20240207 とあるレース

走っている。ゼッケンをつけているので何かの大会なのだろう。しかも、どうやら先頭を走っているようだ。後ろとはどれくらい離れているのだろうか。エイドらしき場所に来ると驚いたような顔つきでスタッフの方々が自分の姿をただ見ている。先頭なのだから少しくらい声援を送ってくれてもいいはずなのだが。

折り返しの箇所まで来ると後ろとの離れ具合を確認できる。ペースを上げる。まだ来ない。まだだ。こうなったら逆に自分の姿を相手に見せない方が得策かもしれない。相手も前との距離を知りたいはずだ。さらにペースを上げる。ぐんぐん上げる。

確かこの先は道がややこしかったはずだ。ん、どういうことだ。なぜ自分はこのコースを知っているのだろうか。こんな大会には出たことがないはずだ。いや、余計なことは考えるな。今は先頭を何としても死守しなければならないのだ。そう、絶対に。

コース案内や誘導員はいないので、スマホを取り出しGPSでコースを確認しながら走っていく。ほとんど空身で走っているので飲み物や食糧は持っていない。今が何キロ地点で一体どれだけの距離を走らなければならないのかもよく分からない。とにかくスマホに表示された赤線を辿らなければならないのだ。運良く今は喉の乾きはない。なぜ先程のエイドで飲み物をとらなかったのだろうか。いや、そもそもあれはエイドだったのか。

このまま速く走り続けられれば先頭でゴールできる。背後に気配は全くない。残された距離は分からないのが気がかりだが、大きな怪我でもしない限り大丈夫だ。よし。いけ。

「アハハハ。キミのそういうところが大好きなんだ。でも実際のところはどうなんだろうね。」




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?