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ひゃくま
2022年6月29日 01:46
「お酒飲みたい……」 ゲームをしながら呟いた何気ない呟き。 本来なら一人暮らしの部屋の中に溶けていくだけだった本当に大した意味もない呟きだったのだが、今日はそうもいかなかった。 「「え?」」 驚いた声が二つ返ってきた。 声の方向を見る。 「……そんなに驚くことか?」 二人の驚きように思わずこちらが呆れてしまった。 「いや、キヨがあまりにも珍しいことを言うもんだから……」 驚いた
2022年6月21日 18:41
「――それで?」 スーツに身を包んだ、いかにも仕事のできそうな雰囲気を纏った女性が目の前のガラの悪い屈強な男二人組に向けて言った。 「まだ続けるつもりかしら?」 その言葉だけで、薄暗い路地裏の雰囲気はスーツの女性に支配されてしまった。 まだ気温の低くない季節だというのに男たちは背筋に冷たいものを感じて、思わずジリッと後退ってしまった。 視線と視線がぶつかり合うがもう男たちに勝ち目などな
2022年6月14日 19:47
「見ろ。あれがゴブリンだ」 岩場の影から少しだけ顔を出して今回の目標の姿を確認し、指を差した。 「ほー。あれが」 俺と同じように岩場から顔を出した少年が感心するように呟いた。 俺が顔をひっこめると少年も同じように顔をひっこめた。 それから自分の心を落ち着かせるように息を吐いた。 隣を見る。 少年は愛用の剣を片手に今にも岩場を飛び出していきそうだった。 「アレを斬ってくればいいんす
2022年6月7日 22:08
俺はしがない冒険者だ。 こう書き出してしまうと実は何か凄い秘密や能力を抱えているように思われてしまうかもしれないのだが、俺の場合は本当に文字通りにしがない冒険者だ。 生まれは地方の、食うに困るほどではないが貯蓄が出来るほどではないというようないかにもパッとしない寂れた農村。 何代遡ってもその土地で農業と牧畜を営んできたことしか出てこないようなこれまたパッとしない普通の家系の次男として生まれ