋を照らした。
 照らしては見たもののどの道も奥まで照らせる訳もなく、わかったのは行き止まりではないということぐら

もっとみる

魔剣騒動 4

 遺跡へと進んだ空也を最初に出迎えたのは遺跡の入り口。
 金属製の素材で作られた扉であった。
 金属製らしきその扉は所々剝げてはいるが未だに白い塗料で塗られているのが見て取れた。 
 この遺跡は人魔大戦前期に作られたものだ、というギルドから説明を改めて思い出しながら空也は扉を眺めた。
 人魔大戦前期の技術は恐らく空也や怜音の元居た現代の世界よりも発達した文明社会だったのだろう、と空也も怜音も考えて

もっとみる

魔剣騒動 3

 空也が砂漠の真ん中に作られた遺跡発掘キャンプを訪れて、既に一時間程が経過していた。
 その間、空也が何をしていたかといえばアベル達『爆発の勇者パーティ』を探していた。
 自分を酷く歓迎していないらしいこのキャンプの人間から情報を得ることはおそらく困難であると早々に見切りを付け、自分を巻き込んだ張本人であるアベルに話を聞こうと思ったのだった。
 だが、それ程広くはないキャンプ内を歩き回ってみてもア

もっとみる

魔剣騒動 2

 「あれがキャンプか?」
 メオノラ市を出て、砂漠を歩いて数時間。
 突如として現れた谷をさらに一時間少々歩いたところで、空也はやっと目的の遺跡探索キャンプとその背後に見えるいくつかの遺跡群を目にすることができた。
 やっと辿り着いたという些細な達成感から空也は無意識のうちに立ち止まり、ため息をついた。
 ギルドの話では、なんだかすぐに着くような言い方だったが、思った以上に時間と労力がかかった。

もっとみる