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カノープス


気づいたら川沿いの道を歩いていた
ゆったりと流れる大きな川は濁った青緑色
向こう岸には深緑の森が広がっている
誰もいない とても静かだ

ぽつんと小さな魚屋があるのを見つけた
陽はまだ高いがもう店じまいをしている
発泡スチロールの上に置かれたホタテ貝
乳白色の立派な貝柱に引き寄せられる

まだホタテ貝はありますかと尋ねた
水を撒いていた女性が無言でうなずく
六つ、七つ、いや、九つくださいとお願いする
きっとそのまま刺身で食べるだろう

九つのホタテ貝をぶら下げて歩いた
視線の先でカーブを描く白色のガードレール
川は無言でゆっくりのたうっている
誰にも会わない とても静かだ

どこかへ向かっているわけではなかった
午後の空気が浅葱色に染まっていく
川を渡るという声が聞こえる
鉄塔がそびえる角を曲がることにする

気づいたら視点が上昇しはじめた
一瞬で高く昇って鳥のように世界を見下ろす
どうやらカノープスに乗ったらしい
舟で九つのホタテ貝を食べよう

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