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#30 越中身心脱落旅

 禅の里へ。#29、金沢サウナ旅の2日目に、特急とバスを乗り継いで、福井は永平寺を詣でる。「観光はしない」と書いたが、気持ちとしては、観光ではなく巡礼であり参拝祈願のためである。永平寺は修行の場というのは重々承知のうえだが、山中の静寂の中の大伽藍は、何か祈りたくなってしまうようなたたずまいである。京極作品の「檻」という表現も脳裏をよぎる。

 人里離れた深い山の空気は冷たい。晩秋の木漏れ日が深い緑の苔の絨毯を照らす。作業着姿で、雪囲いをしている雲水たちを見かけた。格好いいというか、何やら美しささえ感じる。まもなく訪れる本格的な冬への備えだ。修行の厳しさは一段と増すのだろう。

 身も心も引き締まる静謐の中、来し方行く末について想いを馳せる。この荘厳たる名刹で己を見つめることが、祈りに近いものになる。これからも座り続け、必ずまた訪れたい、と思う。いつか「正法眼蔵」を読もうと思う日がくるだろうか。北陸新幹線が敦賀に至る日まで、まずはひたすらに坐るべし。

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